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第37話 俺だからこそ

 

「さあ、シャロン姫。サウン宰相に見つかる前にお部屋にお戻り下さい。姫様が部屋から出たのが見つかれば只では済みません。勿論、ルージュは王宮メイドの職をクビになるでしょうな」

「え、わ、私がクビに!? ひ、姫様、早く早く! 私、クビになっちゃいますよ!」

「わ、わかりましたわ。でも、エノム様がまだお倒れになってますし……ワタシがやってしまったこと、なんとお詫びすればよいか」


 シャロン姫と呼ばれる少女は心配そうに俺を見つめながら俺の肩にそっと手を置いた。

 まあ、その反省してるようだし、俺も大丈夫だからさっきのことは忘れよう。それにいつまでも倒れてるのはカッコ悪い。


 俺はなんとか立ち上がり、シャロン姫にもう大丈夫という仕草で手をあげる。


「お、俺ならもう大丈夫です。その前に1ついいかな、君がシャロン姫なのかい? それに君はクロロのことを知ってるの?」

「そ、それは……」


 少女は答えたくないのか、うつむき黙ってしまう。あれ? さっきまであんなに元気だったのに。


「失礼しますがそれでは質問は2つになりますよ、エノム様。それにそのことはサウン宰相にどんなことがあっても口外してはならないと言われておりますので」


 ルージュと呼ばれたメイドはシャロン姫を庇うように俺の前に割って入る。このメイドさん、中々デカいメロンだ。胸を張った拍子にぷるんと揺れる。おー、メルフィさんを思い出すな。


 メイドは皆がこうなのかな?……って、それどころじゃないな。するとまたランスロットが面倒くさがった口調で口を挟む。


「おい、魔眼術師。貴様はバーティッド王から全てを聞いたのだろう?」

「いや、シャロン姫が『呪い』で姿を変えられたから力を貸してほしいってとこまでだ。詳しくは聞いてないんだよ。用があるからまた今度って」


「そうか。なら話してもいいだろう。だが決して口外するな。国の士気に関わるからな。この方こそラザ・ジュエル王国の王女にして至宝と呼ばれるシャーロット姫だ。そして姫様は『フェルリンの首飾り』によって若返りの呪いをかけられている。その呪いでこのお姿になってしまわれたのだ」


「な、若返りの呪い!?」


 それに『フェルリンの首飾り』だって? 確かにシャロン姫は紫色の宝石がついた美しい首飾りをしている。これがそうなのか?

 とても呪いの首飾りには見えない。


「これを首に架けられたのは半年前になります。その時はなんともなかったのですが……。時間が経つにつれて体が小さくなっていきました。今は12歳くらいの体まで小さくなってしまいましたわ」


 シャロン姫のエメラルドグリーンの瞳が俺を見つめる。きっと泣き出してしまいたいくらいの不安が押し寄せてきてるんだろうな。

 今にも大粒の涙が流れそうだ。


「そ、それは外せないの?」

「はい。あの者が言うには無理に外せば魂を奪われると……。そしてこの首飾りは体が若返る度に小さくなっています」


「!?」


 な、なんてことだ。それで時間が無いわけか。シャロン姫はこの呪いの首飾り、『フェルリンの首飾り』でどんどん体は若返る。けど、それと比例して首飾りも小さくなる。このまま首飾りが小さくなれば……。

 それに外すことも出来ないなんて。なんて酷いことをしやがるんだ。そのカス野郎、更にはシャロン姫が妻になれば助けるって要求してるんだったな、希にみるゲス野郎だ。


「そういうことだ。貴様には何も出来はしない。あの魔族には貴様程度の腕では足下にも及ばんからな」


 あの高慢なランスロットがそこまで言うなんて。


「不滅のレイエスだよね。そんなに強いのか?」

「勝てる可能性があるとしたら【武神】や【剣聖】。そして【勇者】だろう。魔族は桁外れの力を秘めているからな」

「そ、そんな……」


 バーティッド王は不滅のレイエスとの戦いに勝てなかったって言ってた。じゃあ誰が勝てるんだよ。


「ワタシは大丈夫ですわ。これはワタシが招いたことですから。ですからあの魔族に立ち向かうのだけはお止めください」

「……大丈夫って」


「シャロン……」

クロロも心配そうにしている。


「それにクーちゃんにまた会えたのでワタシ、元気が出てきましたわ」

「あ、そうだ、なんでクロロを知ってるの? クロロは記憶が無いんだ。だからクロロのこと、教えて欲しいんだけど」


「待て、もう時間がない。その話はまた今度だ、そろそろ姫様が戻らないと本格的に不味いぞ。サウン宰相がここにくる時間だ」

「えー! 姫様姫様、早く戻りましょうよ!」


 ランスロットがシャロン姫に忠告するとメイドのルージュさんが騒ぎだした。この女性(ひと)って、メイドに向いてるのか?

 まだまだ聞きたいことはあるけど今日は仕方がないか。


「それではエノム様、ワタシは戻ります。先程の失礼はまことに申し訳ありませんでした。そしてクーちゃんのことも誤解してしまいアナタにはなんとお詫びすればよいか」

「いや、気にしないで下さい。シャロン姫、きっと何か……。そうだ、ちょっといいですか?」


 俺はシャロン姫の前に行き、同じ目線になるように膝をつく。

 俺が魔族に勝てるとは思えない。けど、シャロン姫を救ってやりたいと思う。俺に何が出来るのか? 何も出来ないかもしれない、だけど俺にはこのデビルアナライズのスキルがあるんだ。


 俺にしかやれないことだってあるかもしれないだろ?


 いくぞ、先ずは『フェルリンの首飾り』を『アナライズ』だ!



 

最後までお読み下りありがとうございます。


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