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不良軍人戦記  作者: postpone
始まりの戦争
4/7

電撃奇襲戦(上)

《序章》

 はいは~い

 海兵隊副総長の鷹田だよ!

 さっき草架クンは「真面目な人」が来るって言ってたけど・・・

 その真面目な人は技術顧問の結城君なんだけど、なんか思い付いたみたいでぇ、超真面目な顔で「論文書きたいから順番代わってくれ」って言われてさぁ~・・・

 いや~あの人の頼みは断り辛いからなぁ~・・・

 ん? 早く海兵隊の説明しろって?

 分かった分かった~

 じゃあやるよぉ~!

 まず、俺は海兵隊副総長であると同時に、重火器隊の隊長もやってるんだよね~

 重火器隊っていうのは通称で、正式には重火器戦闘支援隊って言うんだよ~

 俺からはこの重火器隊の説明をするね!

 まず、この隊は名前の通り重火器を使って前線に出てる連中を支援するのが仕事だよ~

 説明は・・・それだけ!

 もっと詳しく言うと・・・使う火器類は重/軽機関銃と対戦車兵器。

 やる事はひたすら機関銃撃ちまくって弾幕張ったり、敵の装甲兵器を重火器で吹っ飛ばすだけだよ~

 ただ、大砲とかは砲兵隊の仕事だから管轄外なんだよね~

 ついでに言うと、砲兵隊の隊長は後畑君がやってくれてるよ。

 早速アイツ兼任してるんだよね~

 後畑は他にも陸軍の陸戦隊の砲兵科のコーチ的な事とか空軍の空挺部隊のガンシップの砲撃要員の育成もやってるよ~!

 アイツ意外と万能なんだよね~

 草架君もウチの砲兵隊とか陸軍の砲兵科の観測員の育成やってるよ~

 俺はねぇ・・・う~ん

 特にやってないかな~

 で・も!

 その代わりって言って良いか分かんないけどぉ・・・仕事は多いよ~

 あっ! 時間だ!

