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第39話 勘違いと忠告

評価、ブクマして下さり、まことにありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。

 

 俺達は宿『旅人の宿り木』に戻った。


 夜空には2つの月が頭上で仲良く輝いている。すぐ近くの繁華街もこれからが本番と言わんばかりに明かりを灯していた。


 流石に多くの宿が建ち並ぶだけあって人通りはかなり多い。ここまで来る大通りには日中には無かった屋台があちこちに姿を現していて、多くの人で賑わっていた。


 その中には見るからにカタギではない風貌の者達もいた。まぁ俺も似たようなものだろう。


 だけど皆が楽しそうに酒を飲み交わし、わいわいと盛り上っている。さわさわと感じる夜風に混じって肉を焼く美味そうな匂いがする。雑に置かれた料理もひどく美味そうに見えて羨ましかった。


 俺は酒を飲んだことは無い。未成年だし。

 でもせっかく異世界に来たんだ。実はちょっと飲んでみようかなとか考えている。


 なかにはキセルを吹かし、プカプカと煙を漂わせる老人もいる。うーん、煙草は止めておくかな。体に悪そうた。


 まあ、色々とやることがあるからそれが片付いたら……、今迄にできなかったことを本格的に楽しんでみようか。


 宿に着くとウサギ耳の獣人の女将さんがまだ働いていた。

 何故俺達がお城に行ったのか、何があったのかは聞かれなかったが、クロロがすっかり別人のように綺麗になっていたので女将さんは嬉しそうだった。


 それから食堂に行き、用意されていた食事を食べた。

 夕食はなんと煮魚でこれがまためちゃくちゃ美味かった。味は、うん、俺の知ってる煮魚だ。醤油ベースの甘い味付けに、柔らかいふわふわした食感、まるで高級料亭の味。行ったことないけど。

 魚の見た目は深海魚のようだったが見た目に関係なく美味い。


 それから麦飯のようなご飯がこれまた嬉しかった。久しぶりに米を食べた、米最高。今更ながら米、最高。


 クロロも煮魚と麦飯が気に入ったようで「美味い美味い」と連呼していた。


 腹一杯食べたらクロロがもう寝ると言い出し、俺達は借りた205号室の部屋に行った。部屋の鍵を開け入るとそれなりにいい部屋で驚いた。


 部屋の奥にはベットが2つと、小さめの丸いテーブル。それと椅子か2つあった。それと窓にはカーテンが取り付けられていて、壁に付いているランタンがゆらゆらと周りを灯していた。


「クロロ、俺は風呂に入ってくるから」

「うん、行ってらっしゃい。クロロはもう眠いから……おやすみエノム」


 クロロはなんとお城で湯編みをしたらしい。聞けば余りに汚れた格好とボロい服を着ていたクロロを見て、シャロン姫が湯編みと着替えを準備してくれたそうだ。


 その時に俺、エノムという名の連れと城に来たとだけシャロン姫に説明したそうだ。それはシャロン姫も勘違いもするよ。たしかにゲス野郎でろくでなしだな。


 クロロとシャロン姫の関係についても聞いたけど、以前に獣人族の村で会ったんだって。クロロは覚えてないらしいけど。今度シャロン姫に聞いてみよう。


 俺はベットであっという間に寝てしまったクロロを残し部屋を出て、浴場に向かった。


 当然のごとく、男女別に別れているので男用の浴場に入った。浴場は洗い場こそ広いけど木製の風呂は思ってたよりは小さく入っても5,6人くらいだろう。

 まぁ、誰もいないこともあって伸び伸び入れるからよかったけど。


 この世界にはちゃんと風呂用の石鹸があり頭も体も泡立てながら洗えるから本当によかった。欲を言えばドライヤーが欲しい。


 やっぱり、風呂に入ると気持ちも落ち着くし何より疲れが吹っ飛ぶ。

 浴場から部屋に戻ると俺はクロロを起こさないように椅子に腰掛け、相棒で魔剣のレーヴァを鞘から引き抜いた。因みにちゃんと封魔のグローブはしているよ。このグローブをしないとレーヴァに力を奪われるからね。


 《なんじゃ、ここは宿か? 今度はどうしたエノム》

「悪い、レーヴァ。ちょっと相談事があるんだよ」

 《ほっほう! よしよし。なんじゃ、言うてみろ》

「――なんか嬉しいそうだな」


 相談事という言葉で妙にテンションが高くなったレーヴァにお城であったことを話した。


 実は『フェルリンの首飾り』の呪いからシャロン姫を救うことができるかもしれない。確証はないんだけど理屈から言えば可能性はある……と思う。


 《ふーむ、なるほどの。その封魔のグローブで『フェルリンの首飾り』の呪いを封じ込め、その間に姫様から首飾りを外すか》

「そうなんだ。このグローブはレーヴァ、お前の力をすら抑えられるんだ、大丈夫だろ?」

 《おそらく、可能じゃ。しかしの――》

「な、なんだよ?」

 《呪いとは……一筋縄ではいかんものなんじゃ。それこそ何があるかわからんぞ。仮に、その首飾りを外し呪いが解けたとしての……。その女の魔族が召喚されたらどうする? お前、勝てるのか?》

「えっ? それは……、女の魔族? それって嫉妬に狂って呪いをかけたっていう魔族の女、まさか生きてるの?」


《例え話じゃ。要はその不滅のナンタラにしろ、嫉妬女だの魔族が来たらお前は勝てるのか? 来たらどうするんだの?》

「う、それは……」

《いいか、鼻たれ小僧。ゴブリンロードなんぞの小虫を倒したくらいでもう英雄気取りか?》

「なっ、そんなんじゃないよ! なんだよ、レーヴァ」

《いいか、お前の今日のあの騎士との戦い、あれはなんじゃ? いつから油断できるほど強くなった? まだまだお前は弱いんじゃ。もう一度よく考えてみるんじゃな》


たしかにそうた。何も言い返せない。


「わかった。ありがとうレーヴァ。たしかにその通りだな」

《うむ。せっかくの俺様の使い手じゃ。早々に死なれてもつまらんわい》

「ははっ。一言余計だよ。――そうだ、最後に『金色に輝く英雄』ってわかる?」

《? なんじゃそれは。金色(こんじき)か……。まあ、墨のように真っ黒のお前のことではないじゃろ? なんじゃ、英雄にでもなりたいんか?》

「いや、何でもないよ。よし、俺も寝るからな。おやすみ、レーヴァ」


俺はレーヴァを鞘に戻しテーブルに立て掛けるとベットの中に横たわった。

――確かにちょっと俺は強くなったと勘違いしてたかもな。上には上がいる。一から考えないと。


……金色の英雄、誰のことだろう。


しばらく考え込んだ後、いつの間にか眠りに落ちていた。



最後までお読み下りありがとうございます。

更新しつつ、1話から少しずつ修整をしようかなと考えてます。内容は変えないで、世界の密度をあげたいと思います。もっと、奥行きのある世界に。頑張ります!

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