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第5話 アイテムをゲット

 その男とは昨日の宴会中に酷く酔っ払って俺にからんできた爺さんのことだ。その爺さんの話からすると昔の若い頃はそれなりの冒険者だったらしい。


 なんと今現在、爺さんは道具屋を経営しているらしい。名のある冒険者がこんな人口1000人くらいの田舎町で道具屋をやっているのもおかしいと思ったがそんなとはどうでもよかった。

 その爺さんはこう言ったんだ。


「わしの店にある道具をエノムくんが使ってくれるなら店の宣伝になるんじゃがなぁ。どうじゃ、一度見に来てくれんかね? 良さそうな物があれば使ってみてくれんかの? もちろんお代はいらないよ」


 昨日はもちろん断ったけどさ。でもよく考えたら、お金のない俺にはこの方法でしか道具を揃えるすべはない。こんなチャンスはないってもんだよ。


 実際お金ってどうやって稼ぐんだ? モンスターを倒せばお金を落とすのかな? いや、そんなことある分けないよ。じゃあどうやってモンスターがお金持ってたんだって話しになる。


「やめよ。こんなこと考えても始まんないしな。やっぱり仕事してお金を稼ぐしかないんだ」


 と言ってる間に昨日のアルバム爺さんの道具屋に着いた。いかにも道具屋といった感じの古い尖がり屋根のレンガ造りの建物だった。看板などは無かったが尖がり屋根が目印と言われていた。ここしか尖がり屋根の建物は無いようだし間違いない。


「おはようございます。エノムです。今日は道具を見せてもらいに来たんですが」


 そう言ってノックをするとガチャリとドアが開き、サンタクロースみたいな爺さんが出てきた。


「あ、どうも。ずうずうしく道具を見せてもらいに来ました」

「おうおう、よく来てくれたねエノムくん。さあさ、入ってくれ。あまり綺麗とは言えんがね」


 俺はアルバム爺さんの家兼道具屋に入って道具を見せてもらった。武器や防具まであるしかなり品揃えはいいんじゃないかなと思う。それに家の中と違って商品が丁寧に管理されてるのは俺でもわかった。


 えーと、目ぼしい物はと……


 初心者の剣 初心者の短剣 初心者の槍 初心者の斧 初心者の杖 初心者の鞭 初心者の弓

 初心者の防具一式(兜・鎧・盾) ボロマント 初心者の冒険入門書                

 初心者道具セット (ポーション・ランタン・ナイフ・ロープ・火付石)


「うわ、初心者尽くしの大盤振る舞いだ。しかも武器ってこんな種類あるのか。……ん? この冒険入門書ってなんですか?」


「それはある著名な冒険家が冒険の心得を書いた物じゃよ。ダンジョンでの生きて生還するための秘訣や宝箱を見つけた時の対処法など様々書かれているんじゃよ」


 なるほどねぇ、やっぱり知識は大事だよな。欲しいなこの本。お金の稼ぎ方すらしらない俺にはまさに必要その物だ。ん?


「あれ、このマントみたいのは?」

「ああ、それか。なんじゃったかの。思い出せんが何時の間にかあったんじゃ。ボロいマントじゃが捨てるよりはいいと思ってのう。」


 そうなのか、でもなんかこれも気になるなぁ。何か他の物と違うオーラがあるような……そうだ! 【分析(アナライズ)】やってみるよう。あのボロマントを『アナライズ』だ!


【エルフのマント】:Aランク

[説明]古の時代に栄えたエルフが精霊の力を使って創ったといわれるマント。魔法的加護:陰影。フードを被り全身をそのマントで覆うと陰影のスキルが発動し見つかり難くなる。


「おおっ!!!」

「どうわあぁあぁぁ!!」


 うわっ!? 俺もびっくりしたけどアルバム爺さんもいきなり大声で叫ぶ。なになに、何事なの!? それよりこのマントやばくない? とっても貴重なんでしょ? なんだよボロマントって! 

 これはちょっと『心の声』も聴かせてもったほういいな。ごめんアルバム爺さん、【心眼】発動だ。


「え、どうしたんですか!? いきなり大声上げないでくださいよ」

「すまんかった、お主の眼がいきなり金色に光るからのう」

(話しには聞いとったがあれでは悪魔の目じゃわい。年寄りには堪えるのう、心臓に悪いわい)(心の声)


「す、すいませんでした。驚かせるつもりは無かったんですが……」


 しかし、どうする? アルバム爺さんはこのマントをただのボロマントだと思ってるぞ。これは俺にとってすごく必要な物じゃないのか? 