 それじゃあまたね~

《強襲揚陸艦内/通信司令室》

「ちょっとそれどういう事っすか?!」

 後畑は全力で問いただしました。

 なぜかと言うと・・・


『だから言ってるでしょ? ついでに敵そこの殲滅してこいって言ってんの』


(後畑の拷問で)そこそこヤバイ戦力があると分かった野営地の殲滅をさも簡単そうにやれと言われたからでした。


「いやいやそれ過労死するヤツ!」

「後畑、もう諦めようよ。あの人に言っても何も変わんない」

『あら! 草架って案外察しが良いのね・・・私の二個くらい上のオヤジが決定しちゃってるからどのみち変えれないのよ』


 ちなみに、彼等の上官の梅花川は少将なので、その人より上ということは・・・

『ちなみにやれって言ってきたの防衛大臣と元帥よ?』


「なっ・・・何だってぇ?!」

「ほらね?」

「嘘だろ? すぐに帰って残ったプラモの処理したかったのに!」

「キレてたのそれが理由?」

「悪いか!」

『悪いとは言わないけど、誉められた事じゃ無いわね』

「あれ? 怒られなかった!」

『怒って欲しいの? アンタってそんなにMだっけ?』

「いえ結構です」


『まあ良いわ。で、返事は?』

「『はい』に決まってるでしょう」

『あら意外ね。アンタもっと駄々こねると思ったけど』

「元から『イエス』か『はい』しか選択肢くれないクセによく言いますね!」

『そこまで分かってて何で毎回無駄に駄々をこねるの?』

「何となくでさぁ」

『それだけで佐官に反対されたってことで作戦の見直しをやらなきゃなんないコッチの身にもなって欲しいわね』

「そりゃどーも」

『ハァ・・・・・・』


「そう言えば何であの野営地の殲滅を進めたいんですか?」

『アンタ陸戦隊の連中が海岸の方の敵軍を包囲しているのは知ってるわよね?』

「もちのろんです」

 陸戦隊とは、陸軍の上陸部隊の事です。

 海軍の上陸部隊と区別するために、海軍の方は「海兵隊」、陸軍の方は「陸戦隊」と呼ばれています。


『現在、陸戦隊は包囲作戦のために戦力を分散させているの。

 そんな状況下において、あの野営地の戦力で後ろを突かれたらどうなると思う?』

「そりゃあ全滅まっしぐらですね。陸戦隊が」

『そういうことよ』

「うわー・・・でもムサイオッサン助けろって言われても・・・」

『そういえば今回の陸戦隊の指揮官は丹野さん立ったと思うんだけど』

「是非ともやらせて頂きます!」

 丹野とは、陸軍中将の娘で、その可愛さと実力により大佐をやっている女性指揮官です。


「うわ」

「さっすが後畑だぁ~」

「そのやる気をいつでも発揮出来るようにして欲しいものだな」

「うるさい! 美人はこの国の・・・いや全世界の宝だろ! それを守らんで何が男だ!」

 と彼は唐突に語り始めましたが・・・


「まあ言ってることは分からんでもないけど・・・」

「そこまで堂々と言われてもぉ~」

「まずお前は男を語るより腐り果てた性根を治せ」

 とこの返し。

 面白いぐらいの酷評です(特に岩本が)。


「岩本・・・それ若干会話の焦点ずれてる」

「どこがだ草架? 後畑のダメなところの事ではなかったのか?」

「半分そうだけどなんか違う」

「お前ら本人が目の前に居ることわかってる!?」

「「「分かってて言ってるに決まってるだろう」」」

「うっ・・・皆酷いよ……」

『アンタ等はまず私が居ること忘れないって所から始めないとダメみたいね』

 この会話から見てとれる通り、草架達は後畑をイジる時だけは、物凄いまとまりを発揮します。


『まあこんなバカみたいな会話に付き合ってる暇はないから、後は上手くやりなさい。命令は以上よ』


 ブツッ!


