三話 TS勇者、家を貰う
本日三話目! 読んで頂ければ嬉しいです!
試験会場がぶっ壊れるかもしれないけと、ちょっと派手にやる事にしよう。会場がぶっ壊れる事ぐらい許容範囲だろう。
さて、雑魚に力の差を解らせてるとしようか。
「では、始め!」
「はい! ──【同時展開】発動──【即時展開】発動──黒炎ノ太陽」
僕は片手を上げそう呟くと、漆黒の太陽が上空に現れた。しかも五つ。
同時展開は、魔法を複数同時に展開する技術だ。訓練次第で異なる魔法も同時に展開できる。即時展開は、魔法の展開するスピードを速くする技術で、こちらは訓練次第で魔法を連続で放てるようになる。最も、魔力消費は変わらないから、連射し続けるには魔力が多くないといけない。
僕が手を振り下ろすと、漆黒の太陽は試験会場に向かって降下していき、熱で地面を溶かしながら地面に沈み、直後、馬鹿みたいにでかい黒い炎の火柱、それも五つができ、火柱が消えた頃には、試験会場を大きく抉るような大穴が出来ていた。穴の中には、所々黒い炎が立ち上がっていた。
「これで、約束道理だよね?」
僕は飛びっきりの笑顔で言ったのだが、レオはコクコク頷くばかりだった。まあ、これで約束は守った。
すると、ラクラス教官や他の先生方が試験会場を頑張って治そうとしているが、とても直せそうにないので、手伝うことにした。
「駄目だな。黒い炎に焼き尽くされちまう」
「ラクラス教官、直すの手伝いましょうか?」
「あ、ああ。頼む」
「いきますよ──復元」
すると、教官達がいくら頑張っても直せなかった大穴が、一瞬で塞がった。先生方は呆然としている。
そして、魔法の実技試験が終わった瞬間、レオがこっちに向かって来た。また何か言われるのかと思いきや、こっちに来るなり土下座をした。
「先程、あのようなことをして済まなかった! どうか、どうか許してくれ!」
レオの話によると、この学校に入る前の学校で、レオはいじめられていたらしい。そして火炎槍が使える様になり、入学したあとにいじめられない様、強気な態度でいたのだが、自分がやられて嫌だった事を自分がしている事に気が付き、謝りに来たそうだ。
「さっきの子にはもう謝ってある。どうか許してくれ!」
「まぁ、僕はいいよ。サラは?」
「ルナが許すなら妾も良いのじゃ」
「ありがとう!」
そういえばもうすぐ剣術の実技試験が始まる。行かなければ。
「もうすぐ剣術の実技試験が始まるよ。いこっ! サラ、レオ」
「行くのじゃ!」
「俺も、ついて行って良いのか?」
「反省したんだし、勿論いいよ」
剣術の試験内容は、試験官と一体一で戦う。それだけだ。攻撃魔法や妨害魔法は禁止だが、相手に直接危害を与えなければ、それ以外の魔法の使用はありらしい。
そして、レオの番が来た。レオの剣術はどれほどのものだろうか。他の人を見て平均的な実力はわかっているが、楽しみだ。
「では、始め!」
「はっ!」
レオは剣を縦に振り下ろした。中々悪くない。恐らくレオは前衛向きだろう。
しかし、振り下ろした剣は教官の剣に防がれた。教官は反撃とばかりに剣を横に振る。レオはバックステップで躱した。今度はレオが切り上げるが、それは避けられた。そこからしばらくの間剣を交え、最終的に教官の攻撃を躱しきれずに受け、教官に負けた。この試験は教官に勝つことが出来なくても、善戦すれば良いので、恐らくレオは合格だろう。
「次、一八九六番!」
「妾じゃ」
次はサラの番だ。教官が死ななければ良いのだが。
「始め!」
合図と同時にサラは剣を抜き、何もしないで立っている。何となくサラのやる事がわかった。試験官は大変な思いをするだろう。
「来ないのか? こっちから行くぞ!」
