電撃奇襲戦(下)
《敵野営地付近/後畑&草架、岩本&鷹田集合地点》
後畑、草架、岩本、鷹田は敵の野営地をバックに奇跡の(?)再会を果たしました。
「(……死んでねぇのかよ!)」
「(そう言うこと言うんじゃないの!)」
「どぉしたの~?」
鷹田はドンドン顔を近づけながら聞いてきます。
「何でもねぇよ」
「ホントに~?」
「ホントに。あと、お前顔近い!」
「そんなに近いかな~?」
「ああ。何かおかしな間違いをされそうな距離だ」
「それはマズイね~」
鷹田はやっと後畑から離れました。
「ふ~……」
「そう言えば敵の野営地ってどれ~?」
「アレだ」
岩本はそう言って少し遠くにあるなんか立派めな建物を指差しました。
「えっ……? アレ基地じゃないの? 野営地ってテントがいっぱいあるイメージなんだけど」
「正直テントは日本陸軍だけだ。最近……特に大共連の連中は3Dプリンターで巨大な強化プラスチックの板つくって、戦場に持っていって組み立てるんだよ」
「アレ結構金属質な感じの色だけど~?」
「お前わかんねーの? 表面にテキトーに鉄板張ったり、メッキすれば良いだろ。アレはみた感じ鉄板とか張ってる」
『あの色はチタン合金系だな』
無線機から、唐突に結城の声が聞こえました。
「うわあ?!」
「何だと?!」
「うわ~?!」
後畑だけ無言でした。
と言うか、「何に驚いているんだ?」とでも言いたげな視線を3人に向けていました。
「後畑……お前怖いのとかダメじゃなかった?」
「いやだって結城なら軍用回線だろーが国家機密保管用パソコンだろーが乗っ取れるだろ」
「……確かにそうかも」
「後畑って結城さんを何だと思ってるの~?」
「ケ○ロ軍曹のク○ル曹長の性格良い版」
「わお」
「いきなり版権モノ来た~」
「例えが分かり辛いな」
ついでに言っておくと、この時代では昔(1950~2050年くらい)のアニメを最新の技術でリメイクするのが流行っています。
そのため、流行りのアニメは大体、現代(2019年現在)と同じような感じです。
「結城のお陰でパソコンの紐付けの危険性に気付いた今日この頃です」
「その心は?」
「どっから侵入されるか分かんないし、どっかヤられたら一気に全滅する」
「うわ~普通~」
『俺も後畑に賛成だな。国のパソコンも警察やら国防軍やらのパソコンと紐付けしてあって驚いたぞ』
「お前なんかやらかしたりしたの?」
『やらかしたというのは心外だな。俺がやったのは全部の紐付けを勝手に切断して、独自の防衛プログラムを仕込んでおいただけだ』
「いやそれマズイだろ」
『まあいきなり紐付けを切ったのはマズかったかもな。関係者がてんやわんやの大騒ぎになったのは良く覚えている』
「それ普通にヤバイヤツ」
『ああ。始末書を何十枚も書かされて大変だったぞ』
「それでこそ結城さんだ!」
「「「……」」」
「『あの色』って言ってたけど、何で分かったの?」
『金属の判別の件か、ただ色の話か、どっちだ?』
「勿論色のこと」
『それは沼田に聞いたからだ』
「成る程……わかった」
『お前達の装備のカメラ類の映像は全部こちらに届いているからな。ちょくちょく喋るが、大丈夫か?』
「うん。潜入とかじゃないし」
『分かった。心置きなくやらせてもらおう』
「なんか……」
「流石結城さんって感じだね~」
「やはり一番恐ろしいのは味方なんじゃないか?」
「そうかね?」
後畑にそう言われて、三人はやっぱりコイツ(後畑)が一番恐いという事を何となく感じました。
「うん。特に後畑」
「だね~」
「うむ」
「何で?! 皆ヒドくない?!」
「だって平気な顔して拷問、惨殺、虐殺するし」
「どんなにヤバイ戦場でもずっと笑ってるし~」
「どんなに傷付いても笑っているしな」
「ん~? ドコに異常性を感じるのかな?」
「「「『いや普通に分かるだろ!』」」」
「なんか結城さん混ざった?」
『ああ。流石に突っ込みたくなった。』
「何処に?」
『失血性ショック寸前まで出血しておいて、意識が朦朧とするなかでも砲撃を敢行するのは、完全に頭がおかしいだろう』
「ふ~ん」
そんなふざけた話をしていると……
「あの~……」
木田が話しかけてきました。
「ん? どしたの?」
「そろそろ出発しませんか?」
「あっ……作戦のこと忘れてた!」
「隊長……頭大丈夫ですか?」
マジメな木田は、苦笑いしながらも言ってしまいました。