 梅花川はさっさと(?)用件を済ませると、すぐに通信を切っていました。


「ああ・・・俺達の癒しが・・・」

「達じゃないだろ」

「後畑だけだよねぇ~」

「なぜわざわざ俺を巻き込むんだ?」

「もう良いじゃないかちょっとくらい!」


「っつーか殲滅戦の詳しい作戦内容決めないとな」

「俺はよく分かんないよ~」

「うむ。敵の戦力を知ってからになるわけだが・・・」

 と言って岩本はチラッと後畑を見ましたが・・・

「ゼェーゼェーハーハー・・・」

「「「何でそこまで体力減ってんだお前?!」」」

「演説でテンション上げすぎた・・・」

「流石は後畑だぁ~。ペース配分とか全く考えてないね~」

「どうやったらそこまで体力が減るのか聞きたいところだ」

「それより作戦!」

 今度は草架がキレました。


「じゃあ敵の戦力からだね! ちょっと待っててくれ!」

 後畑は唐突に部屋を飛び出していきました。


「え?」

「アイツは何がしたいんだぁ~?」

「やはり理解不能だな」

「お待たせ!」

 すぐに戻ってきた後畑は、皆の前に置いてあるテーブルの上に、草原の上から見た風景がプリントされた紙を置きました。


「ますます分からんけど」

「もうダメだ~」

「そろそろ反応するのも疲れたな」

 三人が目を白黒させている間に、後畑は、今度はプラモデルとフィギュアを取り出しました。

 そして、そのプラモデルやフィギュアは全て火砲や戦車、歩兵のものでした。


「オ~マダーリン…オ~マダーリン・・・」

「なに歌ってんの?」

「わかんね」

「は?」

「なんかのアニメでロボって言うキャラが歌ってたんだよね」

「ふ~ん」

「そんな事よりそれは何だ・・・後畑?」

「ん? ああコレか。敵の野営地の陣形やら戦力やらを分かりやすく説明しようと思ってさ」

 後畑はそう言いつつ、通信司令室に備え付けの大型無線の電源を入れ、基地に繋げました。


「ハロー! 聞こえてる? こちら後畑中佐だよ!」

『聞こえています。何か用件でも?』

「いやあちょっと沼田に聞きたいことがあってさ!」

『報告書はこちらで預かっていますが』

「マジ? じゃあ君で良いや! あのさ―――――」

『ふむ。そうでしたか。それでは、データを転送するので、少々お待ち下さい』

「はいはーい! なるべく早くね?」

『了解』


 そして10分後―――――

「おっ! 来た来た!」

 後畑は早速データを確認しつつプラモデルとフィギュアを並べ替え始めました。


「よし出来た! 早速作戦会議だ!」

「なんかスッゴいジオラマ出来てるけど」

「わ~お」

「こんなに力を入れたジオラマが必要なのか・・・?」

「何を言っているんだ! 妥協してたら何も始まらない!」

「いっつも全力で妥協点探して楽しようとしてるクセに」

「いっつも一番最後に報告書出すクセに~」

「お前は毎回事あるごとに怠けているだろう」

「鷹田と岩本の論点ずれてる!」

 後畑はなぜか絶叫しました。


「後畑はほっといて早く作戦会議しようぜ?」

「そだね~」

「ああ。分かった」

 そして、後畑の物凄くエグい作戦と、草架の極めて普通な作戦と、鷹田のユルい作戦と、岩本のかなり突撃志向の強い作戦とで真っ正面から衝突し――

 結局、現地でアドリブでやろうということになってしまいました。

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 《敵野営地から1㎞離れた地点》

「おーい! 全員揃ってる?」

「はい! 全員います」

 そう聞いて、後畑は満足した風に頷き、彼の部隊を見ました。


 まず、先頭にいるのが副隊長の木田咲哉(きださくや)です。木田は少し小柄な好青年です。

 そして、木田の後に続く隊員達は、後畑の「人の顔と名前一致させられない」症候群が発動したため、彼の中ではモブA、モブB、モブC・・・となってしまっています。


 そして、そのモブ達が乗っているのは、全て自走砲でした。

 自走榴弾砲、自走対戦車砲、自走迫撃砲等々各種火砲を積んだ自走砲が置いてあります。

 そして、その自走砲の群れの中心には、ひときわ目立つ車体が鎮座していました。


「やっほーい! やったぜやっと乗ってやれるぜ! 我が相棒!」

 それは、はっきり言って異形の車体でした。

 戦車の砲塔部分を外し、代わりにアームを6本搭載したような不可思議な車体です。

 アームと言っても、それらは全て120㎜切替型無反動砲を装備しています。

 切替型といっているのは、尾栓の開閉を選択することで無反動砲とするか、普通の砲として使うかが決められるようになっているからです。

 そのアームの中心には鉄板で囲われただけの車内(?)には、簡素な操縦席と、大量のレバーとボタンでごちゃごちゃしている砲撃手用の席、観測員用の席がありました。

 その姿はまるで―――

「なんか変わった形の花みたいだな」

「だからアイツの愛称は『ストレリチア』なのさ!」

