第28話 騎士見習いのクレス
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「やだ! クロロもエノムと一緒に行く!」
「いや、だから遊びに行くんじゃないんだぞ? ここで待ってた方がいいんじゃない? ここにいれば夕食だって食べられるんだよ」
「やだやだ! 行きたいよ!」
俺の様子を見に来たクロロにバーティッド王に会いに行かなければならなくなったことを伝えた。
俺はクロロは行かないと言うとばかり思っていた。だって、王様だよ? 何にも面白くない。それがなぜかこの有様だよ。
「うーん、困ったな。えっと……」
「これは失礼しました。僕は王国騎士団所属のスクワイア、「クレス・フレイブ」です。この度はご迷惑をおかけしまして申し訳ありません」
クレスと名乗った若い男はクロロに向かって深々とお辞儀をした。これにはびっくりした。中々出来ることじゃないよな。
「え? ご迷惑じゃないよ。クロロも行きたいもん!」
「って言ってるんだよね」
「いいんじゃないかクレス? 奴隷を連れてって悪いとは言われてないぜ? それにそんなのコイツの責任だろ? 俺らは関係ないって」
むむ、なんだこいつのこの態度。凄い感じの悪い奴だな。たしかドミニクとかって名前だったな。
「クロロは奴隷じゃないよ! エノムの連れだよ!」
「あー、はいはい。それは悪かったな、別になんだっていいんだよ。とにかく早く行こうぜ」
「おい、失礼じゃないかドミニク! それに彼女は奴隷じゃないと前もって教えていたじゃないか!」
「ふん、そうかい。大体お前は真面目すぎるんだよ。今回だって黙って通しとけばこんなことにはならなかったんだ」
クレスはまたかと困った顔をしてため息をつく。
「すいません、エノム殿。こいつはこういう奴なんです。決して格別の悪気があって言ってるわけではないのですが」
「ああ、いいよ。クロロも気にしてないしね」
「あんたも大変だねぇ。あの武神の王様に目をつけられちゃな」
「はは、まったくだねドミニク」
まったくもって気に入らないな。何が気に入らないって「クレス」がだ。ドミニクのようなカスは道端の石ころのようにどうでもいい。だが、この「クレス・フレイブ」と名乗るこの若造(18歳)は気に入らない。
それはなぜか? まずはかなりのイケメンだからだ。そして正義感があり真面目。白い鎧に身を包み、金色に輝く髪をなびかせている。更には長身(181cm)でありながらかなり引き締まった体系をしている。
ちょっとなにこれ?
かくいう俺は真っ黒の髪とさらには漆黒の衣装。それなりの顔面偏差値とそれなりの身長。そして禍々しく赤黒い伝説の魔剣レーヴァテインをひっさげた魔眼術師だ。俺は悪役かっての。
主役はだれだ? ここにきて主役の登場なんですか?
まったく勘弁してくれよな。それに『スクワイア』ってなんだろうな?
「ねえ、クレスさん。スクワイアって何?」
「それは我が騎士団での階級の名称です。スクワイアは見習い騎士という意味です。僕もドミニクもスクワイアなんですよ」
「へえ、階級なんてあるんだね」
ほう、まあいいんじゃないかな。下積みは必要だよ。俺は全然してないけどね!
「まったく。クレスはともかく剣技では団長にさえ引けを取らないこの俺がスクワイアだもんな。やってらんないぜ」
「おい、ドミニク。そんな嘘はいけないだろう!」
「おいおい、冗談の通じない奴だな。マジになるなよ」
ほう、このカス野郎。少しは腕に覚えありか? いったいこの国の騎士様はどのくらいの強さなんだ?
ちょっと【分析】してやろう。このドミニクを『アナライズ』だ!
名前 :ドミニク
LV :5
種族 :人間
職業 :王国騎士 スクワイア
固有 :門番の底力【索敵】【逃走力】
スキル:長剣:D 盾:C
弱点 :いい加減で無責任
レベル5か。普通だな。しかしコイツは生まれながらに門番のようだぞ。スクワイアは君の天職だよ。
しかも【逃走力】のスキル。何かあれば脱兎のごとく逃げれるから安心だね!
見習い騎士でレベル5だとすると冒険者ギルドの冒険者とあまり大差ないのかな。騎士団だから相当鍛えこんでるイメージあるけど。それはコイツがスクワイアだからか?
じゃあ、イケメンのクレス君。次は君だ、弱点が楽しみだよ。
さあ、クレスを『アナライズ』だ!
名前 :クレス
LV :16
種族 :人間
職業 :王国騎士 スクワイア
固有 :騎士の剣技 【能力倍加】【聖騎士進化】
スキル:長剣:A 盾:B
弱点 :クッソ真面目
「はあ!? 強いじゃん!?」
「どうしました?」
「あ、いや。なんでもないです」
「? どうしたんですかエノム殿? ではクロロ殿も一緒にお越しください。エノム殿のお仲間なら問題ないでしょうから」
「ありがとうございます、クレス様」
あっ、ついクレス様って言っちゃったよ。
「?? では行きましょうか」
ちょっと! 奥様どうなってるのかしら!! あのイケメンの彼、聖騎士候補らしいわよ!?
って、ふざけんなー!!マジかよ、聖騎士? それって意味がわかんないぞ?
だって見習い騎士やってんじゃん! しかも門番だぜ!?
ちきしょう、クレスの野郎! めちゃスペック高いじゃん……。弱点もクッソ真面目ってなに? ギャグかよ。 じゃあ装備はどうなの? やっぱり格別なのかな?
よし、クレスの剣を『アナライズ』だ!
【騎士の長剣】:Cランク
[説明]王国騎士団で使われている長剣。盾を装備した戦闘を想定しているため一般的な長剣よりも幾分かは軽量化されている。王家の紋章が柄に刻まれている。
あれ? ここは只の剣だぞ。見た目もいたって普通。となりのドミニクも同じ長剣を腰に下げている。
装備は他の騎士と同じか。まあ、好青年だし、俺に害があるわけじゃないんだけどさ。
「それにしてもエノム殿、ゴブリンロードを一撃で仕留めたらしいですね。素晴らしいです。騎士団のシルヴィア団長も貴方と手合せしたいと言っていましたよ」
「ええ?? マジで!? 勘弁してよ! なんで皆そんな好戦的なの!?」
「皆? 団長には僕からエノム殿はそのような力比べは好まないような性格だったと伝えましたが。貴方に会った時の印象がそうだったので」
「おお、ありがとう! クレスさん。そうなんだよ、俺は強さなんてこだわってないんだ。ただモテ……、いや世界を見て周って冒険したいだけなんだよ。それがあんなことやこんなことに……」
「はは、エノム殿は人気者なのですね」
「いや、そうじゃないんだけど」
剣聖だの騎士団長だのマジで勘弁してよ! それに武神! まさかその武神も俺と戦いたいとか? 王様とバトったらこの国に狙われる! もう指名手配だよ!
そんなこんなで皆でワイワイ言いながら城まで歩いた。
そして日が暮れ始める頃、俺は王様、お姫様が住んでいるおとぎ話でしか聞かないような城に遂に到着した。
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