「「「コイツの頭が正常だったところは見たこと無いな」」」
「ねえ何で君たちが答えるの?!」
「だって大丈夫じゃないし」
「ホントのことだし~」
「……」
「何故あの流れで岩本が無言? まあ良いやそれよりとっとと突撃だ!」
「了解!」
木田は作戦開始の旨を隊員に伝えに行きました。
「作戦開始は決まったが……好き勝手に突っ込んだんでは各個撃破されて返り討ちにあうのがオチだな」
「でも、お前らの登場は、俺の自走砲隊が対戦車砲と榴弾砲ぶっ壊してからだろ?」
「じゃあ突撃の暗号でも決める~?」
「じゃあ『トラトラトラ』で」
「パールハーバーか」
「いやそれダメだろ」
「その後日本軍負けてるから縁起悪いよね~」
「じゃあ何さ?!」
「『矢を放て』でどうだ?」
「良いんじゃね?」
「どっかで聞いた気が……」
「俺もそんな感じする~」
「じゃあこれで決定だな」
暗号が決まったところで、唐突に後畑が何かに気づきました。
「なあ岩本……」
「どうしたんだ後畑?」
「俺らが失敗した時の伝令どうする?」
「「「……」」」
「俺の部隊だって万能じゃねえし、敵が予想外の戦力持ってたら負ける」
「成る程な……分かった」
「じゃあ今度こそ『トラトラトラ』で!」
「それだと失敗した感がゼロだな。たしかアレの意味は『ワレ奇襲ニ成功セリ』だったハズだ」
「じゃあ『矢は折れた』でどう?」
「ソレ良いね~」
「良いと思うぞ」
「……」
「じゃあコレで」
「じゃあ伝えてくるわー」
「分かった」
そして、彼等は自分の隊に戻り、準備を始めました。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
《自走砲隊待機地点》
「展開完了! 突撃準備完了! いつでも行ける!」
『分かった。作戦開始だ。』
後畑と草架は、ストレリチアに乗っていました。
「さて……行けるか?」
「多分」
「よっしゃ行くぜぇ!」
「ハイハイ!」
ストレリチアが急発進し、その巨体からは想像できないようなスピードで突撃を開始しました。
ギュラギュラギュラギュラギュラギュラ!
他の自走砲もそれに続きました。
後畑は隊の全員に無線を繋げました。
「榴弾砲はもうちょいで止まれ! あんまり近づくと蜂の巣だ! 合図したら砲撃開始だ!」
『了解!』
「対戦車砲はもっとスピード上げろ! どうせ近づかなきゃ効かねぇんだ! 思いきって突っ込め!」
『了解!』
「迫撃砲はあんまりスピード上げすぎんなよ! 盾役は俺と対戦車砲だ! 盾役の前に出るんじゃねえぞ!」
『了解!』
「さあて真打ちの登場だ!」
後畑がそう言った瞬間、敵の対戦車砲群の砲撃が始まりました。
ドドドドォン!
「当たらなければどうということはない!」
「すごい出鱈目な砲撃だな」
「ビビってんだろーな。多分俺達を近づけたくないんだよ」
「……よし! 射程圏内だ!」
「派手に行くぜ!」
後畑の目には、防盾を付けた対戦車砲が10門、等間隔に並んでいるのが見えていました。
「敵の榴弾砲ドコ?!」
「もっと奥にあるか……それともまだ展開が完了してないかだな」
「じゃあ奥にある設定で行こうか!」
『了解!』
「まったく……『戦場では常に最悪を想定しろ』か・・・確かに良い教えなんだが、たまに面倒臭くなっちゃうんだよな」
「仕方ない。それが戦場だと思わない?」
「ヒュ~! 流石草架カッコいい!」
「どーでも良いからとっととやっちゃってくれない?!」
「りょーかい! 派手にいくぜ!」
後畑は砲撃用のレバーを6本同時にと操ると、なにやらボタンを弄り始めました。
舗装されていない草原を疾走する車の上で手の感覚だけで照準を済ませ、一つのミスもなく密集したボタンを押していきます。
「何やってるんですか?」
「いやあちょっとね。砲弾が泣けるぐらい値段が高い装甲貫徹弾だったからね……リーズナブルな砲弾に変えたんだよ」
「そんなんであの対戦車砲壊せる?」
「狙うのは砲じゃねぇよ……」
「え?」
「狙うのは砲を使ってる兵隊だ」
「……まさかお前」
「フンッ! こっちは予算不足で砲が足りねぇんでな!」
「うわ外道」
「なんとでも言え! ……俺はやるぜ! 他人の生き血を啜ってでもな!」
「お前セリフ間違えてる。使い方も」
「知ってらあ! 耳塞げ! ぶっぱなすぞ!」
ズドドドドドドォン!