しかもこんな何もしてない内からレアアイテムを手に入れるチャンスがくるとは。石橋を叩いて尚渡らない俺にとってはピッタリな物だ……どうする? 


 いやいや、どうするってなんだよ俺。この貴重なマントのことを黙っててこのボロマントをほしいって言うのか? そうすればアルバム爺さんは何も知らないまま俺にくれるだろうけど。


く、う、腕が俺の右手がいうことをきかない……。


「どうしたんじゃエノムくん? 左手で右手を押さえつけて。そのボロマントがほしいのかね」

(こんなボロマントを欲しいのじゃろうか? ワシはいらんから別に差し上げてもいいのじゃがのぅ)(心の声)

 


「……」

 やっぱり駄目だ、俺には黙ってることはできない。そう、たとえどんなに弱い最弱モンスターに襲われて泣きべそかいて逃げ出したっていい。

 リーザとマイアのお風呂を覗こうとして見つかり逃げ出した『魔眼野郎の最低チカン生活』が幕を開けたっていい。 いやいや、ごめんウソです。覗き痴漢ダメ!!絶対!!


 とにかくこれはダメだ。ここで黙っているような奴はこれから何があっても絶対乗り越えられるないぞ。


「なんじゃ、エノムくん。その試着したマントが欲しいなら差し上げますぞ」

(急にマントを羽織るとは。あのボロマントよっぽど欲しいいんじゃろな)(心の声)


「!!?」

 あ、やばい。あまりの欲しさに勝手に着てたよ。でもな、仕方ない。これは諦めよう。


「いや、すいません。アルバムさん。これは実はとても貴重なマントなんですよ。こんなボロいけどかなりのレア物なんです。これはもっと大きい都市で鑑定してもらったほうがいいですよ。きっとびっくりするぐらいの値段で引き取って貰えます。俺が保障しますよ」


 あーあ。言ってしまった。残念無念だがよかった。ここで黙ってる奴に何かを成し遂げれる分けがない。

 俺がそういうとゆっくりアルバムさんは口を開いた。


「のう、エノムくん。わしの名前はアルバスじゃよ」

「え? …………ごめんなさいアルバスさん」


 何となく全てに落ち込んだ俺はアルバスさんに謝った。



 ◇◇◆◆


 そうか、アルバムじゃなくてアルバスだったんだね名前。いや、でもちょっと待ってほしい。聞いてくれよアルバスさん。昨日ね、アルバスさん俺に言ったよね?


「おぉ~、君がぁエノムくんかあ。ワしは、アルばむぅというもんじゃがぁの~」


 って! 俺に言ったよ。酔っぱらって呂律回ってなかったからよく分かんなかった。



「そのマントのことなんじゃが、本当に貴重な品なのかのう?」


 アルバスさんは俺の着ているマントをじっと見ながら聞いてきた。ああ、このマント俺にしっくりくるなあ。


「そのマントじゃが、ワシには必要のないものじゃ。それは君に差し上げよう、そのまま着ていきなさい」


 ええ? マジ? くれんの? って、そうはいかないよ。


「いやいや、ホントに貴重な物で売ればとんでもない値が付くんですよ? ホントなんです!」

「それなら君が売ればいいじゃろう? それは君にあげよう。ワシは最初から君がほしい物は持って行っていいと言っていたからのう」

「でもそういう分けには……」


「ほぉっほぉっほ。その他にも好きな物はなんでも持っていっていいからの」

(年寄りの好意は素直に受け取るべきじゃぞエノムくん)(心の声)


