足裏マッサージのお客様
銀河中に支店のある『癒し空間 サロン・ド・アンマー』。火星支店には本日も癒しを求めてお客様が来店します。
本日のお客様:火星への観光客 ティム
症状:足の疲れ
火星観光も今日でおしまい。地球へのシャトルまでにはまだ時間がある中、展望通路から離れた脇道を冒険気分で歩いていくと、木製の看板が目に入った。
『癒し空間 サロン・ド・アンマー 火星支店』
マッサージ店だろうか?扉を開けると、受付の女性が話しかけてきた。
「いらっしゃいませ」
「あの・・・ここはマッサージ店ですか」
「そうです。初めてのご来店ですか?」
「はい。観光で来て・・・」
「そうですか。メニュー表をどうぞ」
普通に肩のマッサージから意外なところで目のマッサージまである。その中で、今一番受けたいマッサージは・・・。
「観光で足が疲れたので・・・足裏マッサージをお願いします。」
「かしこまりました。1番の個室へどうぞ」
個室の中は、昔、旅行で行ったアジアの雰囲気であった。薄暗い明りの中、知っている香りがただよってきた。
「本日の香りはオレンジです」
個室の反対の入り口から、受付とは別の女性が入ってきた。
「初めてのお客様ですね」
「はい。観光で来て・・・」
「左様ですか。まず、こちらへお着替えください」
女性から館内着を渡される。
「着替え終わったら、お声がけください」
着替え終わって声をかけると、先ほどの女性が何かを抱えて戻ってきた。
「足湯用の機械になります。こちらにおかけください」
抱えていたものを足元に置かれる。中を覗くと液体で満たされていた。
「普通のお湯ですが、ジャグジー仕様になっていて気持ち良いですよ」
おそるおそる足を入れると、女性がスイッチを押した。シュワシュワ・・・
「お・・おぉ」
確かに気持ちいい。少しくすぐったいけど足のジャグジーって良いな。シュワシュワとした泡の音も楽しむ。
「失礼しマス」
女性がお湯を脛や脹脛までかけてくれる・・・温かい。
「・・・気持ち良いですね」
「ありがとうございマス」
十分くらいそうして居ただろうか。女性がスイッチを切り、足を上げるように言われた。
「こちらのオットマンへどうぞ」
ふかふかのタオルで足を拭いてもらう。そして、オットマンに足を乗せた。
「では、足裏のマッサージを始めマス」
まずは確かめるように足裏全体を触られる。
「ここ、張ってマスね」
土踏まずの内側部分をグーッと押された。
「痛ったたた」
「大丈夫ですか」
手を止め、問いかけられる。
「大丈夫です。痛気持ち良い感じです」
「そうですか。では、続けマスね」
グッ、グー、グッ、グー、グッ・・・
「この辺りは胃ですね」
「胃・・・」
観光中、暴飲暴食したためだろうか。
「よく歩かれましたか?足全体が疲れてますね」
「えぇ。観光地を渡り歩きました。なかなか、火星には来られませんから」
土踏まず、足の内側・外側と普段、触らないような部分を揉んでくれる。
グー、クニクニ、グー、クニクニ・・・。
時々痛いけど、全体的には気持ち良さの勝利だった。
「お疲れ様でした」
受付の女性が白湯を渡してくれた。
「あの、火星支店ということは地球にも・・・?」
「はい。こちらが地球の本店・支店の一覧になります」
一枚の紙を渡される。読んでみると家の近くにも支店があった。
地球に戻ってからも行ってみよう。この癒しの空間に!!