1門につき一発の砲弾を撃ち込みました。
「全砲に着弾! ……でもまだ2門生きてる!」
「ああくそ! 防盾に当たっちまったか!」
ドドドォン!
さっきより音が少ないですが、 一斉射撃がきました。
ドゴォン!
左を走っていた対戦車自走砲が吹っ飛びました。
木田が乗っている車両です。
「っ……! 木田! 大丈夫か?!」
『なんとか……左腕骨折したっぽいです。戦線離脱します……』
木田は、苦しそうで、後ろめたさとか悔しさとか色々混ざった声で返事してきました。
「分かった! じゃあ後ろ下がって榴弾砲隊に指示しといて」
『りょ……了解……』
前部の装甲と砲をぶっ壊され、満身創痍な対戦車自走砲がズルズルと後退していきます。
どうやらキャタピラは無事だったようです。
「チッ! まさか木田がヤられるとは……俺が迂闊に突っ込むのやめた方が良いか?」
「木田がいようがいまいが無駄に突撃すんの止めようか」
「そうですよ。僕も怖いです」
ズドドドドドドォン!
「「うわあ?!」」
「……」
「お前撃つときは言え!」
「あうう……耳が……」
「草架……お前こんなんで耳狂わしてるけど戦艦の砲撃音とか大丈夫なの?」
「戦艦の砲撃の時はヘッドフォン型耳栓付けてるから大丈夫!」
「そんな便利なモノがあるとは!」
「普通だろ」
「僕それ今もってるんですけど着けて良いですか?」
「良いよ」
「・・・なんでお前の方がハイテクなんだよ」
「ゴメンこれ結構ローテク」
「それより着弾確認!」
「分かってる。2門が防盾ごと吹っ飛ばされて大破、1門がひっくり返ってる。それ以外は沈黙」
「よっしゃ一気に行くぞ!」
『了解!』
ズドォン!
「ん?」
「ヤバイヤバイ! 右に急旋回して! 死にたくなかったら! この砲撃音はヤバイ!」
「はっはいいいいいい!?」
ストレリチアが右に曲がった直後、直進していたら通っていたであろう位置に榴弾が降ってきました。
ドゴォン!
「うわあ?!」
「クソッ! キャタピラが!」
「避けきれなかった……!」
「降りるぞ! このままじゃあ次の一発で吹っ飛ばされちまう!」
「まだ動きます! コイツを少しでも遠ざけますよ!」
ヘタレっぽかった操縦士が言いました。
「良いのか?」
「どの道走って逃げるより速いですし……それに装甲がある方が流れ弾で死ぬ可能性も減りますし!」
「分かった! じゃあ頼んだ! 俺等は突っ込む!」
「結局徒歩で突撃かい!?」
「たりめーだバカヤロー! 突撃こそ軍人の誉れ! さあ行くぞ! ……総員着剣!」
「総員? 俺とお前しか居ねーだろ!」
「ノリだよノリ! 行こーぜ!」
ズドォン!
もう一発の榴弾が降り、ノロノロ動くストレリチアの脇に着弾しました。
「ヤベェ!」
「急げ急げ!」
彼等は草原に思いっきりダイブすると、そのまま受け身もとれずに転がりまくりました。
「痛っ!」
「流石結城さんだ……衝撃吸収機能付きかこのスーツ」
「あーくそ……腰やったかも」
「ジジイみたいなこと言うなよ後畑」
「さあて早速行くぞ! 全力ダッシュだ!」
「そんな速く走れんよ」
「はいコレ草架の」
「ん?」
唐突に後畑がよく分からない靴を草架に渡しました。
「コレ何?」
「移動中に説明するからさっさと履け!」
「……分かったよ!」
草架はそれを履くと、物凄い違和感を感じました。
まあ、履く履かない以前に、靴底がやたら分厚かったり、足首のところにスイッチと思われる謎の物体がくっついているので、手渡された時点で普通では無いことくらい想像していましたが。
「コレって靴だよね?」
「まあね。でも、コレは結城さん謹製の特殊なヤツ」
「なんか靴裏がおかしいから恐いんだけど」
「早くスイッチ入れて突っ込むぞー!」
「おー……」
草架がスイッチを入れました。
ブォォォォォォォン
変な駆動音と共に、靴の裏からゴム製の何かが出てきて、空気を噴出し、草架の体を浮かせました。
「おお!」
「結城さん謹製のホバーシューズなんですわー」
「へぇ~! ……でも、コレどうやって進むの?」
「勿論コレ!」
そう言って後畑はまた何かを取り出しました。
バランスをとるのも結構難しいハズなのですが、草架は平気なようです。
「ん?」
「前に進む用のジェットパック!」
「ええええええええ?! いやちょっとソレ危なすぎ!」
「はいコレお前の! さあいくぜ!」
「嫌な予感しかしねぇ……」
嫌々ジェットパックのスイッチを入れました。
ギュィィィィン…………ズシュアアアアアアアアアアア!
