第20話 決戦へ
《待て待て、落ち着けエノム。誰も勝てないとは言っておらん》
「おいっ、なんだよレーヴァ。はっきり言ってくれ! 何が言いたいんだよ」
《うむ、これは相手はおそらくゴブリンロードだ。仲間に女子はいるか?》
「ゴブリンロードだって!? それに女? そいつを倒そうとしてるマイアって女戦士がいるけどそれがなんなんだよ?」
《ゴブリンロードは女子を狙う。王は子孫を残そうとするからの。かなり危険と思っていい。恐らく手下のゴブリンも100体は集まっとるな》
「なっ、なんだと!? 子孫を残すために女の子を!? ふざけやがって、レーヴァ! 俺はやるぞ、100体いようと、どんなにゴブリンロードが強くても絶対ぶった切ってやる。だから頼む、力を貸してくれよ、伝説の魔剣レーヴァテインの力を貸してくれ!」
《落ち着けエノム。力なら貸してやるわい。お前が勝つために必要な物があるんじゃ》
「な、なんだよ。レベルを上げてる暇なんてないぞ」
《阿呆、勝つために必要な物は必殺技じゃろうが》
「はあ?? そんなのあんのかよ!? あるなら早く言ってくれよ。もうじっとしてられないから俺は行くぞ。走りながら俺に必殺技を授けてくれ!」
《よし、それなら必殺技をスキルにセットしておくぞ。走りながら確認しておけ。それからの【神速】は使うなよ。いざという時にスキルが使えないと【心眼】で俺様と話せなくなるからの》
「あっ、そうか。それはやばいな、早速【神速】発動するとこだった」
俺は無我夢中で走り出す。この感じだとまだまだ時間が掛りそうだが気合で行くぞ。
急がないと! まってろマイア、マイアをゲットするのは俺だ!!!
《エノム、……本音が出とるぞ》
◇◇◆◆
「はあ、はあ、もう少しだ。はあ、その前に3分休憩だ。バテバテでゴブリンと戦闘なんて出来ないし。歩きながらさっきの必殺技を確認してみるか」
俺は鞘にしまっているレーヴァに感謝しながら【分析】で俺のステータスを確認する。
名前 : エノム
LV : 12
種族 : 人族
職業 : 魔眼術師
能力 :デビルアナライズ
【心眼】【分析】【ラーニング】
スキル:
【気配】
【神速】
【レーヴァストライク】
【レーヴァザッパー】
【レーヴァブレイク】
【レーヴァキャノン】
【レーヴァスマッシュ】
【レーヴァレイン】
【レーヴァソード】
【神レーヴァ破壊断滅斬】
加護 : 魔剣の加護
称号 :【魔剣に選ばれし者】
「ええ?? スキル枠全部埋まってるし!! せめて少し残しといてよ!」
おいおい、まじかレーヴァのやつ。これはやり過ぎじゃないか!? それに【神レーヴァ破壊断滅斬】ってなんだよ!?
あいつただカッコつけたいだけじゃないのか?
「これも【レーヴァキャノン】なんて必殺技あんのかよ!?」
このことは後でレーヴァに聞くとして充分休めた。そろそろ行かないと。
俺はまたおぞましい気配のする方へと走り出した。
森を抜け平原に出ると先に街らしき建物が見えてくる。だが、やはり様子がおかしいぞ。
街にも煙が上がっていて騒がしい気配が感じる。
あ、あれは!!
「ゴブリンだ!!」
50メートルは先になるがあれは間違いなくゴブリンだ! 色々と噂には聞く緑色の小鬼。ここから確認したかぎり粗末ながら鎧を着こみロングソードを持っている。小さいと思い込んでいたが人間と同じくらいの大きさだ。そんな奴がここから確認するだけで5体はいるぞ。
「ん!? なんだあれ……メイド?」
信じられないが間違いない、あれはメイドだ。間違いなく藍色の巻き毛のメイドだ。
それにバカみたいにデカい斧槍を振り回してるぞ。
しかも足元にも3体のゴブリンが転がってる。
なんだあのメイドは? ひょっとすると俺より全然強いんじゃ……。
しかもめっちゃかわいいし、胸でかくね? 【分析】したいけどそれどころじゃないしな。
おお、すごい! けどやばいぞ、動きにキレがない。
かなり疲労が溜まってるんじゃないか? よし、この距離なら【神速】行けるぞ!
「グギャアア!!」
「グギャ!!」
2体のゴブリンが倒れる。
「さあ、死んでください! 私があなた達をまとめて相手してあげますからねっ」
1人で30体ものゴブリンを相手にメイドは残り3体まで倒していた。
そして残りの3体のゴブリンが同時にメイドに襲いかかる。
メイドはこれは躱せないと斧槍を横に傾けガードしこれを防ぐ。
『ガギィィィ──ンッ!!』
「きゃああっ」
疲労が溜まり踏ん張りが利かずにメイドはゴブリン3体の同時攻撃に態勢を崩し倒れ込む。
「しまったっ、このままじゃ……」
メイドは自分が倒れ込んだことで次のゴブリンの攻撃を防ぐ術がないことを悟り覚悟きめた。
熟練の戦士として名高いメイドでもこの瞬間の恐怖は測りしれないものだった。
「ごめんっ、皆。もう私……………………あれ?」
バタバタと3体のゴブリンが倒れる。そのゴブリンの頭はとてつもない切れ味で切断されていた。
メイドはその切れ味の凄さに心を奪われる。
「なっ、これは!? いったい誰が一瞬でこんなことできるっていうの?」
気が付くとそこには一人の青年が立っていた。しかしこの青年は少年というほど幼くはなく、しかし青年というにはまだ少しあどけなさを残していた。そしてその青年は闇の剣士を思わせるほどの漆黒の衣装に身を纏い、その右手には禍々しく赤く脈打つ赤黒い剣を持っている。
「き、君は、君が助けてくれたの? ありがとう助けてくれて」
「お姉さん、凄いですね。これお姉さんが倒したんでしょう? 後は俺に任せて下さい!」
「え、凄いってあなたのほう……」
青年はそう言うとゴブリンロードがいるであろう方向を見つめ黒い稲妻のように、閃光のようにゴブリンロードがいる正門へ向かって行ってしまった。
最後までお読みくださりありがとうございます。評価・感想・ブックマークお願いします。
更新する励みになっております。