教官の鋭い一撃だが、サラはほとんどその場から動かずに避ける。教官は何度も何度も剣を振るが、全て避けられる。教官も突いたり横に降ったりと、努力はするが、最低限の動きで全て避けられる。そして、開始から三十分後、
「ギ、ギブアップ」
教官がギブアップ宣言をした。因みに、サラは開始から一歩も動いていない。恐らくサラは教官で遊んでいるのだろう。全く、何しているんだか。
しばらくして、教官が回復した様なので、次は僕の番だろう。
「次、一八九七番!」
「はい!」
「じゃあ行くぞ! 開始!」
教官は剣を振り下ろしてきたが、僕は剣を抜き教官の剣を逸らす。教官は振り返りながら剣を振るが、それを剣で弾く。教官の攻撃を、全て逸らし、弾く。これを五分ほどやったが、そろそろ面白くなくなってきたので、早めに決着を決めることにした。
「──縮地」
小声でそう呟くと、僕は教官の背後に一瞬で移動し、首に剣をあてた。
「ギブアップする…………はぁ、勝てる気がしねぇ」
これで実技試験が終了した。三時間後に筆記試験があるが、それまですることが無い。どうしようか。すると、レオが口を開いた。
「二人とも、俺を、強くしてくれないか? 頼む。俺を鍛えてくれ!」
どうやら、僕とサラに鍛えて欲しいらしい。まあ、まだあと三時間はある。鍛えてみよう。
「いいよ」
「良いのじゃ」
「本当か! ありがとう!」
「それじゃあサラ、頼むよ」
「わかったのじゃ──転移」
向かった先は、王都の外の草原だ。ここなら広いし迷惑にもならない。早速始めようか。
「それじゃあまず僕に傷を負わせるまで攻撃してきて」
「は、はい!」
レオが剣を僕に振り下ろす。だが、隙だらけだ。レオの足を引っかけて転ばせた。
「はい、隙だらけだね。隙がないようにしましょう」
次は下からの切り上げ。攻撃自体は良いのだが、攻撃を避けられたら隙がでかい。
「はい、だめー」
「もうちょっとこうしてー」
「右足をー」
こうして三時間弱打ち合ったが、結局レオは僕に攻撃を食らわせることが出来なかった。
「じゃあそろそろ戻ろうか。サラ、お願い」
「わかっておる──転移」
もうすぐ筆記試験が始まる。筆記はあまり自信がないのだが、大丈夫だろうか。
「えー、それでは筆記試験を始める。時間は一時間だ。それでは、始め!」
問題用紙をめくるが、見たところ問題なく解けそうだ。問題を五分で解き、あとはぼーっとする事にした。そして、一時間が経過した。
「終了だ。ペンをおけ」
これで試験は終わりで、もう帰宅していいらしい。だが、僕とサラには帰る家がない。どうしようか。その時、
「お?」
「ん?」
僕とサラが転移された。恐らくレミアがやったのだろう。何の用だろうか。
「レミア、来たよー」
「きたのじゃー」
「早速だけどあなた達、家無いでしょ?」
「ない」
「ないのじゃ」
ある訳が無い。サラは魔王城が家だしな。すると、レミアがとんでもない事を言った。
「家買ったから二人にあげるわね」
「「は?」」
家を貰ってしまった。王都の家は高い。それをあげるってどれほどの金を持っているのだろうか。
呆然としていると、レミアが鍵を放って来た。
「それ、鍵だから。今から転移で送るから、合格発表は明日の八時からよ。遅れないでね。それじゃあ」
次の瞬間、小さめの綺麗な家の前にいた。恐らく新築だ。取り敢えず、もう寝よう。
「……もうねよ?」
「……そうじゃな」
僕達は寝室まで行くと、高そうなベッドの上に寝転んだ。高そうなベッドは寝心地が良く、寝室は二人分用意されていた。
「おやすみ」
「おやすみなのじゃ」
僕は、心地よいベッドの上で眠った。
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