「うわあああああああ?!」
「ひやっほーい!」
後畑はしっかり左手にシールドを持ち、右手にバズーカを構えています。
その姿はまるで―――
「お前なんかガン○ムのドムみたいだな」
「ドムはシールド持ってねえけどな。お前さんをMSに例えると……シュツルム・ガルスだな」
後畑はいつも通りニヤニヤしながら言いました。
「ハァ……あのよく分からんヤツか……」
草架はシールドを両手に持ち、背中に無理矢理鎖で繋げた粘着地雷を背負っていました。
その鎖部分の先っちょには、電車のつり革みたいな三角形の持ち手があります。
勿論サブマシンガンとかアサルトライフルとかは位置を変えて装着しています。
「良いじゃねえか。俺は好きだぜ? アイツ」
「俺も嫌いではないけど」
「もうすぐ着くぜ! 構えろ!」
「ハイハイ」
草架は両手のシールドを構え直しました。
「まずあの対戦車砲奪っちまおうぜ!」
「分かったよ!」
後畑達が狙いをつけた対戦車砲は、輸送用のトラックに連結されて逃げる途中でした。
周りには後畑の砲撃でバラバラになった死体が数人分転がっていますが、気にしてはいけません。
ドシュッ! ズシュアアアアアアアアアアア!
ロケット弾は正確無比に飛んで行き、トラックを吹き飛ばしました。
しかし、トラックの荷台に乗っていた兵士は全滅しなかったようで、荷台から飛び降り、銃撃してきました。
タタタン! タタタン! タタタン! タタタン!
「まあお行儀が良いのね! この期に及んで三点バーストだなんて!」
「しっかり教育が行き届いてるんでしょーね! コッチと違って!」
すると、草架がシールドを構え、そのまま兵士に突っ込みました。
ゴンッ!
敵兵を二人くらいまとめて荷台に叩きつけ、背骨を砕くと、ジェットパックのスイッチを切り、背中の粘着地雷の持ち手をつかみました。
「ていっ!」
草架は粘着地雷を思いっきりぶんまわし、周囲の色んな物(敵兵含め)に地雷を張り付け、切り離しました。
「後畑! 離れろ!」
「はいはーい!」
後畑はジェットパックを使った大ジャンプで距離を取りました。
草架も少し離れ、地雷の爆破スイッチを押しました。
ズッドォォォォン!
全ての地雷が一斉に火を吹き、爆炎と爆風を撒き散らしました。
「わーお」
「やっぱコレ地雷じゃないよな?」
「細けぇ事気にすんな草架。一応ソレの名前はチェーンマインだ」
「そう言うことじゃなくて威力のハナシ」
「威力? だってソレ対戦車地雷だろ?」
「なるほどね!」
「さーてと……」
そう言って後畑は、対戦車砲を手で押し始めました。
「何やってんの?」
「パワードスーツのパワーがあれば……よいしょっと……向き変えるくらいできると思って」
「じゃあ俺も手伝おうか?」
「頼む」
二人で押すと、対戦車砲はあっさり向きを変え、敵の方を向きました。
「フンフフ~ンフン、フンフフ~ンフン」
「よし! 多分大丈夫!」
「よっしゃ撃つぜ!」
本来は敵の装備のハズなのですが、後畑は気にせず使いこなしているようです。
「ここから約80m! 無風!」
「ハッ! 余裕じゃねぇか!」
対戦車砲に装填されていた砲弾は正確に榴弾砲に命中し、その役割を果たしました。
砲弾は普通の砲弾から徹甲榴弾になっていたようで、榴弾砲の防盾と砲身を突き破り、爆発したようです。
「やったぜ一撃!」
「おー。次どうする?」
「決まってんだろ突撃だ!」
「ハァ~……お前は毎度毎度そう言って……」
「さあ行くぞ!」
またジェットパックのスイッチを入れ、突撃体勢に入った瞬間、何か黒っぽい速い物が沢山後ろから飛んできました。
「ん?」
「あれって……」
彼等がキョトンとしながら進んでいましたが、数秒後に後ろにぶっ飛びました。
「ぎぃいやあああああ?!」
「うわあああああああ?!」
二人は仲良くぶっ飛び、草原に転がりました。
「あうう……」
「……俺らの隊にも榴弾砲有るの忘れてた」
「それな……」
「木田のヤツめ……アイツ人にやらせる時だけは無駄に精度良いんだよな……」
「そういえばお前『合図したら』って言ってたよな」
「俺合図した覚えないんだけど!」
ジェットパックと靴はいつの間にか止まっていました。
彼等がぶっ飛んだのと同時に止まっていたようです。
きっと安全装置が働いたのでしょう。
『大丈夫か?』
「ゆっ……結城……大丈夫だと思う?」
『思わんな。さっき安全装置が働いた旨のメッセージが俺のパソコンに届いたからな』
「分かってるなら聞くなよ……」
ビーッ ビーッ ビーッ ビーッ!