「え? 今なんて……」


 って俺バカか。聞いてどうするんだ。心の中でなんて言ってたかを聞き返したら俺は変なやつじゃん。

 よし、ここは何も考えずに素直に受け取ろう。


「あ、ありがとうございます。では遠慮なく使わせて頂きます。もちろん俺は売ったりなんてしないですから」

「ほっほっほ、わかっとるよ。それじゃあ、他にいる物はあるかの?」


「そ、そうですね。実はこの冒険入門書と道具セットが欲しいです」

「ふむ。いいぞ、持っていきなさい。このバックもあげよう。あとは武器なんかはどうするかね?」

「あ、ありがとうございます。このバックは助かります。えっと武器はどうしようかな」


 そういうとアルバスさんは冒険入門書と道具セットを入れたショルダーバックを俺にくれた。


 武器といっても俺にはどれも使えそうもないけどな。実際持ってみると重い、とにかく重い。簡単に振り回せるような腕力は俺にはない。うーん、どうしようか。


「じゃ、じゃあこの短剣を貰っていきます。俺には重い武器は振れそうもないですし」

俺は刃渡り30センチの短剣を選んだ。これなら俺でも大丈夫そうだな。


「ふむ。いい選択じゃのう。さすがは魔眼術師じゃ」


 にっこり笑っているアルバスさん。昨日はあんなに酔っぱらってたのにこのサンタクロース。こんなにプレゼント貰ってしまったよ。


「本当にこんなに貰ってしまってすいません。アルバスさん」

 俺は貰ったマントを羽織り、道具と本の入ったバックを肩から下げ、短剣を腰にくくりつけた。


「似合っておるぞ、エノムくん」

「もし、何かを俺が成し遂げることができたら最初にアルバスさんにお礼を言いに来ます。そして今日もらった物の何倍もお返ししますから」

「それは楽しみにしておるぞ。まあ、君は既に88匹もの伝説の獣を倒したようじゃがな」

「ははは。もっと頑張ります。それじゃ、本当にありがとうございました」


 俺は深く頭を下げアルバスさんの道具屋を後にした。まさかこんなにいい物が手に入るなんて思ってもいなかったな。そして俺は今、本当に魔眼術師のような格好をしている。ちょっと久しぶりに自分のステータスでもみてみるかな。言わなくても見れるけど気分の問題だから俺は言う。


「ステータスオープン」


名前 : エノム

LV : 1

種族 : 人間

職業 : 魔眼術師(自称)

固有 : デビルアナライズ 

【心眼】【分析】【ラーニング】

スキル:

【   】【   】【   】

【   】【   】



「おお、それっぽくなってる。しかも『自称』が付いてるぞ、ってバカにしてんのか!」


 くっそー、なんだよ自称って。もう格好は十分本物だろ。


「と、それよりまずはこれからどうするかだな」

「おい、エノム」


「うおわっ!」


「な、なんだよマルス! いきなり後ろから声かけるなよ。びっくりするじゃないか」


 いきなり後ろからマルスが突然声をかけてきた。何か俺に用があるのかな。


「エノムが急にどっかに行くから探してたんだよ。何だよその格好は?どうしたんだよ?」

「いや、俺もそろそろ冒険の準備をしようと思ってさ。今アルバスさんの道具屋に行ってたんだ」

「ふーん。冒険ってどっか行くのか? あっ、もしかしてマイアが言っているモンスターのことだな? 倒しに行く気になったのか? マイアの気を引くつもりだな!?」


 おいおい、最後に君の本音が言葉に出ているぞ? 【心眼】で心の声を聴くまでもなくそれが本音だろ。


「いや、まだ体が本調子じゃないからさ。どこかで軽く体を動かせるとこないかな?」

「じゃあ、うってつけのいい所があるぜ。俺も行くから待っててくれ、準備してくる」

「え? マルスも行くの? って、おーい」


 マルスはそう言うと走って家に帰ってしまった。なんだあいつ。

 よっぽどマイアの件が気になるんだろうな。俺はすぐ傍の古い大木に腰掛け、アルバスさんに貰った冒険入門書をパラパラとめくりながらマルスを待った。すごい、色んな項目があるぞ。


 しかも、見たことない文字なのに読めるし! きっと女神様だな。何から何までホントありがとう女神様。読めるってことは書けるな。頭の中で文字を思い浮かべてみる。


「よし! やっぱりだ。うっひょーい。これで勉強しなくて済んだぜー」

俺はその事実に浮かれながらマルスを待った。



「…………来ない」

 しかし、いつまで待ってもマルスは来なかった。何やってんだ、仕方ないから向かえに行くか。俺は本をバックにしまい立ち上がる。


「まったく仕方ないやつだよなあ」



1月3日読みやすくなればと改行等してみました。内容はほぼ変えていません。

お読み下さりありがとうございます。評価・感想・ブックマークよろしくお願いします。

感想はどんなことでもお待ちしております。すごく励みになります。


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