「『ストレリチア』?」

「ラテン語で極楽鳥花属の事だよ」

「へぇ~」

 ちなみに、ゴクラクチョウカは花びら3枚、がく3枚なのですが、がくにも色が付いているため、花びらが6枚有るように見えます。


「う~ん……やっぱり『デンドロビウム』の方が良かったかな?」

「それ今結城が悪ふざけで造ってる超巨大兵器じゃないか」

「結城さんってそんな危ない人だっけ~?」

「俺もそんなもの見たことないが」

「だってアイツ造船ドックで造ってるもん」

「え・・・?マジで~?」

「うん。マジ」

「成る程な。道理で造船ドックが騒がしいワケだ」

「そんなに騒がしいかい?」

「ああ。いつも船の修理が無いときは静まり返っているのに、最近妙に人と物資の出入りが激しくなったからな」


「・・・結城と言えば~?」

「そう言えばすっかり忘れていたな」

「何が?」

「少し待っていてくれ」

 そう言って岩本はジープに乗って強襲揚陸艦に戻っていってしまいました。


「ん~?」

「実はぁ・・・結城さんから変なアタッシュケース渡されてさ~」

「ハイハイそれで?」

「結城さん曰く『後畑用の新兵器』らしいんだけど~」

「マジで?! とうとうアレが出来たかな?」

「アレとは?」

「見てのお楽しみだよ!」

「おい・・・持ってきたぞ」

 いつの間にか岩本が後に立っていました。


「おお・・・コレか」

 そして後畑がアタッシュケースを開けると―――

 沢山の銃の部品と、白い棒が入っていました。


「おおおおおおおおお! 来たああああああああ!」

「いきなりどうした?」

「だってコレ―――」

 そう言って後畑はその白い棒の側面に付いていたスイッチをイジりました。


 ブゥゥゥゥゥゥン


 低く、そこまで大きくない音と共に、光輝く刀身が現れました。

「遂にビームサーベルが俺の手に・・・」

 そう言って後畑は若干うっとりとしているような顔でそれを見ていました。

「ん? なんかメモっぽいの付いてる」

 草架がそう指摘すると、

「あっ。ホントだ」

 後畑がそのメモを見ると、こう書いてありました。

『ビームサーベルとかライトセーバーとかフォトンソードだと版権に引っ掛かるかもしれないから、刀剣型プラズマ式溶断機という名目で開発しておいた。

 報告書に書くときにはそこに留意してくれ。 by結城』


「わお」

「流石結城」

「なにこの心配り」

「強すぎる」

「人徳あるぅ~」

「見事なものだ」

「そう言えば残った銃の部品はなんなんだ?」

「ちょっと組み立ててみる」

 そう言って後畑は部品を組み立て始めました。


 ものの数分で大型の銃が組上がりました。

「これはこれは!」

「ナニソレ?」

「これは『97式自動砲』つってな・・・」

「砲? どう見ても銃だろ」

「だからそこを今から説明すんの!

 この銃は、対戦車ライフルとして設計、製造されたセミオート銃。

 旧日本軍では20㎜以上の口径の火器を『砲』と読んでいて、セミオートは珍しかったから、『自動』の名を付けた。だから『自動砲』。

 はっきり言ってその当時の戦車にはほぼ通用しなかったけど、ソ連の装甲車やトーチカに対してはかなりの攻撃力を見せたらしい。そして・・・」

 後畑の長ったらしいうんちくが始まったため、皆早々に出撃準備を始めました。

「ねえ皆聞いてる?」

「「「聞いてるわけないだろ」」」

「酷いよ……あんなに頑張って説明したのに!」


 そんなこんなしている内に、出撃準備が完了しました。

「さてと・・・こんなに大勢が固まると榴弾一発で大打撃喰らいそうだな」

「じゃあ分ける~?」

「妥当な方法だな・・・」

「じゃあ俺と後畑、岩本と鷹田かな?」

「ああ。そうしよう」

「よ~し。砲兵隊カモーン!」

「よし・・・全員行くぞ!」

「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」


 そして、海兵隊は進撃を開始しました。

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 《敵野営地付近/後畑、草架のルート》

「ヒュ~・・・早速大歓迎されてんな!」

 後畑はそう言って迎撃に出てきた戦車隊を見据えていました。

「敵は多分『黒豹』3輌とT―46が1輌!」

 草架が敵を視認すると、即座に種類を見分けました。

「はん! 劣化コピーと純製品の混成部隊かよ!」

 黒豹とは、ソ連製の重戦車であるT―46のコピー戦車です。

 後畑は劣化コピーと言っていますが、性能は悪くないようです。


「重戦車4輌って大丈夫なんですか?!」

 操縦席に座る若い部下が聞きました。

 まあ当然の反応です。

「おう! 任しとけ!」

 と後畑は自信ありげに・・・そしてニヤニヤ笑いながら答えました。

 ついでに言っておくと、彼等が乗っているのはもちろん「ストレリチア」です。


 ズドォン! バゴォォン!