「んだよるっせーなー……」
「近距離緊急通信だよ。早く出てあげれば?」
「只今取り込み中につき留守番電話と――――」
『隊長! ふざけないで下さい! 敵の榴弾砲は全て沈黙しました。どうしますか?』
「俺は合図したらって言っただろぉ……木田ぁ……お前覚悟できてんだろおなぁ……?」
『えっ……いや……あのー…………すいません……って言うか指示しといてって言ってたじゃないですか?!』
「もういいや。コッチで通信しとくから後は休んでて良いよ」
『ちょっと歩兵部隊に近づかれたんで休めませんけどね……』
「俺からは以上! じゃね!」
ブツッ!
「さあてと。やりますか!」
「ハイハイ」
そう言って二人は無線機のチャンネルを調節し始めました。
「よしOK!」
彼等が合わせたのは、通信阻害粒子の影響を一番受けづらいチャンネルでした。
このチャンネルは大抵の場合傍受されているので、暗号通信くらいにしか使いません。
因みに、後畑達は全く気にしていませんが、彼等がいる辺りは通信阻害粒子がまかれています。
後畑と草架は通信阻害粒子の影響を受けない特殊な方法の無線機を使っています。
この無線機は現在、性能試験中のため、後畑達と陸軍の試験部隊しか持っていません。
通信を受ける側にもこの無線機が必要なため、このチャンネルでしか岩本達と連絡が取れないのです。
「よし繋がった」
「行くぞ! 矢を放てぇええええええええ!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
《岩本、鷹田待機地点》
後畑達が滅茶苦茶やっていた頃、岩本達は作戦会議と銘打ってお喋りしていました。
「そういえば岩本、お前好きな女の1人でもできたか?」
「何故いきなりそんな事を聞くんでしょうか? 江藤さん・・・」
「かぁーっ! お前の方が階級上なんだからタメで良いって言ってんだろーが! 堅ッ苦しいのは性に合わねぇんだ」
「ですがあなたの方が年上です。それでお相子でしょう」
「ったくこう言う時だけは無駄に口が回るなぁお前さんは・・・そう思わんか? 鷹田」
「だよねだよね~! コイツよくわかんないけどたまに口が回るようになるんだよね~!」
「お前は逆に距離感も物理的な距離も近すぎて困るんだよなあ」
江藤はなんとなく疲れた顔で言いました。
「総長!」
「どうした」
「伝令来ました!」
「なんと?」
「『矢を放て』です!」
ソレを聞いて岩本は立ち上がりました。
「よし!」
「いっくぞ~!」
「ほう! あのガキやりやがったか!」
「まあアイツだったら失敗するほうが難しいんじゃな~い?」
「そうかもしれんな」
色々言ってから彼等は各々の部隊に突撃指示を出しました。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
《後畑、草架、砲兵隊待避地点》
「ふぃ~」
「やっと終わった・・・」
「こっから先はアイツらが上手くやってくれるだろ」
「だね」
「隊長!」
「どうしたんだ木田クン?」
「あの~…僕達の役目はコレで終わりなんでしょうか?」
「岩本達から救援要請が来なきゃな」
「まあ来ないことを祈ろうか。これ以上は時間外労働だし」
「だな! 俺の仕事は46㎝砲をぶっぱなす事のハズだ!」
「ハァ…」
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
「ん? はぐれ歩兵でも見つけたか?」
「ちょっと確認します」
木田が緊急通信のアラームを鳴らしている無線機を取りました。
「どうしましたか?」
『この声は木田くんだよね?! ちょっと後畑に変わって~!』
「はい。ちょっと待っててください……後畑隊長! 鷹田中佐からです!」
「うげえ~」
「嫌な予感が・・・」
「怖いよ~」
後畑はいかにも嫌々といった感じで無線機を受けとりました。
「もしもーし。お電話代わりましたー」
『お電話とか言ってる場合じゃないでしょ!?』
「いやスマン。俺らもう帰るムード」
『酷くな~い?! 俺等は大ピンチなんですけど~!』
「ハァ・・・ご注文の砲弾は?」
『後畑と草架! あとちょっと使える人』
「残念ですがこちらでは人間大砲は行っておりません」
『人間大砲とかじゃなくて~! とにかく急いで~! 早く…ッ!』
「どうした」
『ドゴォン!』
ブツッ!
