第29話 王城、謁見の間へ
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「うわぁ、間近で見るとすごいな。どんだけ大きいんだよ」
俺は王都の中央に位置する場所に来ている。そしてそこには白を基調としたこれぞ王城って言わんばかりの城がそびえ立っていた。その城は細かい部分まで繊細な装飾が施されていて、見ている者を幻想的な気分に浸らせてくれる。それにこんな立派な建物は見たことがない。まるで絵画を見てるようだ。
いや、この世界の人達にしてみればこの景色は普通なのかもしれないな。俺だけがこの場所で天高くそびえ立っているお城を見上げているから。
おお、あの中央のステンドグラス、すごい美しい。
どうやって造ったんだろう? なんだか神々しさまで感じるよ。
「すっごいねぇ。クロロもこれは登れないや」
「ば、ばか! これもね! これもだからね! いや、すごい! 素晴らしいお城だよ」
俺の他にお城を見上げてひっくり返りそうなのがもう一人いた!
本当に気を付けてくれよ、クロロ! クッソ真面目のクレスに城壁登ったのバレたら牢獄に連行されちゃうぞ。
「? この王城はリオレス大陸一の大きさなんですよ。城の中には騎士団の本部や聖堂などもあります。それに城の上階から行ける別棟には王族が暮らしています。そしてこれから行ってもらうのは謁見の間と言われている場所です。そこでバーディッド王がエノム殿をお待ちのはずですよ」
「うん、わかった。緊張するけど行くしかないか」
この大陸はリオレス大陸って名前なんだな。勉強になったよ、クレス。
俺も一度ゆっくりこの世界について勉強しといたほうがいいよな。なんせ常識がさっぱりだからな。
女神アルティシアのお陰で俺は言葉も分るし文字も読める。
だけど流石にこの世界のルールや一般常識なんかは全然わからない。そのうちボロが出ると困る。
今の内に対策を練っとかないといけないな。いや、これから王様に会うんだからもう遅いか?
「さあ、あの大階段で2階に上れば謁見の間ですよ。僕達は2階上がることは今は禁止されているのでいけませんから、エノム殿とクロロ殿で行って下さい」
「え? クレスも来てくれるんじゃないの? 俺、大丈夫かな……。王様に無礼なことして投獄とかないよな?」
「本来ならこの時間は2階に行くことはできません。今回は王の直々の命令、王命のために特別に許可されてます。僕らはいけませんが、バーティッド王は寛大な方なので何もなければ安全ですよ」
「……安全って何? 明らかにオカシイでしょ、その言い方」
「気を付けろよ、エノム。武神の名は伊達じゃないぜ? なんせあの王様は王国最強だからな。あのシルヴィア団長もバーティッド王の弟子だしな」
隣りのドミニクも忠告してくれる。
「マジで!? そんな強い人なのに王様なのか。怒らせないようにしないとな」
城の門をくぐり、城壁に囲まれた城の中に入る。城の中は、豪華な装飾や大理石でできているアンティーク調の彫刻など、まさに芸術品の宝庫だった。そして1階は騎士団本部や、聖堂があるとのことだった。
その他には貴重な書物が保管されている王国図書館や食堂、更には倉庫などもあるとのことだったのでやはりかなりの大きさだ。
大階段まで行くとヒソヒソとドミニクが俺に話しかけてきた。
「なあ、エノム。もし姫様のことが何かわかったら俺に教えてくれよな」
「姫様? いいけどなんでさ? 何か病気とかなの?」
ドミニクはチラリとクレスを確認した。何かやましいことなのか、ドミニク。
クレスはクロロに騎士団の、騎士道とはどうあるべきかの定義を熱く語っていた。
今ならクレスはこちらに気付かないだろうな。
「いや、それが誰もわからないんだ。この半年、姫様を見た奴はいないんだ」
「そういえばあの獣人の女将さんも言ってたな。わかった、何かあればね」
