表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

白薔薇さまの本性は!?

作者: 灰崎 さよ

初投稿です。

文脈もあちこちおかしい所はありますが優しい目で見てくださると嬉しいですm(_ _)m

とある夜、とある国では国王主催の舞踏会が行われていた。煌びやかなシャンデリア。ひらひらと舞い踊る色鮮やかなドレスたち。所々から聞こえてくる談笑の声。

そんな中、一際目立ち、周りを女性に取り囲まれている青年がいた。彼の名前はカイル=グランヴィル。グランヴィル侯爵家の長男にして、超絶美形である。一切のくすみのない銀色の髪に、これもまた淀みのない青の瞳。人当たりもよく、穏やかと評判だ。そんな彼の容姿を比喩してなのか、社交界の女性からは「白薔薇さま」と呼ばれ、持て囃されていた。










その人だかりを遠巻きに眺めているのが私、シエラ=ハーベスである。超がつくほど貧乏貴族であるのにも関わらず結婚相手探しと称して母様に追い立てられてしまったのだ。


(もちろん、結婚相手探しなんてする気の欠片もないんだけどね)


そもそもお金がないためとてもじゃないが他の令嬢に並べるほどの衣装など用意ができるはずもなく、今日の私のそれはそんじょそこらの侍女と変わらないのではないかという代物である。それでいて容姿は茶髪黒目というぱっとしないものなので尚更だ。

手に持ったグラスを揺らしながらそんなことを考え、小さくため息をついた。








会も中盤に差し掛かり、いよいよダンスが始まるようだ。男性は必ず誰か一人へとダンスを申し込まなければならないという暗黙のルールが存在するため、女性たちは浮き足立っている。最も注目されているのはやはり、白薔薇さまのようだ。彩艶やかなドレスが彼の周りでひしめき合っているのが見える。


対する私は相変わらずの壁の花である。私の前を通り過ぎ、目当ての女性へ向かっていく男性たちは気をつかっているのかこちらへ嘆かわしげに視線を送ってくる。その視線が逆に私を苦しめているということにぜひ気づいてほしいところだ。


(場違いすぎる…。やっぱり来るんじゃなかった!)


なんとなくいたたまれない気持ちになり、私はグラスを両手でギュッと握りしめ僅かに視線を落とした。


もう、帰ってしまおうか。




そんなことを考えた時だった。





周りからざわめきが起こっているのが私の耳に飛び込んできた。何が起こったのかともう一度前へ視線を戻す。

すると、なんと、あの白薔薇さまがこちらへ向かってきているではないか!


(なになに?私何かしましたっけ!?)


周りの人の目線も自分に集まっているのが感じられ、冷や汗と焦りが止まらない。

今すぐにも逃げたい私に対し、白薔薇さまは優雅に歩いてこられ、私の目の前で足を止めて手を差し出してきた。





「私とダンスを踊っていただけませんか」





その美麗な笑みから発せられた声もまた透き通っていてどこまで完璧なのだと恨みたくなる。…ではなくて!



(なんで!?私なの!?)



私が混乱しているのが分かっているのか、分かっていないのか、白薔薇さまは更に笑みを深めてくる。

片や侯爵令息、片や貧乏令嬢。私が覚えていないだけかとも思ったが、立場上面識などないはずである。


いくら考えても答えは見つからないが、私にできる返事など1つしかないに決まっている。


「よ、喜んで」


私はなんとか笑みを顔面に貼り付け、その手を取った。

侯爵令息様に恥などかかせられるわけがないのである。

すると白薔薇さまはさらに笑みを深いものにし、ゆっくりと私をダンスホールの方へ引いていく。




だが私は忘れていたのだった。




今日の服装は着慣れない長いひらひらしたドレス。

踵の高い靴。そして人に囲まれるという緊張。


それから、片手に持ったドリンク入りのグラス。




そんな状況の私がどうなるのか?








ガッシャーン、という何かが割れる音がホールに響いた。

私の視界一面に広がる床、そこについている私の手、臀部に走る微かな痛み。

それを感じて、私は自分が転んだのだとやっと気づいた。

そして持っていたグラスはどこに……と考えたところで顔を上げた。




(あ……え……嘘でしょ…!!)




目の前にあるのは白薔薇さまのものと思わしきおみ足である。今日の白薔薇様の衣装はグレーのものだ。それはとても高価そうな代物だった。


その裾には紫色の大きなシミが広がり、周りの床にははガラスが散乱している。




あろうことか白薔薇さまの服を汚してしまったのだ。



自分の顔が強ばっていくのを感じる。

周りからのざわめきもだんだん大きくなって聞こえてくる。

それがさらに私を焦らせた。




「も、申し訳ございません!!今すぐ何か布を!布を持ってまいりますので!!」




とてもじゃないが、うちの家で弁償できるものでは無いことは分かりきっている。

ならば少しでも早く汚れを落とさなければと私は布を探しに立ち上がろうとした。


「いえ、構いません。あなたはお怪我ありませんか?」


私の手を優しく掴み、白薔薇さまはそう言った。


「私なら大丈夫です。それより早く汚れを落としてしまわないと、シミになってしまいます!」

「私の服などどちらでも良い。それよりもあなたの体が心配なのです。」


歯の浮くような台詞をさらりと口にし心配そうに見遣る白薔薇さま。

噂通り、性格まで完璧なようだ。


こんなやり取りをしているうちに、ざわめきはホール全体へと広がっていることに気づいた。



(どうしよう…早くどうにかしないと…)



