第4話 湧きあがる決意
自分で言うのもあれだけどすごい能力だよな。色々と【分析】できるようだし。
しかも女の子は秘密の分析付きだ。あの女神様、本当になんでこんなによくしてくれたんだ?俺がモテたい連発したからかな。
あとはどうやったらレベルを上げられるかだな。展開的にモンスターを倒して経験値でレベルアップするっていうのが確立高いけど勘弁してほしい。俺は喧嘩だってしたことないしおそらくマルスにさえ勝てないだろう。
昨日は例のモンスターの話しは村中の人がいたからできなかったからな。今日はしてくるかもな。
だが、俺はこれでこの世界を生きてみせる! 口だけだけど『魔眼術師エノム』として精一杯生きてみせる。
しかし、こいつのイビキは凄まじいな。
うーん、寝れないなあ。どうしようかな、昨日はあまり異世界の村ってのをじっくり見てなかったからな。ちょっと朝の散歩にでもいってみようか。
俺はマルスを起こさないようにコソコソとマルスの部屋を出て行った。見つかると一緒に行くとか言いそうだしな。
「おー、すごい。今日も天気がいいし壮大なコバルトブルーの空だ」
うん、すごい。その一言。それに朝日ってこんなにも美しいんだな。
それに生い茂る草や流々とそびえ立つ木々、果てしなく吸い込まれるような青い空も、聞こえる動物の声、全てが美しくなんと素晴らしいことか。
それにこの村も俺が思ってたよりも文明は発達してるんだよな。レンガ造りの家もあれば、木造の家もある。でもそのどれもが腕のいい職人が造ったとわかる。どの建物も美しく魅力的な形をしている。
それに空気だな! こんなに空気がうまく感じるなんて信じられない。まるで童話の世界に入り込んだような感覚だ。肺の中が空気で洗われるようだよ。
そういえば、昨日勇者がどうとか言っていたけどなんなのかな。勇者がいるんだから魔王もやっぱりいるのか?
伝説とか言ってたからなぁ、よく分んないけど気にはなる。聞けば怪しまれるから聞かなかったけどね。
だって、「え? お前勇者知らないの? どっからきたんだよ、出身どこ?」
とか聞かれたらもうアウト。何も知らないから日本というしかない。
『ビュン! ビュン! ズバン!』
ん? なんだこの音は。空気を切り裂くような音が聞こえるぞ。
おっ、マイアがこんな朝早くから剣の稽古をしてるようだ。さすが戦士だ。どこかの村のイビキ小僧とは違うな。
「……すごい。めっちゃ揺れてるじゃないか」
マイアがどうやら俺に気付き稽古をやめ近寄ってくる。やばい、凝視してたのバレたのか?
だって仕方ないじゃないか! あんな格好してプルンプルンやってれば男なら誰だって凝視だよ!
「エノムじゃないか。おはよう」
「や、やあ、マイア。いい朝だね、こんな早くから流石だね」
「ああ、毎日の日課さ。あのモンスターを倒すために強くならないとね」
「…………」
やばい、そのエピソードを聞くべきか? 凝視はばれなかったけど……。
なんか嫌な予感しかしないぞ。
◇◇◆◆
マイアはキラキラと朝日によって光る汗を滴らせ何かを思っているようだ。こう見ると鍛えられた嫋やかな筋肉が美しくマイアの努力を証明していた。
それにしても流れるような美しい体系だ。胸の大きさと引き締まった腰に目を引き付ける尻の形といったらもう男はイチコロだろう。
朝の爽やかな風に赤い髪をなびかせ、誰もが目をやってしまうその巨乳と踊り子のような衣装のマイアは素晴らしいの一言だ。
「…………」
しかし俺は聞かない。聞くわけにいかない。マイアがどんなに魅力的でも聞かない。聞けば必ず昨日の話しになってしまう。が、違う話題を振るのもいくら俺でもできなかった。
「…………」
どうしよう。するとマイアは何も言わず手に持っている『ソードブレイカ―』とかいう剣を俺の前に掲げ見せてきた。使い込まれているがよく手入れされているのが一目見て分る。
「これ、父さんの形見なんだ。この鎧は母さんの」
え? そうなの? てっきりマイアの趣味だと思ってた。でもお母さんもその鎧着てたんだな。
「父さんはこの辺りでは有名な剣士で母さんは踊り子だった」
あ、やっぱりな。それ戦士の装備じゃないんでしょ。どこも守れないもんな。バカ、真剣にマイアが話してくれてるんだ、真面目に聞けかないといけないだろ俺。
「2人はとても仲が良くて1人娘のあたしをとても可愛がってくれたんだ」
「……」
「それがもう2年前になるかな。隣りのタリナムの街である祭りに母さんが踊り子達の指導を頼まれた。父さんが護衛して一緒に二人で出掛けたんだ」
「……」
「あたしは1人で2人の帰りを待った」
「……」
「でも、2人はいつまでも帰ってこなかった」
「……」
「あたしを捨てて2人で違う町へ行ったんだ」
「!?」
「と、あたしは思ったよ。まだ大人といえる歳でもなかったしね。きっと捨てられたんだって」
ま、まぎらわしいぞ、その言い方!! ダメ絶対! ズッコケるとこだった!
