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第32話 バーティッド王との謁見

 

「あの、シルヴィア団長、バーティッド王ってどんな方なんですか? 武神って呼ばれるくらいだから熊みたいにデカいんですかね。それにシャロン姫は最近人前に出てないそうだけど」


 俺は階段を上りながら隣りで顔を赤くしているシルヴィア団長に話しかけた。てか、なんでこんなに顔が赤いんだよ。褐色の肌でも一目でわかるくらい赤くなってるよ?


「え? ええ。バーティッド王はまさに生きる伝説と言えます。あそこまでの域に到達している方は世界にも数名しかいないと言われています。そして世界には【武神】【剣聖】【勇者】【獣王】【精霊王】【蛇竜王】【魔王】などの最強の称号を持った方達がいます。現在は欠員の称号もありますけど。バーティッド王はその内の【武神】の称号を与えられているほどですから」

「ええ!? そんなにすごい人達がいるの? しかも【魔王】って明らかに悪い奴じゃないの? それに【獣王】と【蛇竜王】もヤバそうなんですけど」


 おいおい、なんだよ、とんでもない世界設定じゃないかよ、女神様。 こんな世界でどうやってモテるんだ? ……いやいや、世界を救うんだよ。そんなの【剣聖】とか【勇者】の称号を持った人がやってくれよ。


「……そうですね。世界は今、静寂の混沌が訪れています。だからこそ運命が動き出したのでしょう。シャーロット姫も……。さあ、全てはバーティッド王により伝えられるでしょう」


 この扉の向こうが謁見の間か、なんて立派な扉なんだ。さすがは一国の王の間だな。


「さあ、この先です。行きますよ」

「は、はい。遂に王様かあ。緊張するな」


 そして俺達は大きな扉をゆっくりと押す。その扉は大きさの割にはかなり軽く感じた。だけど変だよな、その割には頑丈で鉄のような材質なんだけど……って、それどころじゃないか。


 その先にはまさしく王様が下々に命を下すための謁見の間が広がっていた。雛壇のような場所には玉座が二つ、どちらも誰も座っていない。……え?


「ちょっ、え? 誰もいないんですけど?」

「いいえ、そこに。王様、気配を消すのはお止め下さい。エノムくんに失礼ですよ」

「「!!」」


 え? シルヴィア団長は誰に言ってるの? まさか王様がいるのか? ってか、王様にそんな喋り方していいのかよ。


「あ、やっぱりバレたか。流石だね、シルヴィアちゃんは」

「え? うわっ! バーティッド王!?」


 な、なん……だと。いや、嘘だろ? 玉座の裏に隠れてた? まさか……馬鹿なのか? いや、俺の【気配】のスキルでもわからなかったんだ。 どういうことだ? レベルが違い過ぎるからか? 


 玉座からひょっこりと赤髪のおっさんが顔を出した。そして背丈よりも高い玉座に手を掛けると軽快に飛び越えドカっとそのまま玉座に座る。


 おおっ、さすがは【武神】。それに思ってたよりも普通の見た目だ。いや、燃えるような赤毛はそれだけで勇ましく感じるな。

 そして、その優雅な衣装の上からでもわかるほど筋肉ははち切れそうで隆々としている。やはり歴戦の猛者なんだろう。ここからでも無数の太刀傷があるのがわかる。


「やあ、君が勇者エノムくんか。初めましてだな。俺がバーティッド・ルディ・キスタック13世だ。君が来るのを待ってたよ。びっくりさせようと隠れてたんだけどさ」


 なんか俺のイメージと違う。思ってたよりずっと若いなこの王様。それに俺、勇者じゃないし。なんで俺なんかを待ってんの? 