 敵の砲撃が結構な数来ましたが、操縦士が頑張ったため、爆風で煽られるだけで済みました。

 まあ結構な数の砲弾の破片を食らいましたが、それでやられるようなヤワな造りではありません。


「喰らいやがれ!」

 後畑は、敵が射程内に入った瞬間、全ての砲をぶっぱなました。


 ズドドドドドドォン!


 そして、放たれた6発の砲弾は、正確に敵の砲塔に向かい―――

 弾かれました。

 しかし、砲弾は砲塔の下に弾かれ、そのまま戦車の上面装甲をブチ抜き、一瞬で3輌の重戦車が撃破されました。


「えっ・・・? あんな簡単に?」

「うわー・・・さすが後畑。ショットトラップ狙ってやがったか」

「あたりめぇだ・・・さっき撃破したの全部『黒豹』だしな」

「スゴイ・・・僕感動でs」

「おい! まだ居るんだから気ィ抜くな! スモークディスチャージャーだ!」

「りょっ了解!」

 そして、スモークが8発放たれ、敵の視界を奪いました。


「アイツを掠めるぐらいギリギリですれ違え! 一撃でキめてやる!」

「えぇ?! 嫌ですよ!」

「やってみ? こう言った時の後畑は絶対やってくれるから」

「うぅぅぅ~・・・分かりました!」

 そして、すれ違うまでの少しの間に砲を全て90°近くまで上げ、斜め後を向かせました。


 そして、スモークの中で本当にギリギリですれ違うと、

「そこ!」

 そう言って後畑は全ての砲の発射ボタンを押しました。


 ズドドドドドドォン!