「だけど、すぐに事件がおきたって大騒ぎになったんだ。もちろんそれがあたしの両親のことだなんて思いもしなかた」
「……」
「隣り町で魔物が人を襲ってるって噂がでた。何人もいなくなったって。襲われた人もいたけどなんとか逃げれたんだって。その人は赤ちゃんを連れた母親で、助けてくれた人達がいて逃がしてくれたって……」
「もういいよ。わかった。今の俺が力になれるかわからないけど手伝うよ」
俺はマイアの涙をみて何をマイアが言いたいのか理解できた。つまり両親はその怪物に殺されたんだろう。
だからマイアは戦士になって仇を取ろうと……。
「いいのかい? 体はボロボロなんだろう?」
いやいや、そんなこと一言も言ってない、健全です。でも戦闘能力は間違いなく底辺です。しかしそこまで聞いちゃったら「ああそうですか」とは俺でも言えない。
「でも、もう少し待ってくれないかな? まだ体の調子がよくないんだ」
「そうか、わかったよ。ありがとう、今まで待ったんだエノムの体が良くなるまで待つよ。それにあたし1人ではどうしても勝てない気がして挑めなかったんだ」
そういうとマイアはリーザ達によろしくと言って自分の家に帰って行った。
ああ、どうしようか。あんなこと言ったけど俺が役に立つとは思えなかった。できることといえば敵の【分析】くらいだろうし。
ん!?
そうだ! やるならある程度逃げ回れるようになってからその怪物を【分析】してマイアに弱点を教えればいいんじゃないか? ちょっと情けない気がするがマイアの方が俺よりずっと強いからな。
俺はしばらく村を見てからマルスの家に帰った。すると外からでも分るようないい匂いが漂ってくる。俺はリーザの両親に挨拶をしようと顔をだした。
リーザとお母さんが朝食の準備をしてくれていた。エプロン姿がとても似合っているリーザがパタパタと俺に寄ってくる。
「あ、おはようエノムさん。朝食ができたからお兄ちゃんを起こして来てくれない?」
「おはよう、うんわかった」
俺はイビキを掻いて寝ているマルスを起こし朝食をご馳走になった。焼き立てのパンに焼き立てのベーコンとレタス、それに目玉焼きを挟んだサンドイッチとカボチャのスープだった。
「う、うまい! なんて美味いんだ。昨日も思ったけど俺にはここの食べ物は美味すぎるよ!」
新鮮な食材とフレッシュな野菜その物の味、なんて美味いんだ。朝食で涙が出てくるよ。
「なんだエノム、リーザが作ってくれたんだ。何だって美味いに決まってるだろ??」
寝ぼけ顔のマルスが当然と言わんばかりの顔で俺に訪ねてきた。
「ああ、そうだね」
く、なんだこの敗北感は。こんな美味い物を毎日食べているマルス。そしてその隣には可愛すぎるマルスの妹リーザ。ちきしょう、マルスにすごく負けてるような気がしてきた。
だが今は素直に敗北を認めてやろう。軍配はお前に上がっているぞマルス。
だが、俺は変わる。魔眼術士エノムとして変わってみせる。
戦闘は無理だけど努力はできるからな。
「ごちそうさま。本当に美味すぎて涙がでたよ。それに一晩俺を泊めてくれてありがとう」
俺はマルスやリーザ、両親にお礼をいってある男に会いにマルスの家を後にした。
よし、魔眼術師エノムの行動開始だ。
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