「あの、初めまして王様。最初に謝りますが俺は礼儀作法とかわからないんで無礼があればすいません。あと、俺は勇者じゃなくて魔眼術師です」


「はっはっは、いいね! やはり若者はそうでなくてはならんな。謙虚さを持ち合わせない者は英雄になれん、それが世の常だよ」


 なにが? 意味がわかんないよ。それに俺は勇者なんて目指してないし。


「えっと……、いきなり質問なんですけど。俺ってなんで呼ばれたんですか? どうしてもそれが気になるんですが」

「そうだな、すまんすまん。君の報告は受けているよ。ゴブリンロードを一撃で倒したそうだね。それにオロビアのダンジョンも攻略したそうじゃないか?」

「!? なんでそれを!? 俺はダンジョンのことは誰にも言ってないんですが……」

「ん? ギルドでオークの牙を換金したのだろう? それにあのダンジョンは一度ダンジョン鑑定士が鑑定しているからね、攻略すればわかるんだよ。誰がやったのかもね」


「……なるほど、すごいんですね」

「何故黙っていたんだ? 普通なら自分の功績は皆に知ってもらいたいだろう? 君はゴブリンロードのこともタリナムの民には黙っていたね? 君が倒したと知っているのは極一部の者だけだ」

「えっと……え──」


 困ったな、そうきたか。黙っていた理由は実は簡単なことなんだ。

 それは騒がれるのが嫌だから。俺はこの世界に来たばかりで何もかもがわからないことだらけだ。


「……えーと。なんというか」


 つまり、あいつは誰なんだとかなると困る。不法入国者どころか不法世界者だからね。

 俺は別に英雄とか勇者とかは目指してるわけじゃない。有名にもなりたくない。

 それにゴブリンロードを倒したのはマジで俺だけの力じゃないしな……。


「まあ、言いたくないならそれでもいいさ。シルヴィアちゃん、エノムくんの力はどのくらいだったんだ?」

「そこで私に振りますか? それに王はお人が悪い。ご自分でも見ていたのでしょう? 扉の隙間からこっそりと。わかっていますから」

「おっと! シルヴィアちゃんは流石だね、ばれてたか! まあ、ランスロットのことだからああなるとは思ってたからさ」

「はい? 俺って試されてた?」


 なんだなんだ? 俺はバーティッド王に力試しみたいなことされてたのか? ちょっと待ってよ、俺もランスロットもそのために戦ったのか。


「いや、これも悪かったね。実はランスロットのことだからああなるとは思っていたんだ。でもあの場合はエノムくんも悪いと思うがね。普通()は子供でも王に謁見する時は武器を持ってはいけないと知っているからね」

「う……、すいません。確かにそれを言われると……」

「エノムくんのその装備している剣は神話級武器(アーティファクト)だね? それにその防具もおそらくそうだ。俺も今まで色んな武器や防具を見てきたけどそこまで凄いのはそうそうなかったな」

「アーティファクト? まあ、はい、すごいとは思います。俺には釣り合わない装備だと思ってますよ」

「ん? いやいや、誤解だよ。素晴らしい装備をしているからついね。それも実力の内さ。それに君の手合いを見させてもらったが後半からの立ち合いは見事だったよ」

「え、ありがとうございます」


 バーティッド王の目は俺の全てを見透かしているように感じる。少年のようにキラキラと好奇心に溢れる目をしたかと思うと、今度は逆に冷静な分析をしているような、俺を見定めているような感じがする目だ。


「まあ、ハッキリと言うが君に来てもらったのは力を貸してほしいからさ」

「……え? 俺にですか? 俺には何もありませんよ?」

「いや、君にというか力のある者たちと言った方がいいかな」

「??」


 バーティッド王は王座から立ち上がり、ツカツカと俺の方に歩いてきた。おお、近くで見るとデカいしやはりすごい筋肉だな。

 そして、バーティッド王はさっきとは打って変わって真面目な表情だ。


「半年前になる……。ことの始まり、あの魔族、『不滅のレイエス』と名乗ったあの魔族について話そう」


おお、ヤバイ。危険な単語が出ましたぞ!?



最後までお読み下りありがとうございます!



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