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第46話 次なるステップ

 

「こちらは「金角牛のロイヤルステーキ」になります。厳選された最高の金角牛をカリブ岩塩とオギト産の黒胡椒でお楽しみ下さい」


 目の前には焼かれたばかりの熱々のステーキ、そして岩塩と黒胡椒の小皿が二つ並べられている。この二つで金角牛の本来の味を楽んでということらしい。


「おっ、このステーキめっちゃ柔らかいぞ」


 分厚いわりにスッとナイフが走る。肉の焼いた匂いがこれまた食欲を刺激する。これだけでもヨダレがでるよ。


「う、うまーい! エノム、頬っぺたが落ちる~!」

「ホント、とっても上品な味ですね。こんなに厚いお肉なのにとっても柔らかいです」

「おっ、うっめー! この岩塩と黒胡椒も抜群に合うね。金角牛か、ヤバイ、こりゃーマジで頬っぺた落ちるな」


 俺達は金のグリフィン亭という最高ランクのレストランで最高ランクのフルコースを食べている。もちろん、値段も最高ランクの値段だろう。


 おっ、なんでも最高じゃん。

 いや、値段が最高なのは嬉しくないけど。


 ステーキと一緒に添えられた真っ赤なニンジンも程好い甘味がありとても美味かった。


「最後のデザートも楽しみですね」

「うん!でも最後なのは残念だね」


「では、雲のジェラートとレモンウォーターです」


 運ばれてきたのはふわぶわのワタアメのようなアイスとレモンウォーターだった。


「わっわ、これ、食べたらなくなっちゃうよ、エノムー」


 クロロがジェラートを一口食べると慌てて俺に説明する。


「いや、食べたらなくなるの当たり前だから、クロロ」

「あら、ホントだわ。ふんわりと冷たくて、ふわっと消えてしまうような不思議な食感ですよ」

「――お、ホントだ。不思議だなー。このレモンウォーターも最後にスッキリと飲めるから後味もいいね」


 最初は慣れなかった場の雰囲気にも次第に慣れて、最後には料理の食レポみたいなことをやりながら楽しくフルコースを食べた。


「じゃあ、行こうか。あとはこのギルドプレートでお金を払えばいいんだよな。これの方がよっぽど緊張するよ」

「大丈夫です。やり方はギルドプレートにマナを込めたら、相手のプレートにお金を渡すイメージです。エノムさんならもう簡単にできますよ」


 俺はさっきのウェイターにお礼を言って支払いを済ませる。

 キャロットが教えてくれた通りにやったら意外に簡単にできてしまった。

 ちなみに三人で食べたフルコースの値段は320000Gだった。

 まあ、確かに高いけどいい経験になったな。それにどれも格別に美味かった。


 去り際には若いウェイターと細身のお姉さんも見送ってくれた。

 若いの凄いねと、ウェイターが俺を誉めてくれた。ここで食事をするのはやはり貴族か、たまに名のあるギルドの冒険者が来るとのことだった。


 一般人には中々に無理な金額なんだろう。よく考えると一ヶ月間も旅人の宿り木に宿泊できる金額だし。


「ご馳走さまでした。ありがとうございます」

「ありがとう、エノム~。また来ようね!」


「流石に何度も来れる店じゃないかな。さて、じゃあ、これから魔法学院にいっでみようかな」


 よし、腹も一杯だし早速行ってみようか。駄目で元々だし、行かないで諦めていられない。


「エノムー、キャロットの話聞いてた? そこって難しいんでしょ」

「ああ。でもやるだけやってから諦めるよ。半年でできるだけ自分の可能性を高めたいんだ」


「半年? 今更ですけどエノムさんは剣士なのですよね。騎士団員で魔法を会得している方もいますが、詠唱が必要な魔法は戦闘では致命的なタイムロスになりますよ? 剣士として生きるなら魔法は必要ないというのは定説です。魔法はパーティーメンバーにまかせる、いわゆる役割分担です」


「たしかにそうだね。でも俺はパーティーで組むというよりは一人でやるタイプだし。一人でやるなら戦いの幅も広がると思うんだよね。それに騎士団でも魔法を使える騎士もいるんでしょ?」


「えーと、そうですね。いるにはいるんですが……、その方は特別な方なので」


 キャロットはなぜか言葉を濁す。特別な方って?


「誰なの? その言い方だと凄い騎士なんでしょ?」

「はい――シルヴィア騎士団長です」


「! シルヴィア団長だって?」

 た、たしかにそうだ。彼女をアナライズした時、確かに精霊魔法のスキルがあった! でも……精霊魔法?


「はい。シルヴィア団長は騎士としてだけではなく、精霊魔法の使い手でもあります。そして、精霊魔法は特別なんです。精霊さえ呼び出してしまえば詠唱は必要なく、精霊の加護を受けながら戦えます。だから、剣と魔法を両立できる希有な例と言えるんでしょうけど……」

「――精霊魔法が魔法とは違うのはなんとなくわかったよ。精霊魔法が特別って、それは魔法学院で習うような魔法じゃないってことなんだろ?」


 シルヴィア団長はハーフエルフなんだよな。きっとエルフ族だけが使える固有スキルなんだろう。じゃあ、シルヴィア団長がハーフエルフってことは皆知ってるんだな。


「はい。シルヴィア団長が精霊魔法を使えるのは、シルヴィア団長がエルフ族の血を引いているからなんです。私たち人族に精霊魔法は使えません。だから剣士として精霊魔法が使えるシルヴィア団長は特別なんです」


「そうなのか。うーん、やっぱり剣も魔法もってのは都合良すぎかなぁ」

「――シルヴィア団長は魔法学院で教師も兼任なされてますから相談してみてはどうですか?」

「えっ、教師もしてるの?」

「はい。魔法学院でも手に負えない……いえ、最強と呼ばれる生徒達が集められた特殊クラスを担当しておられます」

「な……マジで? ……これは絶好のチャンス到来したかも」

「え?」


 キャロットの言葉とは裏腹に、俺にはここを逃したら次はないと思えるような最高のチャンスがやって来たと思えたんだ。



最後までお読み下さりありがとうございます。

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