明らかにヤバイ音が無線から響いた直後、通信が切れました。
「…」
「どうする?」
「こりゃあ行くしか無さそうだな…」
「隊長が自分から行こうって言うなんて…!」
どうやら木田は、若干後畑をディスるのが癖になってきてしまっているようです。
「あ~…イヤだな~…」
「早く行かないとアイツら死んじゃうから早く行こ!」
「そうですよ隊長! あの二人がいないと海兵隊が纏まらないんですよ!」
「ハァ……分かったよ……あと、さっきの音どっかで聞いた気がする。すっげー嫌な予感しかしない音」
「ああ。アレ多分攻撃ヘリの対戦車ロケット砲だよ。種類はちょっとわかんないけど」
「どこでそんなのわかるんだ?」
「爆薬の爆発音ぐらい聞き分けれないと俺達の部署では働けないよ」
「「……」」
「そういえばどうやってアイツら助けにいくの?」
「確かに。木田……使える速い乗り物ある?」
「偵察用の一人乗りバイクならあります」
「サイドカーある?」
「まあ一応……」
木田はなんかあまり乗り気じゃ無さそうな顔をしています。
「なんでそんな嫌そうなの?」
「ちょっと繋ぎ目が弱くて……」
「わーお」
「でもソレ使うしかないし早くして」
「了解……!」
「早くしてくれよ?」
「できました!」
「早っ!?」
「繋ぎ目が弱いのは着脱の利便性を高めようと改造した結果だったりするんですよね……」
「そゆことね」
「木田君精神の方は大丈夫かね? なんでも改造する後畑の悪癖が感染ってる気がする」
「それだけは言わんで下さい……」
木田の顔が若干青くなっています。
「早く行こっか」
「ですなあ」
草架がバイクに跨がり、後畑がサイドカーに飛び乗りました。
「よし! コイツの機嫌は良さそうだ」
「行ってくるぜお前ら! ……アイルビーバック!」
「ネタは良いから早く行って下さい!」
「ちぇ~」
「じゃあ行ってくる」
「死ぬなよお前ら!」
「そのつもりです!」
グルォオオオオン! グルォオオオオン! グルォオオオオン!
バイクっぽくないエンジン音を響かせ、彼らのバイクは草原を疾走しています。
「すっげーはえーな」
「コレお前と結城が勝手にチューンアップしたヤツじゃない? なんかエンジン音がおかしい気がする」
「あー……そんな気するわー」
「ん?」
「すっげー煙だ」
後畑と草架が向かっている先では、黒煙が幾筋も立ち上ぼり、すさまじい戦闘があった事を物語っています。
「コレはヤバそう」
「アイツらが煙にまかれて死んでない事を祈るばかりだなあ」
後畑はイマイチ緊張感がありません。
まあ、そんな緊張感の無い感じでも、いつの間にかサイドカーに付いているマシンガン用の台に97式自動砲を設置していました。
すると―――
バダバダバダバダバダバダバダバダ!
ヘリコプターがうるさいローター音と共に現れました。
「うるせー」
「しゃーないよ。アレ消音装置とかついてないヤツ。……確か武直23型。アダ名は“霹靂風“だったかな?」
「23? 古くねえか?」
「うん、旧型。だから消音装置とか色々足りない」
「旧型なら楽に墜とせそうだ」
武直23型は大共連軍の主力攻撃ヘリとして使われていたのですが、5年ほど前に新型に主力の座を譲りました。
「お前対空兵器持ってるの?」
「コレだけど」
「……97式だっけ? そんなんで大丈夫?」
「コレは第二次世界大戦時は対空兵器としても活躍したらしいぜ? それにコレは薬室とか諸々の強度を高めて火薬を増やした結果、元々マッハ2以上あった弾速がマッハ8くらいになったんだよ!」
「マッハ8? 冗談だろ?」
「マジマジ」
『それは本当だ』
結城が会話に割り込んだ瞬間でした。
バダバダバダバダバダバダ!
ヘリコプターが後畑達に気付き、急旋回して突っ込んできました。
機首に装備された30㎜ガトリングガンが動くのが見えます。
「うわ?!」
「そのまま突っ込め! ランボーは弓矢で墜としたんだ! やってやるぜ!」
後畑はスコープを全く覗かずに60°ぐらい銃口を上げ、相手より早く発砲ました。
ズッダァァン!