 そして、スモークから飛び出して来た敵戦車の砲が正確に「ストレリチア」を捉え、発砲しようとしたその時―――

 先程後畑が無駄に仰角をつけて撃った6発の砲弾が上から降り注ぎ、敵戦車の上面装甲を容赦なく食い破り、内側から破壊しつくし、大爆発しました。


「よし! やりぃ!」

「もう呆れる他ないな」

「そう言えばショットトラップってなんですか?」

「ショットトラップって言うのは・・・

 簡単に言うと、跳弾が別の所の装甲を貫通しちゃうこと。

 最近の戦車の車体はそれが起こり辛いように設計してあるからほぼ起こんない。

 普通は・・・いや、砲撃のプロでも狙って出来る事じゃあない。」

「じゃあ何で後畑隊長は出来てるんですか?」

「それは俺が素晴らしく偉大だからさ!」

「コレばっかりは認めるしかないな」


 すると、いきなり無線が鳴りました。

『隊長! 部隊の展開完了しました!』

「よし! 後は連絡が有るまで待機だ! 他の連中にも伝えといて」

『分かりました! それでは!』


「さあて・・・これで俺らは連絡が有るまでお役御免だな」

「そうですね」

「アイツ等で大丈夫かなあ?」

「まあ待とうや・・・俺等の活躍の場が与えられる事を祈りながらな」

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 《敵野営地付近/岩本、鷹田のルート》

「砲兵隊の展開が終わったようです。」

「よぉ~し。行っくぞ~!」

 そう言って鷹田はジープの助手席でロケットランチャーを二挺構えました。


 彼が持つロケットランチャーは、ほとんどバズーカと言っても良い見た目ですが、色々おかしいです。

 まず、連発出来るようにロケット弾が8発入ったマガジンが4つ、後ろから見ると十字になるように挿されています。

 そして、チューブ状の砲身の先の方には、強化ガラスが嵌め込まれた窓があるシールドがついています。


「あまり派手にやり過ぎるなよ! 囲まれたら流石に打開は困難だ!」

 岩本が、並走するもう一台のジープから呼び掛けています。


 岩本は左右に三本づつ、合計6本の軍刀を腰に差しています。

 その軍刀は後畑も持っていたソニックブレイドです。

 ただ、後畑が持っている物より高周波振動が強く、切れ味が圧倒的に良いです。

 そして、腕にショットガンがマウントされていました。

 正確に言うと、後畑達が着けているようなフレーム型パワードスーツに付いています。

 腕の向きで照準し、専用のスイッチを握り込む事で発砲します。

 因みに、スイッチは軍刀にガムテープで無理矢理張り付けてあります。


「分かってるよ~!」

「鷹田中佐! そろそろ敵陣です!」

 鷹田の副官兼観測員の林雄也(はやしゆうや)がいまいち危機感の足りない上官を怒鳴りました。


「はいは~い!」

「戦車、装甲車混成部隊発見!

 編成はT―46戦車と思われる重戦車6輌、23式歩兵戦闘車8台、55式機動砲型戦闘車両12台です!」

「はいよ~・・・ふぁいや~!」

 鷹田は両方のバズーカの引き金を引きました。


 ドシュッ! ズシュアアアアアアアアアア! ドゴォン!


「歩兵戦闘車1台中破! T―46戦車1輌は装甲貫通せず!」

「りょ~かい! ガンガンいくよ~!」

 鷹田はそう言って出来る限りの早さでバズーカを連射しました。


 ドシュッドシュッドシュッドシュッドシュッ!


 ロケット弾は全て噴煙と閃光を吐き出しながら敵の部隊に突っ込み――――

 全て外れました。


「ああもう! 全然当たってないじゃないですか! 弾だってタダじゃないって言うかロケット弾だから結構高いんですよ?!」

「んなこと行ったってぇ~。こんなスピードで疾走するジープから撃って当てる方が難しいよ~」

「じゃあもっと近づくんで当ててください!」

「そういうことじゃないよ~。まず時速100㎞とか言う意味分かんない速度をどうにかしてよぉ~」

「速度落としたら袋叩きですよ! 当てれないんだったらそれで良いですからとっととやっちゃって下さい!」

「うわ~ん! この部下言ってることムチャクチャだよ~!」

 こんなふざけた事を言っていても、やる時は普通にやるのが鷹田です。


 ドシュッドシュッドシュッドシュッドシュッ!


 ズシュアアアアアアアアアア! ドゴォンドゴォンドゴォン!


「っ・・・! T―46重戦車1輌撃破、2輌大破! 23式歩兵戦闘車2台撃破、1台小破!」

「わ~い! 俺ってやっぱやれば出来る人だ~」

「出来るんだったら最初からやって下さい!」


 ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガ!


 23式歩兵戦闘車6台の一斉射撃が来ました。

 歩兵戦闘車とは、兵員輸送の機能と積極的に戦闘に参加するための武装を持った使い勝手のよさそうな装甲車です。

 23式歩兵戦闘車の武装は、30㎜二式機関砲です。


「うわ~!」

「これは!」

 鷹田や岩本が現在乗っているのは、ルーフも装甲も無い超軽装のジープなので、機関砲であっても、一発貰えば即死です。

 なので、彼らは全力で避けます。


 バチバチバチバチバチバチバチバチッ!


 ズドォン! ズドォン! ズドォン!


