第21話 全てを手に入れる旅の始まり
第一章これにて完結となります。楽しんでいただければ嬉しいです。
「おい、レーヴァ! ゴブリンが10体くらい目の前にいるけど必殺技いけるか!?」
《うむ、いけるぞ。俺様のスペシャル必殺剣だ。エノム、どれで行く心算じゃ?》
ゴブリンが俺の行く手を阻むようにたむろしている。
中には青いゴブリンもいる。そのゴブリンの頭からは角が2本生えている。きっとランクの高いゴブリンだろう。他のゴブリンとは明らかに風格が違う。
でも、俺が感じた危険な気配のゴブリンロードはコイツじゃない。ここで時間を取る分けにはいかない。
「それじゃあ、レーヴァブレイクってのはなんだ? 衝撃波か??」
《レーヴァブレイクは渾身の薙ぎ払いじゃぞ》
「な、薙ぎ払い? それだけか?」
《おう、そうじゃ! 奴らもこっちに気付いたぞ、行けエノム」
「ギャガアッ!!」
「ギャギャッ!」
「こいっ! 行くぞ、レーヴァブレイクだぁあああ!!」
一瞬にして俺は5体のゴブリンを一刀両断にする。
凄いぞ、体が軽いし動きも切れがいい。レーヴァの加護で身体能力が上がってるからだ。
《おい! エノム》
「なんだレーヴァ? 敵が近いのか?」
《今のはレーヴァスラッシュだぞ!! 間違えるな!》
「はあ? 何が?? つーか、スラッシュってなんだ!? レーヴァスマッシュならあったけどな!!」
《おお、スマッシュだったか、すまんスマッシュじゃった》
「お前、やっぱりあれ全部適当だな。分ってるぞ」
《お、残りが来たぞ。レーヴァストライクだ、エノム! 渾身の回転切りだ、行けぇええ》
「……お前、そんなキャラだったのかよ。でも、わかったよ、レーヴァストライクだ!」
「グギャアァァァ」
俺は押し寄せるゴブリンを回転切りでぶった切る。よし、後はあの青いゴブリンだ。
青いゴブリンは俺の動きについてくる。武器はバトルアックス、威力がありそうだ。
「ゴギャッ」
「おお、跳んだ! でも!」
青いゴブリンは空高く跳躍し、俺に切り掛かる。バトルアックスの攻撃力と相まって防御すれば吹っ飛ばされるな。俺はギリギリで躱し、青ゴブリンの首を横一線ではねる。
《よし、レーヴァストライクだ! いいぞ、エノム!》
「なんか嬉しそうだな、レーヴァは。でもあと少しだぞ、頼むぜ相棒!」
《任せておけ。近くだ、いるぞ、ゴブリンロードじゃ!!》
いる、とんでもなく屈強なゴブリンが1体。ここからだとまだ30メートルはあるけどその強さが伝わってくる。漲る筋肉とデカいグレートソード、それに分厚い盾を持っている。
あれを崩すのは難しいな。
「!! あれはマルスとリーザじゃないか!! なんでここに、あっ、マイアもいるぞ」
ヤバイ、追い詰められてるのか?
それに見たことない騎士の女の子が飛び出してきたな。おおっ!!
しかも強いじゃないか!
ゴブリンロードと渡り合ってる。
「でも、ダメだ! あのままじゃ負けるぞ、力で押されてる! 間に合え、【神速】だ!!」
◆ ◇ ◆
ゴブリンロードの強さに圧倒される一同。マルスは自分が囮になることを決意する。
「リーザ、マイアと一緒に逃げるんだ! コイツは俺がやるから早く行け!」
「でも、お兄ちゃん、このゴブリンロードには誰も勝てないよ。お兄ちゃんも逃げなきゃ」
「くっ、マルスがリーザを連れて逃げるんだよ、こいつはあたしの仇だ! 父さんと母さんの仇をあたしが討つ!」
「ゲギャギャギャッ」
ゴブリンロードは下卑た笑い声で答える。
「待て、私が相手だ! この帝国騎士団副騎士長エリザベス・ハーティスが相手だ!」
─── エリザベスの美しい剣戟にゴブリンロードも苦戦している。だが、エリザベスの剣戟は早く連携も素晴らしいが決め手に欠けた。
そこで、ゴブリンロードはその場の敵を1体ずつ確実に始末をしていく気になったようだ。
「!!、リーザさん、君が狙われてるぞ! 逃げるんだ」
エリザベスが叫ぶ。
「グギャギャッ!」
「やばい、逃げろリーザ!」
ゴブリンロードに立ちふさがるマルスだが、体当たり一撃で吹っ飛ばされる。
「きゃああっお兄ちゃん!」
「リーザあああ」
マルスの悲痛な叫びがこだまする。その刹那、黒い稲妻が駆け抜けた!!
「神レーヴァ破壊断滅斬!!」
「え?」
一同は何が起きたかわからない。ただ、黒い稲妻のような一閃と、
わかったのは一刀両断されたゴブリンロードが盾ごと二つに割れ、倒れた事実だけ。
「あ、危なかったね、リーザ! 危機一髪だったよ」
「エ、エノム!!」
「エノムさん!!」
「エノム!?」
マルス、リーザ、マイアは口々にエノムの名を呼ぶ。
「君は……。何者なんだ? その強さ、鬼神とは君のことだよ」
「あ、初めましてエノムと言います。あなたの剣術も凄かったよ」
「私はエリザベス・ハーティスです。エリオとお呼び下さい、エノムさん」
エリザベスはエノムの強さに鬼神を思い出す。このように強い人は【剣聖】と呼ばれている姉のエアリア以外見たことがない。
「エノムさん! 来てくれたのね、ありがとう。」
「エノム、この野郎! どこ行ってた! それにその格好はなんだよ! いいとこ持っていきやがって!
リーザを助けてくれてありがとうな!! お前はやっぱり凄い奴だよ!!」
「リーザ、ホントによかった。それにリーザはやっぱり司祭なんだね。回復魔法も使えるんでしょ?」
「おい、無視するなエノム!」
「エノムさんは何でもわかるんだね。そうだよ、魔法はアルバスさんに習ったの」
「そうか、やっぱりね。アルバスさんは勇者なんだろ? 後で会いに行こうか」
「うん、そうだね。皆で行こうよ」
「そう言えばアルバスって前にエノムも言ってたよな? 誰だ? そんな奴は俺達の村にはいないぞ?」
「え? いるだろ? 道具屋のアルバスさんさ」
「オリビアの村に道具屋なんてねーよ」
「そうなの? おかしいな。じゃあ、人違いだな」
俺は面倒だったのでマルスの疑問をそこで打ち切った。お前には現われなかったんだな、伝説の勇者は。
「エノム、ありがとう、このゴブリンロードを倒してくれて。エノムがいなければあたしは仇を討つことはできなかったよ。流石エノムだね」
「いや、マイアもすごいよ、あんな奴に立ち向かうんだからね。マイアの両親もマイアに感謝してるよ」
「ありがとう、エノム。そうそう、あたしも後で一緒にアルバスじいさんの所に行くよ。あたしに剣術を教えてくれたのはアルバスじいさんだからね」
「ええ?? マイアも知ってるのか?? 誰だよ、それ!?」
「ああ、皆で行こうか。その前にレーヴァを紹介するよ、俺の相棒なんだ」
「エノム! 俺のこと無視するなよ!!」
こうして俺の冒険は始まった。俺と魔剣レーヴァテインの伝説が。
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