「頼むぜ、その情報には裏で懸賞金が懸けられてるんだよ。俺に教えてくれたら山分けするからさ、頼むぜ」
「え? そうなのか、わかったよ。何かわかればね」
懸賞金ってすごいな。そんなことでお金がもらえるのか。しかしドミニクよ、たとえわかっても俺は絶対に教えないけどな。俺は人の秘密を喋ったりは絶対にしない。俺は相手の心を読める能力があるけど、その内容を他人に教えることは決してない。
それが俺の個人的なルールであり、信念だ。俺は他人の秘密を知ることができる。でもこの能力で悪事を働くことは絶対にしない、しちゃいけない。(モテ要素がある場合は例外としますけどね)
それは女神様の信頼、俺を信じてくれた気持ちを裏切ることにもなるしな。
第一に、俺はそういうのが嫌いなんだ。(注:モテ要素がある場合は例外です)
「おーい、クロロ。もう暗くなってきたから行くよ。ありがとうクレスさん、ドミニク。また会う事があればよろしくね」
「クレス、頑張ってナイトになってよ」
「ありがとう、クロロ殿。それではエノム殿、お気をつけて」
「なんだ、クレス? お前まだ昇進したかったのか?」
「いいじゃないか、ドミニク。僕の夢なんだからさ」
「お前ってやつは。あんなことをしといて昇進なんて出来るわけないだろ」
「その話はやめてくれよ、ドミニク」
なんか最後にスゴく気になることを言ってたけど。あんなことって何? 気になりながら階段を上がっていくとフルフェイスの兜と白銀の甲冑に身を包んだ騎士か左右に一人づついた。
「エノム、あの鎧、こっち見てるよ」
「ああ、この階段から先は王様がいるからね。騎士団の人達だから大丈夫だよ。守護騎士っていうらしいし、かなりの実力者なんだってさ」
「大丈夫? なんか怖いなクロロ」
「勿論、大丈夫だ。心配ないよ」
目の前には大広間があり、その先には大きな扉があった。きっとあの向こうが謁見の間なんだろう。バーティッド王もあそこにいる。
甲冑の騎士に一礼して通りすぎようとすると話かけてきた。
「待て。お前が魔眼術師エノムか?」
「そうですよ。ほら、これが召喚状です」
「ふむ、わかった。お前は通っていいが奴隷はダメだ。ここで待つか1階で待つように」
「この子は奴隷じゃないですよ。ちょっと訳ありで今はこんな服をきてますけどね。奴隷じゃないから通っていいですね」
俺達は甲冑の騎士の脇を通って謁見の間に行こうとした。
だけど──。
「!!?」
甲冑の騎士は大型の剣を鞘から抜き、俺の前にかざす。
鋭く、それでいて分厚いその剣はかなり使い込まれている。
かなりの熟練者のようだ。殺気から感じる気配が只者じゃないと無言の圧力をかけてくる。
クロロは言葉を無くし、ガタガタと震え俺にしがみついている。
この甲冑野郎、どういうつもりだ? 俺はビビらないぞ。
「なんですか? 召喚状なら見せたでしょう」
「お前、いい度胸しているな。俺の殺気を向けられて逃げないとは」
「殺気? こんな小さい子を怖がらせて何がしたいんですか? 今直ぐに止めて下さい」
「……」
もう一人の甲冑の騎士は無言で微動だにしない。これが騎士団の礼儀なのか? これじゃあ、ドミニクのほうがよっぽどマシだよ。
「そのまま通って行くつもりなら覚悟したほうがいいぞ。あと一歩前に出たらお前等は真っ二つになるからな」
大型の剣を構えながら騎士の殺気は確実に俺達に向けられている。
「エ、エノム、クロロなら大丈夫だよ。城の外で待ってるから」
クロロは震える声でなんとか声を絞りだす。
「クロロ、ごめんな。ちょっと下に行っててくれないか? 直ぐに呼びにいくからさ。俺はこの甲冑野郎の甲冑を全て叩き割ってやらないと気がすまない」
「くっくっく、お前本当にいい度胸だな。楽しみだ」
この野郎、そんな甲冑を着て自惚れるな。俺は魔眼術師エノム、気に入らない奴は容赦しないぞ。
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