2 女神アイシャ
「お~い、聞こえる?もしも~し、聞こえる?返事がないただの屍のようだ。あはは、しまったな~、間違っちゃったよ。仕方ないか」
「う~ん」
もう朝か?目覚まし時計はまだ鳴ってないぞ、でも明るいし。
眠い目を開けると目の前に美女が居た。
「えっ!」
(あれ?昨日普通に寝たよな、夢か?夢だな、よし、寝直そう)
「お~い、寝るな~、寝たら死ぬぞ~」
「ここは雪山かっ!」
思わず突っ込んでしまった。
目が覚めた俺は彼女を見ながら体をお越し、頭を左右に振り周りを見た。白い、天井が見えない、壁も見当たらない、床だけが有った。光源は無さそうなのに明るい、床自体もわずかに発光しているようだ。部屋と言うより空間と表現した方がいいかな、何もない。ここが自分の家の寝室じゃないと分かり前の美女に聞いた。
「それで、ここはどこ?」
「おはようございます!」
とんちんかんな返答を元気一杯に答えてきた。
年の頃は25歳前後?髪は金髪ロングめっちゃ美人、白いフワッとした服に白のロングスカート清楚にまとめられてとても良い感じだと思いつつ質問を繰り返した
「で、何処なの?」
すると彼女は一瞬右斜め上を見てから、
「お、おめでとうございます。異世界召喚が当たりました~」
少し疑いながらも、
「そうですか」
俺は内心とは別に冷静に答えた。
(異世界召喚物か)
(男なら誰でも一度は憧れる? 異世界召喚、チートスキルに俺TUEEEE、ケモミミにエルフにハーレムか。)
(おっといかん脱線した。)
座ったままだと、なんなのでとりあえず立ち上がり再確認
「本当に異世界召喚ですか?」
「はい!本当に異世界召喚です。私はこの世界の新人女神をやらせて頂いて居ります、アイシャと申します。よろしくお願いいたします!」
女神アイシャは元気一杯だった。
(夢にしろなんにしろこんな展開は嫌いじゃない、とりあえず聞いてみるか。)
「で、アイシャさん、俺を異世界に呼んだ理由は何ですか?それと異世界召喚でお約束のチートスキルとか貰えるの?」
(これは聞いておかないと難易度が変わるからな)
「も、もちろん有りますよ!ちゃんと異世界召喚には理由が、でもトップシークレットなので秘密です。しかしスキルのほうは特に規定は無いので!」
俺は、さっきの言葉を思いだし、
「ん?ちょっと待って、さっき新人女神って言ったよね」
「えっ!そ、そんな事言いましたっけ?」
と、言いながらアイシャの目は右斜め上を見ていた。まさに怪しさ大爆発だ。
「あの~、一応これでも40歳なのでそれなりの人世経験はありますから、これほど怪しい態度だとなにか隠してるって分かりますよ。」
少し呆れ気味に聞いてみた。
「ごめんなさい!」
突然深々と頭を下げ彼女は謝り始めた。
「ごめんなさい、本当は隠しておくつもりだったんですが、私って正直者だから、ちゃんと言います」
(うわ~自分で正直者って言っちゃったよ)
「えっとですね、召喚する人間違っちゃった。テヘペロ!」
女神アイシャは自分の頭に拳をコツンと当て、舌をペロッと出しウインクをしていた。
(テヘペロって、あ~、この女神、残念美人だ)
「本当はもっと若い人を召喚するつもりでした。ごめんなさい」
「ま~いいや。戻してって言っても無理なんでしょ」
「ごめんなさい」
彼女は申し訳なさそうにこちらを見ていた。
(これ以上は可哀想だな。)
「日本に残してきた妻と子供たちは心残りだが…」
間髪入れず満面の笑みで彼女は答えてきた。
「あ~、それなら大丈夫です!みんな一緒に召喚していますから!」
さっきのしおらしさは何処えやら元気一杯に答えた。
「えっ!」
俺は思わず大声を出してしまった。
すると、俺の背後から聞きなれた声が聞こえ、振り向いた。
「う~ん、うるさい、ヒロヒロなに騒いでんの? もうちょっと寝るんだから、電気を消して、眩しい、もぉ!」
(あ~まだ寝ぼけてるな、寝起きは微妙なんだよな。)
その隣で逸樹と勇気も寝てる。みんな、寝間着代わりのジャージ姿だった、もちろん自分も。
その様子を悲しそうな顔でアイシャが見ていた。
(俺は何にも悲しく無いからな。結婚したてはこんなんじゃなかったんだけどな。)
「おい、美恵、ちょっと起きろ。」
そして妻の美恵をゆさぶり起こしはじめた。
「なに、ヒロヒロ、うぉっ!なんじゃここ、何処?」
目を覚ました美恵は周りを見渡し逸樹と勇気を確認し少しほっとした顔で聞いてきた。
「ここ何処? ヒロヒロ、めっちゃ綺麗な人だよ、スタイルも良いよ、モデルさん?あの人誰?」
(そりゃそうだ、とりあえず説明するか)
「えっと、異世界召喚だって、それでこちらが新人女神のアイシャさんで、いまいろいろ説明中」
と、俺が淡々と言うと、アイシャが、
「はじめまして新人女神のアイシャです。よろしくお願いします!」
なにが嬉しかったのか、美恵は笑顔で答えた。
「弘隆の妻の美恵です。こちらこそよろしくお願いしますね。」
(ああ、そう思えば俺、名前言ってなかったな。)
「そうだアイシャさん、今さらで悪いけど、自己紹介な。俺は佐々木弘隆、そして妻の美恵、あっちで寝てるデカイ方が逸樹で、小さい方が勇気 二人とも俺の息子です」
「知ってますよ、召喚したんだから。」
にこやかにアイシャは答えた。
「間違って召喚したって言ったから、てっきり知らないのかと思いましたよ。」
と、言うと美恵が話に入ってきた。
「ヒロヒロ、間違って召喚したって、ホント? 」
「ああ、ホントだよ、新人女神だからね、仕方ないよ」
と、俺が言うと美恵が、
「間違ったですって、そんな事で済まされると思ってるの!って怒っても仕方ないよね、まぁ家族全員居るし、なんとかなるでしょ」
と、冷静に言っているけど、顔がニヤけている。俺には分かる。美恵がかなり異世界生活を楽しみにしているのを。
「美恵、送り返してもらうのは無理なんだって。」
「まぁ、そりゃそうでしょうね。戻せるならとっくに戻してるでしょ、これから大変だ!まず、生き残ることだね、戦えヒロヒロ。私のハッピーライフはヒロヒロに掛かっている。応援してるね!」
にこやかに美恵が言った。
と、いろいろ話しているうちに息子達も起き出した。