銃を撃ったとは思えない銃声が鳴り、すさまじいマズルフラッシュが出ました。
「?!」
「ちょっ……色々想定外にでかい!」
20㎜×124㎜強化タングステン弾、重さにしておよそ80グラムの弾丸がマッハ8という呆れる他無い速度で飛んでいき、見事に武直23型に命中しました。
武直23型はマズルフラッシュを見て回避行動をとったようですが、遅すぎました。
マッハ8とは、秒速2720m、すなわち1秒で約2.7㎞進む速さです。
武直23型と後畑達の距離は約600mほどだったので、弾丸が届くまでの時間は、僅か0.2秒ほどです。
タングステン弾は武直23型を下面装甲をぶち抜き、内部構造を破壊し、そのままの勢いでローターの基部とエンジンを貫きました。
「おお!」
「ヘリならバイクに勝てると思ったか? バーカ!」
後畑が子どもみたいな歓声(?)を上げる中、ヘリは爆発四散し、大きな破片から小さい破片まで、様々な大きさの破片が降り注ぎました。
ヘリが中にしこたま抱え込んでいた対人ロケット弾とかも誘爆したため、対人殺傷能力が高い破片も一杯あります。
「「あわー?!」」
草架が思いっきりスロットルを上げ、後畑がうずくまりました。
「あっ……あぶねえ……」
「今度から気をつけてくれよぉ……? 後畑……」
草架はもう疲れきった声で言いました。
怒る気力すら残っていないようです。
それでも一応バイクは進んでいるので、戦う気はあるようです。
「あ~……鷹田達どこだ?」
「煙で全然見えないね」
「ミサイルとか飛んできても避けれねーな」
「大丈夫。後畑ならショットガンで撃ち落とせるよ」
「ショットガン? そんなん持ってきた覚えが……?」
「お前リュックに入れてなかったっけ?」
「マジで?! ちょっと探してみる」
後畑はリュックを漁り始めました。
「あった」
「だろ?」
「……コレちょっとヤバイかも」
彼が取り出したのはドラムマガジンが付いている不可思議な形のショットガンでした。
「なんで?」
「このショットガン俺が結城にネタ装備的な感じで頼んだんだけど……」
「だけど?」
「フルオート設計にしたせいでかなり死体の状態が……えっと……その……」
「はっきり言えよなんでそんなに歯切れが悪いんだ?」
「分かったよ! 威力も一度にぶち込む弾丸もヤバすぎて『人肉ミキサー』とか言うアダ名つけられちゃったんだよ!」
「人肉ミキサー?! どういうアダ名だよ?!」
「まだわかんないの? コイツを全力で人にぶち込むと骨も肉も粉砕してグチャグチャにしちゃうから人としての形が保てなくなっちゃうの!」
「うええええ……」
ギュラギュラギュラギュラギュラギュラ!
「これは……」
「どったの?」
「うん。間違いないな」
「いやだから何が?!」
「このキャタピラ音だけど」
「まさか敵?」
後畑がそう聞いた瞬間、黒煙と炎の中から、88式重戦車が飛び出してきました。
「ぎゃあああ?!」
「うわっ?!」
ギャギイイイイイイイ!
88式は凄い音をたてて急停止しました。
『危ねえなオイ!』
「そりゃコッチのセリフだコンニャロー!」
「ちょっと後畑落ち着いて!」
『なんで後畑のガキと草架のガキが居るんだ?』
「うっせーコッチだって来たくて来てんじゃねーんだよ」
「鷹田から救援要請きたんですよそんで時間外労働です」
『なるほどな……その鷹田だが、手遅れっぽいぞ』
「!?」
「オイ待てよ冗談だろあの意味わかんねーぐらい頑丈なあいつが?!」
『ん? ……スマンな。言い方が悪かったか』
「「え?」」
『アイツ大怪我して戦線復帰不可ってだけだ』
「な~んだ」
「ハァ……」
ブーッ! ブーッ! ブーッ!
「ん?」
「短距離通信? なんで?」
「まあ取り敢えず出よーぜ」
「分かったよ。……はいこちら―――」
『ちょっと後畑遅くない?! どうなってんの草架?!』
「ちょっと林声でかい」
「スッゲー音量だな」
『えっ…あっ…スマン……それより鷹田が!』
「鷹田が?」
「どうしたのさ」
『口で言い辛いから早く来てくれ!』
「うん。それで林達はど―――」
ブツッ!
