第38話 動き始めた歯車
いくぞ、呪いの首飾りを『アナライズ』だ!
【フェルリンの首飾り】 AAランク
[説明]遥か昔、ある魔族が人間の娘に贈ったとされる首飾り。その魔族が恋をした娘の名前はルイス。そして魔族の名前がフェルリン。身に付ければ体が若返るが同時に首飾りも小さくなる死の呪いがかけられていた。呪いをかけたのは嫉妬に狂った魔族の女アディア。呪いは真実の愛によってのみ打ち砕かれる。伝説級アイテム。
「!?」
な、伝説級アイテム! ヤバイ、AAランクだ。かなりの呪いがかけらてる首飾りだぞ。
それになんだ、呪いは真実の愛で打ち砕かれる? なんだこれ、かなり胡散臭いんですけど。これならシャロン姫と相愛にならないと呪いは解けないってことだろ。
なら不滅のレイエスって魔族がこの呪いを解くことは不可能じゃないのか? どうなってんだ?
くそ、どっちにしろこれじゃ手も足もでないじゃないか。
……ん、待てよ、手も足も?
「あのエノム様」
「は、はい。すいません、ちょっと……考えごとを」
「……エノム様の瞳が金色に輝いておりますわ」
シャロン姫の美しい瞳が俺の目をじっと見ている。う、これは元の姿に戻ったらどんだけ美人なんだ?
でもやはり俺の光る魔眼にはかなり驚きを隠せないようだ。まあ、こんな奴は他にいるわけないからな……。
「ビックリしますよね。ごめんなさい、そうなんですよ。俺、病気でして。たまにこうなるんです」
「………」
「あの、シャロン姫? どうかしました?」
「な、なんでもありませんわ。ワタシこそまた失礼なことを。では、ワタシはこれで。もう行かないとルージュが只のルージュになってしまいますので」
「姫様、そうですよ! 急ぎましょう」
「それじゃあ、またねクーちゃん。記憶、絶対戻るからね」
「うん、ありがとうシャロン。この洋服もありがとう、またね」
そしてシャロン姫とメイドのルージュさんは王族達が住むという王宮へと行ってしまった。
「行っちゃったね。シャロンはとっても可愛いお姫さまだね」
「うん。……え? 知り合いなんだろクロロ?」
「んー、わかんない」
「は?」
まるで別人のように綺麗? になったクロロが当然のように答える。なんだよ、やっぱり記憶は戻ってないのか。それにしても友達みたいに接してたろ。
「でも色々と聞いたよ。だから後で話すね」
「そ、そうか。よかったなクロロ」
「おい、魔眼術師。貴様も用が済んだなら早く行け。サウン宰相は中々厄介なお方だからな」
「そうするよ。俺も面倒ごとは避けたい。それじゃあ」
ランスロットはなんだかんだいって面倒見のいいヤツだな。
「……おい。待て、やはり確認したい。さっきのは何をやった。貴様は姫様を助けることができそうなのか?」
「流石に鋭いな、守護騎士様は」
「茶化すんじゃない。真面目に答えろ」
「……わからない。でも、うん。可能性はあるかも」
「!! ほ、本当か!」
ランスロットが取り乱し俺に掴みかかる。か、可能性だからね、変に期待されても困るよ!?
「お、おい、ランスロット、馬鹿力で掴むのは止めてくれ。痛いだろ」
「コラー、バケツ仮面! エノムを離せー!」
「あ、ああ、悪かった。……貴様、本当なのか? 可能性とはなんなのだ? 姫様を助けることが出来るんだな!?」
「ごめん、今は何もいえない。ただ、俺もシャロン姫を助けたい。だから……また、来るよ」
「そうか。すまかった。シャロン姫は……、たしかに無鉄砲でおてんばなどと言われている。先程のように後先考えていないこともある。だが、姫様はご自身の為にそのような振る舞いをしたことは一度としてない。全ては誰かの為に、助けるためにそのようなことをなさってきたのだ」
「ああ。王国の民に慕われている姫様だもんな。そうだと思ったよ」
「もし、姫様に危険が迫っていることを知ったら民は不滅のレイエスの討伐に乗り出すだろう」
「わかってるさ、誰にも言わないよ」
「俺に出来ることがあれば何でもやる。この命さえも投げ出そう。我が国の民は皆がそうだろう」
「わかったよ、俺もやれることはやってみるさ」
「ああ、頼むぞ魔眼術師エノム」
そして俺達はお城を後にした。もう辺りはすっかり暗い。早く宿に戻って色々と考えを整理しよう。クロロも疲れたろうからな。
隣では元気に歩く猫耳族の少女。シャロン姫に綺麗な洋服を貰えて嬉しそうだ。クロロの話も気になるな。
でも……、呪いをかけられたシャロン姫か。この国の皆が知らないのはそういうことだったんだな。知ればシャロン姫を助けたいこの国の皆は不滅のレイエスを倒しに行ってしまうだろう。
きっと、そうなれば誰にも止められない。バーティッド王もシャロン姫さえも。皆の気持ちはシャロン姫を救ってやりたい、その想いだけだから。
だけど強大な力を持った魔族に勝てるわけはがない、結果は火を見るより明らかだ。
「ねぇ、エノム」
「なんだい、クロロ?」
「んー、何でもない」
「? 何だよ、気になるじゃないか」
クロロは立ち止まり頭を抱えて今度は何かを考えている。なに? そんな、悩むことクロロにあるの?
「クロロはね、この耳だからスゴイ遠くの音も聞こえるの」
「ん? へー、凄いな。流石に猫耳族だな。でも、どうした?」
「う、うん。さっきね、聞こえたの」
「何が? どうかしたのかクロロ? 何が聞こえたの?」
クロロにしては妙に歯切れが悪いな。いつもは何でもスパスパ言ってくるのに。
「現れたって。『金色に輝く英雄』が……遂に現れたって」
「え?」
その時、俺はそれがどんな意味があるのか、そしてそれが本当に俺を指したことなのか、俺には知るよしもなかったんだ。
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