 海兵隊の戦車が横合いの茂みから飛び出し、機関砲弾を弾くと、お返しに砲撃をぶちかましました。

「55式1台撃破!」

「おお~!」

「良かった・・・ってか戦車隊遅いんだよ!」

 林が早速(無線で)戦車隊に文句を言いました。


『スマンな! 敵の戦車隊に足止めされてたんだよ!』

「ええ?! それでその敵は?」

『全滅させた。俺らがあんな劣化コピーの群れに負けるとでも?』

「それなら良いや・・・」

 鷹田と林を良い感じに助けたのは、今は旧式となってしまった、88式戦車でした。


「いつまでそんな旧式乗り回す気なの~? 新型の方が戦果出ると思うよ~?」

『この戦車が俺の棺桶になるまでに決まってんだろバカヤロウ!』

「わ~! さっすが隊長だ~! カッコいい~」

『・・・お前はその俺の上だろうが』

「でも隊長さんの方が年上だしぃ~」

『あと、俺の名前いい加減覚えやがれ!』

「何て名前だっけ?」

江藤大雅(えとうたいが)だこのヤロー!』

「大雅の『が』の字って『みやび』って字だよね~? イメージ無いよね~」

「中佐、それ江藤さんが名前に関して一番気にしてるヤツです」

『そうだぞ!』

「まあどうでも良いや~」

「・・・」

『・・・』


 ギギッ…ガリガリガギャッ……ウィーン……ガゴン! ズドォン!


 ドゴォン!


『ぐっ!』

「?!」

「どしたの~?」

『クソッ! 大破してるアレまだ動けんのかよ!』

 鷹田達が戦車の裏から飛び出ると、大破炎上している戦車の砲塔が微妙に動いているのが見えました。


「うわあ?!」

「やってやる~!」


 ドシュッ! ズシュアアアアアアアアアア!


 バゴォォン!


「敵、完全に沈黙!」

『スマネェな!』

「良いって良いって~」

『もう少しで俺の隊が到着するからよ……それまで耐えててくんねぇか?』

「了解!」

「お安い御用だよ~!」

『キャタピラがヤられたんでな……俺は固定砲台になっちまうが良いか?!』

「大丈夫ですよ。コイツの最高時速は200㎞です!」

「んええ?! そんなに出るの?!」

「知らなかったんですか?」

「うん」

『隊の装備ぐらいちゃんと確認しとけよ・・・?』

「次から気をつけるよ~」

『どうにも信用ならねぇな』

「ですね」

「酷いよ~」

『日頃の行いだコノヤロー!』


 ギュラギュラギュラギュラギュラギュラギュラ!


『来やがったぞ!』

「よ~し! 最高速で行くぞ~!」

「えっ・・・? 了解!」


 シュドッシュドッシュドッシュドッシュドッシュドッ!


 ドゴォンドゴォンドゴォンドゴォンドゴォンドゴォン!


「55式3台撃破、23式1台撃破、T―46戦車2輌撃破!」


 ギュイーン……ズドォン!


 ズドゴォン!


「おお! T―46撃破! 戦車は全滅です!」

「よぉしガンガンやるぞ~!」


 ドシュッドシュッドシュッドシュッ!


 ズシュアアアアアアアアアア! ドゴォンドゴォン!


「23式2台撃破、1台大破、1台中破! 最後の1台は行動不能!」

「23式も全滅だぁ~!」


 ギュラギュラギュラギュラギュラギュラギュラギュラ!


 複数の戦車のキャタピラの音が聞こえました。

「まさか!?」

「違うと思うよ~」


 ズドォン!ズドォン!ズドォン!ズドォン!ズドォン!


 ズドゴォン!ズドゴォン!ズドゴォン!ズドゴォン!ズドゴォン!


「55式・・・5台撃破・・・残数3!」

『ハッ! おせぇんだよアホ共!』

『すんませんね! 隊長! コイツ等あんまり悪路得意じゃ無いんすよ!』

『まあ良い! さっさと蹴散らして突撃配置に着けぇ!』

『イエッサー!』


 ズドォン! ズドォン! ズドォン!


 ズドゴォン! ズドゴォン! ズドゴォン!