「……」
「さっすが林だ」
「あーもう! 何で切るんだ用件人間め! いい加減にしろおおおおおおお‼」
「落ち着けー。草架ー」
『取り敢えず俺が先導しようか?』
「お願いします」
「よろしく~」
草架はひとまず落ち着きました。
「ハァ……全く何で俺の周りは自分勝手なヤツが多いんだ?」
「ホントにな~」
「いやお前もそうだから!」
「何でそんな怒ってんの?」
「あと一人ぐらいツッコミ役居てくれねーかなぁ……」
「いないって! ネタキャラはいっぱい居るけどね!」
「お前って何でそんなテンション高いの? 何? もしかして宇宙人だったりするの?」
「悪魔とかは言われたことあるけど……宇宙人は初めてだなぁ」
「どっちにしろ人間じゃないけどね」
「それな!」
『そろそろ着くぞ』
江藤がそう言った直後、目の前に巨大な壁が現れました。
「わお」
「これって〝EXウォール〟だよな?」
「だな」
「これって揚陸艦積めたっけ?」
「ん~……壁に折り目着いてるし乗っけれるタイプじゃない?」
「海兵隊仕様か」
「草架! 後畑! 着いたのか!」
林がドタドタと壁の向こうから飛び出してきました。
「ああ?」
「林、何でそんなに慌ててんの?」
「鷹田と岩本が大喧嘩してんだ! 止めれるのお前らだけだろ?!」
「だってさ後畑」
「仕方ねぇなあ……鷹田と岩本は何処に?」
「コッチだ。早く来てくれ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
《海兵隊野営地内部/医務室》
「いい加減にしろ鷹田! お前の怪我じゃ戦えん!」
「でも部下が命懸けで戦ってるんだよ?! 俺が休む訳にはいかないよ‼」
「だからお前の部下はそう易々と死なん! それに戦えないヤツが居たところで邪魔になるだけだ!」
「それでも俺は行かないと!」
医務室の扉越しでも聞こえる大音量で鷹田と岩本が喧嘩をしていました。
「入るぞ~」
ガチャガチャッ! バキャ!
上手く扉が開かなかったようで、後畑は扉を蹴破って入りました。
「「……」」
「ちょっとちょっと後畑くぅ~ん……そんな酷いことしないでよぉ。此処ワタシの城よぉ?」
「知らん。開き辛いのが悪い」
後畑が入るなり文句を言ってきたのは、海兵隊医療班班長の峰日向子でした。
「この扉けっこう頑丈目に作ったつもりなんだけどぉ」
そう言いつつ峰はちらっと後畑を見ると、ため息をつきました。
「パワードスーツ着きかぁ。そんなの反則よぉ」
「知るか」
そんなふざけた会話をしていると、また鷹田と岩本が喧嘩を始めました。
「おい! なぜ部屋から出ようとする!」
「だから! 俺は! 部下を死なせない指揮をするのが! 上官の役目だと! 思ってるから!」
「いい加減にしろ! 部下の心配の前に自分の事を考えろ!」
「ハァ……」
「どうすんの後畑?」
「ちょっとコレ持ってて」
後畑はそう言ってリュックや銃を草架に預けると、少し後に下がり……
「ウェエエエエエエエエエエエエエイ!」
意味不明な雄叫びを上げてドロップキックを鷹田に叩き込みました。
「がぁッ?!」
鷹田は思いっきりぶっ飛ばされて壁に激突し、気絶しました。
「「「……」」」
「よし」
「『よし』じゃねぇええええ!」
「何でそんなにキレてんの?」
「ちょっと後畑くぅん! アレ後遺症残るかもしんないのよぉ!?」
「おい後畑! 何をしたんだ!」
「いやフツーにドロップキック」
「「「それフツーじゃないから!」」」
全員がツッコむ中、後畑は平然としていました。
「そういや鷹田の怪我ってどんな感じ?」
「左腕とあばら骨を一本づつ折っちゃったのよぉ」
「それなら戦線復帰なんてヨユーだろ」
「残念ながらそれはお前だけだ」
「え?!」
「何をそんなに驚いてんだか……」
「そういやどんな感じで折ったの?」
「ヘリコプターの対戦車ロケット弾で隣の45式がやられてな」
「はいはい」
「その45式の壊れた装甲の一部がアイツに直撃したんだ」
「そりゃまた災難なこって」
そう言いつつ後畑は医務室から出ていき、草架と岩本がそれに続きました。
「こっからどうするよ?」
「ひとまず休憩だな」
「うむ」
彼らは取り敢えず司令室に入り、現在ある情報をみて作戦会議を始めました。
彼らが喋っている目の前には、ホログラムの敵軍拠点の戦力配置が投影されていました。
「さあどーする?」
「そうだな……」
「そういや海兵隊はなんで攻撃断念したわけ?」
「攻撃ヘリコプターが来てな。一機は江藤大尉が撃墜したが……もう一機をどうにかしないといけないんだ」
「それなら俺が軽~く屠っといたぞ」
後畑がさらっと撃墜報告をすると、岩本はかなり驚いていました。
「本当か?」
「まあね~」
「草架、本当なのか」
「残念ながら」
「それなら次の攻撃でケリがつくな……」
「だな」
そして、岩本は他の海兵隊の士官と作戦を詰めに行き、草架は砲兵隊の様子を見に行きました。
そして、一人司令室に残った後畑は、こう呟きました。
「さてと…次はどんな地獄になるのかねぇ……」
呟いた後畑の唇は妖しく、笑っているかのように歪んでいました。




