電撃強襲戦(下)
「クソったれがー!」
「何で今回も前線に……」
「海兵隊の無能共がー! いい加減俺達を盾にすんのやめろー!」
後畑と草架は、それぞれの思いの丈を、敵にぶつけている真っ最中です。
草架なんかいつ泣き出してもおかしく無いくらいの悲壮な顔をしています。
何故なら……
「何だってアイツ等13式が出てきた瞬間ジリジリ後退したの? 結局俺達殿じゃん!」
「もうよそうよ。なんだか虚しくなってきた」
こんな叫び聞いても、「じゃあ逃げろよ」とか言いたくなりますが、逃げないと言うより逃げられないのです。
「っつーか13式の連中戦車より俺等狙ってなかった?」
「俺も思ったけど……」
「ああもう! 早く逃げたい!」
「俺も」
「何だってこういう時にだけアシが壊れるんだー!」
逃げられないというのは、こういう事です。
彼等の重要な足であったジープは、ひっくり返ってボーボー燃えています。
ちなみに、彼等は壊れたジープにおっかなびっくり背を預け、敵の目を欺いて(?)います。
ドガガガガガガガガガガガガガガ!
「チッ、感づかれたか!」
「まああんなにうるさくしてりゃあね」
「あーもう! 全員ぶっ殺してやる!」
「いや、後畑変なスイッチいれないで…ってか何で俺の襟首掴んで走る準備してんのいやちょっと待って勝手に俺まで連れてくなまだ心の準備が!」
草架は錯乱気味にそう言いましたが、そんなの聞く後畑ではありません。
ドガガガガガガガガガガガガガガ!
ドシュッドシュッドシュッ!
飛び出した瞬間、容赦の無い鉄の嵐が彼等を襲いました。
バキバキガキャバゴォン!
なんかすごい音と共に、草架の左半身を守っていたシールドが壊れ、保持していたサブアームと共に千切れ飛んでしまいました。
「っ!」
「でいやああああああああ!」
後畑が謎の雄叫びを上げ、いつの間にか持っていたビームサーベルをぶんまわしました。
ズジュアーーーー!
『『『『『!?』』』』』
結局、重機関銃の弾丸が後畑達をミンチにすることはありませんでした。
ビームサーベルに触れた弾丸が全て蒸発したからです。
ビームサーベルは軽く一万℃を超えるので、鉛弾なんぞ一瞬で蒸発させられるのです。
弾丸を防がれた13式が妙な……それも驚いたような動作をしているのが、後畑は気になっているようです。
コイツは何でこんな状況でもこんな機械の「感情」を読み取れるレベルの動体視力を保てるのでしょうかね。
「草架! 取り敢えずあそこに!」
「分かった!」
二人は、半ばスライディングするようにして戦車の残骸の裏に隠れました。
形状的に、T―46でしょう。
45式や黒豹は装甲が薄く遮蔽物としては心許ないので、近くにコレが有ったのは不幸中の幸いというやつでしょうか。
88式は遮蔽物としては物凄く頼りになるのですが、乗員が皆頼れるナイスガイなので、できれば残骸はあって欲しく無いのです。
「どうする?」
「取り敢えず使えそうな弾貰っとくか」
後畑はぶっ壊れたT―46から、120㎜砲の砲弾と20㎜機関砲の弾丸を奪うと、リュックにしまいました。
一部の機関砲弾はそのまま97式に装填しています。
こいつのリュック、大きさ的に入らなそうな量の武器弾薬が入っています。
一体どうなっているのやら。
「よし……ちょっと待ってろ」
後畑はそう言うと、携帯端末を取りだし、画面を見つめながら何かをブツブツと呟き始めました。
(これは……アレか。後畑の『自己暗示』だったか)
草架はこの後畑の不思議な行動の目的を、何とか記憶の引き出しから見つけ出しました。
(確かアイツの『通常モード』と『白兵戦モード』を切り替えるんだったかな)
後畑は自分の「モード」を自己暗示で設定することで、より効率的に敵を殲滅出来るようにしています。
ここまで来るとロボットにしか見えませんが、彼はれっきとした人間です。
後畑は唐突に目を瞑ると、深呼吸をし始めました。
最初は深くゆっくりと、どんどん浅く早くなっていきます。
そして、目をゆっくりと開けました。
「草架」
「何?」
「殺るぞ。少し思い付いた事があってな」
後畑はいつものニヤニヤ笑いとは全く違う、獰猛で、残酷な笑みを浮かべています。
(絶対この顔ヤバイこと考えてるってマジで……すっげー怖いんだけど!)