「すごい・・・55式3台撃破・・・全滅」

「やったぁ~・・・よぉ~し早く伝令だ! 重火器隊、総員配置に着け~!」

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 鷹田が敵を殲滅した頃、岩本の隊は敵の歩兵部隊を相手に大活躍していました。

「フンッ・・・数だけは多いな!」

 現在、岩本は敵の野営地付近の遊撃歩兵部隊と戦闘をしていました。


 ザシュッドシュッ!


 ダァン!


 彼は腕にマウントしたショットガンと軍刀をフルに使い、容赦なく敵を切り刻んでいきます。

 そして、彼の周りには、刀を持った隊員と、アサルトライフルを持った隊員の二通りの部下がいました。

 どちらも岩本が率いる「抜刀隊」の面々です。

 抜刀隊とは、正式な書類だと「海兵隊第一白兵突撃隊」と書いてあります。

 その名の通り、突撃作戦及び白兵戦のプロを集めた隊です。

 そのため、全員大体近距離戦用の装備です。


 タタタタタタタタタタタタン!


 大体はアサルトライフルで敵を誘い込み、刀でメッタ切りするのが彼らの戦法です。


 岩本は目の前に飛び出して来た敵部隊に飛び込み、運悪く近くに居た兵士に狙いをつけました。

「うわぁ?!」


 岩本は容赦なく胴を薙ぎ、心臓を突き、首を刈って3人を斬殺すると、そのまま両腕を敵に向け、軍刀に無理矢理張り付けたスイッチを握り込みました。


 ダダァン!


 両腕にマウントされたショットガンが火を吹き、至近距離の敵を蜂の巣にしました。


『降伏します・・・』

 最後の一人が降伏しました。


「そうか・・・おい! お前ら! この兵士を可及的速やかに捕縛、情報を取れ!」

「「「イエッサー!」」」


 数人の色々持った兵士が近づき、敵兵をロープでぐるぐる巻きにすると、そのまま装甲車の所まで持っていきました。


「周辺の敵は?」

「ほぼ壊滅、敗走しています」

 岩本の副官である高坂丸尾(こうさかまるお)が答えました。


「そうか・・・よし。隊員を全員回収、すぐに移動だ」

「了解です」

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 《舞鶴基地/司令室》

「それは本当なの?」

 梅花川は聞き返しましたが・・・


「ええ。残念ながら」

 彼女の副官の長沼太一(ながぬまたいち)は冷徹な声で答えました。


「そう・・・」

 彼女は非常に残念・・・いや、無念そうに言いました。


 何故なら―――

「ウチの所属の艦を付けていれば・・・こんなことには・・・」

「少将、お言葉ですが・・・こちらの護衛を断ったのはあちらです」

「そうだったとしても・・・無理を押し通してでも付けるべきだったと思うの」

「護衛があったとしてもやられていたでしょうな、彼等は」

「っ・・・でも・・・」

「いい加減感傷に浸るのは止めて下さい! 少将!

・・・海上保安庁の巡視船は立派に役目を果たしたのです!

死者をどうのこうのとは言いませんが、彼等を悼む気持ちがある ならば、せめて彼等を殺した連中を地獄に送ってやる方法を考え て下さい!」

「・・・そうね」


 彼女が落ち込んでいたのは、先程、海上保安庁の巡視船3隻が撃沈されたとの報告を受けたからでした。

 生存者ゼロという一文もありました。


「それで、巡視船は何にやられたの?」

「どうやら敵の補給部隊の護衛のようです」

「護衛の戦力は? 駆逐艦3隻、軽巡洋艦2隻の艦隊のようです」

「成る程ね・・・後畑達はまだ?」

「現在あの野営地の攻略中です」

「・・・すぐに終わらせろって連絡しといて。完了の報告があったらどうやっても良いからアイツ等を艦に戻して」

「了解しました。他は?」

「特に無いわよ・・・」

「分かりました。それでは」


 長沼が部屋から出ていくと、彼女は呟きました。

「早く戻って来なさいよ・・・バカ共・・・アンタ達くらいしか頼りになるヤツがいないのよ・・・」

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