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第45話 金のグリフィン亭

 

「あのう、私までよろしかったんですか? それにここって有名な高級レストランですけど……」


「大丈夫大丈夫、マナの使い方を教えて貰ったお礼だよ。このギルドプレートにお金もちゃんと入金されてたし」

「そうだよ! エノムはお金いっぱいあるんだよ! 美味しいのお腹いっぱい食べようよ」


 俺は今、「金のグリフィン亭」という超がつく高級レストランにクロロとキャロットを連れて三人で来ている。

 五つ星と言われているだけあって敷居が高く、かなり場違いな感じがするがこの際気にしない。


 建物自体も王宮のような豪華絢爛な雰囲気が凄まじい。実際に俺が見てきた王城よりもきらびやかな印象だ。


「シェフのお任せで頼んだけどどんな料理がくるんだろうな」

「ありがとうございます~エノムさま~」


 クロロが両手と額をテーブルに擦り付けながらお辞儀をする。やめて、冗談でも恥ずかしいから。


 もうお昼を過ぎているからかお客さんは疎らだった。だけど、お客層っていうのか、いるのは貴族のような身なりのいい人にばかりだった。


「……ところでさ、聞きたいことがあるんだけど、魔法学院って俺でも入れるのかな? 戦いとかでも役に立つんじゃないかと思って魔法を覚えたいんだ」


 俺は目の前に座っているショートカットで顔立ちの整った美しい少女に質問する。落ち着いた立ち振舞いからかも、しっかりした印象を受ける。

 たしか15歳だったよな、大したもんだ。ランスロットにこんな可愛いくてしっかり者の妹がいたなんて悔しいぜ。


 少女は少し考えてから俺の目を見て話し始めた。


「魔法学院で学ぶのは正直、かなり難しいと思います」

「どういうこと?」

「剣術などのスキルは訓練や努力次第で身に付けることができますが、魔法は感覚(センス)がほぼ全てと言われているんです。実際、魔法学院に通う方は幼少期より特別な教育を受けた方が多いって聞いたことがあります。それに魔法学院は入学試験があって、それもかなりの難関らしいんです。だから入学する時点で粗方の基礎や魔法を会得していないと試験に合格することができないんです」

「……そうなの、試験があるなら確実に無理だよなぁ」


 うわー、そりゃそうだ。考えてみたら当然だよな。

 軽くショックを受けたところにさっき対応してくれた若い男のウエイターと細身の綺麗なお姉さんが料理を運んで来た。


「お待たせしました。前菜「妖精の雫と七色サラダ」です。このサラダにこのソースをかけてからお召し上がり下さい」


 二人は手際よく料理を並べてお辞儀をした。洗練された見ていて心地のいい手際の良さだ。


「おー、スゲー美味そうだ。じゃ、食べようか」

「彩りが綺麗ですね。妖精の雫ってたしか……」

「はい、この妖精の雫は天然のマーブルフェアリー蜂の蜂蜜と厳選されたレインボーフルーツを使って作った最高のソースになっています」


 去り際に若いウエイターが説明してくれた。へー、なんだかトロっとした透明のドレッシングだな。確かにかける時に綺麗な雫に見える。


「ウマイー。もっと食べたい!」

「おい、クロロ、速すぎだろ。もう食べ終わってるじゃんっ。つーか、美味いな」

「美味しい。妖精の雫って市販もされてるけど中々手に入らない幻のようなソースだって聞いたことがありますよ」

「幻か、納得な美味さだな。この七種類の葉っぱもどれも違う食感と味だけどこのソースは全部に合うね」


 それから次に運ばれてきた「虹色トリュフと皇帝カボチャのスープ」がこれまた美味かった。

 この虹色トリュフはトリュフの中でも最高級らしく、薄くスライスされた切り口は虹色に輝いていた。

 このカボチャのスープも味に深みがって目茶苦茶甘い。そこにこの虹色トリュフが絶妙のアクセントになっていてどちらの味も引き立っていた。


「こちらは「イワカジカの香草焼き」になります。清流にのみ生息する山魚と呼ばれるイワカジカをハーブなどの香草に包みゆっくりと焼き上げました」

「今度は魚料理か。へー、香草焼きだからハーブの香りもいいね」


 イワカジカは白身の魚でふんわりとした食感だった。なんだか癖が強いけど香草が丁度よくそれを緩和している。

 これは決して悪い意味じゃない。イワカジカは何度でも味わいたくなるようなそんな味だった。


 いやー、フルコースなんて今まで食べたことないけど最高だ。

 異世界の最高級ランチ――俺も出世したぜ。


「……エノムさん、とっても美味しいんですけど……あの…」

「? どうしたの、キャロット?」

「えっ、えっと、このお料理の素材って、その……、とっても高級な物ばかりで………」

「ああ、高いってこと? 大丈夫大丈夫。値段なんて気にしない気にしない。俺もクロロも常識はずれだからキャロットがいてくれて助かるよ。本当にお礼と思って気にしないでよ」

「……そうですか。じゃあ、これ以上は言いません。次のお料理が楽しみですね」

「クロロね、まだまだ食べれるよ。固いの食べたい」

「固い………、多分こないだろ、それ。次は肉料理だと思うな」


 最初は座ってるだけで緊張したけど、とっても美味しい。

 次の料理が楽しみだ。



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