「どうした? 草架」
「なっ、何でもないよ」
「本当に?」
そう言って後畑は草架の顔を覗き込みました。
その時の後畑の目は、生気の無く、ガラス玉のように空っぽでした。
その瞳は、草架の感情も、行動も見透かされるようでした。
(やっぱこのモードの後畑って気味悪いし怖いんだよな……)
「草架。まず、俺のアイデアなんだが……」
「分かった。どんな無茶振りだい?」
「無茶振りとは心外だな」
「お前の提案はいっつも、常人であれば思い付かないし仮に出来ても実行しない感じの作戦ばっかだよ」
「でもお前ついてこれてるじゃん」
「いやあ小学生の頃からの縁ですし」
「まあ、俺はお前が一緒に居てくれれば大丈夫だ」
「……その台詞は是非言って貰いたいね。女子に!」
「「……」」
「で、作戦は?」
「ああ。まず、俺のシールドも持って突っ込んでくれ」
「うええ……それで?」
「この戦車に付いてるバネとそのパワードスーツのパワーで真上にかっ飛ばしてくれ」
「そっからは?」
「逃げるも残るもお前次第だ」
「分かった。やってやるよ」
「じゃあやるか」
後畑は自分のシールドを二つとも草架に渡すと、97式自動砲と対物ライフルを持ちました。
ただ、97式は重すぎるので、サブアームで支えています。
そして、結城作のジェットパックを下に向けて装着しました。
「行くぞ。3、2、1……今だ!」
草架がシールドを両手に持って突進し、その後ろで後畑がジャンプの準備をしています。
「これ以上は!」
「OK!」
後畑はバネと草架という踏み台、ジェットパックによって、かなり高く跳びました。
13式は前脚を伸ばし、後脚を縮めて飛び上がった後畑を追撃しようとしています。
何発もの弾丸が彼に掠りもせずに、虚しく空に消えていきました。
(目標は5機……殲滅開始!)
ズダァン!ズガァン!
対物ライフルと97式を同時に発砲しました。
二つの弾丸は、後畑が思い描いていたのと全く同じ軌道で二機の13式に吸い込めれていきました。
それらはAIが宿る部分―――中央制御コンピュータを一撃で粉砕し、13式をガラクタに変えました。
(次!)
重心の位置を変えジェットパックの向きを変えることで、後畑は空中機動を可能とし、ジグザグ飛行を繰り返すことで、重機関銃弾を軽々と避けています。
但しジェットパックのお陰で落ちるのが遅くなっているだけで、少しずつ地面が近付いて見えます。
ズダァン!ズガァン!
対物ライフル弾の方は13式に命中し、しっかりと役目を果たしましたが、97式の20㎜機関砲弾の方は、回避されてしまいました。
(チッ……アイツ俺の『よく撃つ』弾道を見切ってやがる!)
回避した方の13式は、カラーリングも、動きも、他とは全く違う感じです。
隊長機といったところでしょうか?
ズダァン!ズガァン!
やはり、通常機は碌に動けずに鉛弾に貫かれていますが、隊長機(仮)は軽々と避けてしまっています。
ズパパパパパパパパパン!
突然、草架がアサルトライフルを撃ち込みました。
ほとんどの弾丸は弾かれただけに終わっていましたが、数発が隊長機(仮)の脚部の関節部に吸い込まれていきました。
『?!』
いくら機械の相手だと活躍できないアサルトライフルとはいえ、弱い関節部に命中した弾丸は脚部の中で暴れまわり、少しの間13式を足止めしました。
13式は若干狼狽えるような仕草をしましたが、すぐに立ち直りました。
その時間は、1秒にも満たないぐらいです。
しかし、今攻撃を仕掛けているのは後畑。
コンマ1秒でも止まってしまえば、その激しい攻撃をかわす事はかなり難しくなります。
(そこ!)
ズダァン!ズガァン!
後畑が放った二発の弾丸は、一発が隊長機(仮)の脚を、もう一発が上面装甲を貫きました。
しかし、隊長機(仮)は壊れた脚を引き摺りながらも逃げていきます。
どうやら中央制御コンピュータは壊せなかったようです。
ボシュッボッボッ…
どうやらジェットパックが燃料切れのようです。
「草架ぁ!」
「わかってるよ!」
後畑は地面に対して30°くらいの角度で突っ込む感じで落ちてきました。
そして、草架はそれをシールドで受けとめました。
……と言うより着弾角度がなるべく浅くなるように弾いただけなのですが。
何はともあれ後畑は五体満足で不時着し、自分の体を確認し始めました。
「チッ」
「骨折か?」
「いや……左腕脱臼した」
ガシャッガシャッガシャッガシャッ!
「「うぎゃー!!」」
隊長機(仮)が全力で突っ込んで来ます。
しかも、両前脚から変な音がしています。
「ちょっと待てアイツまさか!」
「超震動クラッシャーだろうね!」
超震動クラッシャーとは、13式の両前足に装備されている近接格闘用武器です。
「ヤベェ!」
「逃げよう!」
「無理!」
「何で?!」
「アイツ俺等より圧倒的に速い!」
「じゃあ…」
「迎え撃つ! 俺左手使えねーから援護よろ」
「わかった! 死んでも知らないぞ!」
二人は隊長機に向かっていくと、後畑は右手で、草架は両手で軍刀を構え――――
ガギギギギギギギギンッ!
二人の軍刀と超震動クラッシャーが激突し、凄絶な火花が散りました。
プロローグから第6話の手直しをするので、次回の更新日は未定です