それに白薔薇さまも気づいたのか、周りに目をやり、少しだけ顔を歪めた。



「ここにいては、皆様のお邪魔になってしまいますね。控え室へ参りましょうか。」



それから失礼します、と言うと白薔薇さまは私の膝裏と背中に手を差し入れ、さっと持ち上げた。

私の目に映るのは白薔薇さまの顔と天井ばかりである。

これが所謂お姫様抱っこというやつである。


「な、なにをなさっているのです!いけません!」


頬に熱が集まるのを感じ、私は首を振って抵抗する。

だが白薔薇さまは笑みを浮かべただけで、足を止めることはなかった。









給仕に案内してもらった控え室へ白薔薇さまと共に入る。もちろん、あの小っ恥ずかしい格好のままで、だ。


「あの…そろそろ…」



白薔薇さまは後ろ足で扉をパタリと閉める。

次の瞬間。






どさり。







再び私の臀部に少しの痛みが走る。本日二回目である。

そして私の視界には床。これも本日二回目である。



要するに、私は床に投げ置かれたわけだ。




(……え、ええ!?)




開いた口が塞がらない私に対し、白薔薇様はスタスタと部屋の奥にあるソファへと向かっていく。


その顔が心無しか赤く見えたのは気のせいであろうか。




「ええと…?グランヴィル様?」





いつまでもそのままでいる訳にもいかず、私はドレスの裾を払うと白薔薇さまを追いかける。

白薔薇さまは長い足を優雅にくみ、険しい顔で腰掛けていた。




「さっきのこと、やはり怒ってらっしゃるのですか?」



「……。」


「あの、本当にどう謝罪したら良いのか…。」



「……。」


「せめて、汚れを落とさせて頂けないでしょうか…」



「……。」



白薔薇さまはむんずと口を閉じていらっしゃって、一体なにを考えているのか全くわからない。

ならばと、懐からハンカチを取り出した。

そのまま腰を落とし、白薔薇さまのズボンの裾へ手を伸ばす。





「触るな!」





この部屋に入ってから初めての白薔薇さまの発言は強ばったものだった。

青い目をカッと見開き、威嚇するように睨む。

そしてその顔は真っ赤に染まっている。



「いえ…ですが私にできるのはこれくらいで…!」



再び手を伸ばすと、白薔薇さまはさっ、と飛び退いた。



「触るなと言っている!近寄るな!」



と、いう白薔薇さまの顔は変わらず真っ赤で、説得力の欠片もない。




(もしや……この方……)




「女性が苦手なのですか?」




私が口にすると、白薔薇さまは図星だったのかふいと顔を逸らしてしまった。

ちょっと面白いと思ってしまっている私がいる。

にやり、と口角が上がるのを感じた。



「それならばなぜ私などにダンスの申し込みをしたのですか。」



本当にに女性が苦手であるならば普段の舞踏会で女性に囲まれるのは相当の苦痛であるはずだ。

どうしてここまで隠していられたのか。

よほどのポーカーフェイスをお持ちなのであろう。



「……必ず誰かに申し込まなければならないだろう。お前のような身分の割れていない侍女であれば、いざこざも少ないかと思ったのだ。上位貴族の令嬢だと色々面倒だからな。」



白薔薇様はお綺麗な顔を歪ませてこういった。


「私」が「侍女」であると。


私が打ちひしがれ、しばらく呆れ黙っていると、白薔薇さまは首を傾げた。



「なんだ?」



「……大変申し訳ありませんが私は侍女ではございません。遅くなりましたが、シエラ=ハーベスと申します。」


私は、ドレスの裾をつまみ礼をしてみせた。



「……なっ!」



白薔薇さまは心底驚いた顔をしている。

そもそもなぜ舞踏会に侍女がいると思ったのだろう。

それほど私がみすぼらしかったのであろうか。

それとも白薔薇さまが見かけによらず抜けている人なだけなのだろうか。



「お前、ハーベス家の娘か……。だからそのような格好を……。」



私の家の財政事情を知っているのか、白薔薇さまはそう呟いた。だいぶ失礼である。



「ええ、仰る通りです。」



結局のところ、私が侍女であろうとなかろうと、私の顔を知る人などほぼいないだろう。

今まで舞踏会に顔を出したことがないのだから。



「それで。どうなさいますか?私が侍女だと思って態度を変えたのだと思いますが、私は一応令嬢なのです。社交界に貴方の本性の噂を流すかもしれませんね?噂が流れたら失望されてしまうかもしれませんねぇ。」



私はにやりと笑みを浮かべながら、少し挑発的な顔で白薔薇様を見遣る。

実際のところ、私が噂を流すメリットなど一つもない。だが混乱している白薔薇さまはきっと気付かないはずだ。

そして私は彼よりもだいぶ下の身分であるのに不遜な態度をとっているという自覚もある。

それでも、一言頼んでおかなければならないことがあるのだ。

そのためには交渉も必要である。




私を嫌そうにみた白薔薇さまは、遠慮という言葉を知らないのかその綺麗な顔を思い切り歪めた。




「……何が望みだ。」








最初から私の望みは一つである。
















「…………衣装汚したこと全部チャラにしてください!!!!!」



































それからというもの、私と白薔薇さまの交流は何故かひっそりと続いていた。


特段いやらしいものではなく、週一でただお茶をするというものなのであるが。

きっと本性を知られてしまった私への監視だと思う。



ちなみに、衣装については全てなにもなかったことにして貰った。白薔薇さまさまである。






そしてその白薔薇さまの本性はただの恥ずかしがり屋で女性嫌いで、すぐお顔を真っ赤にしちゃう赤薔薇さまだったってわけです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