第16話 宝箱
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おお、ここが3階か。他の階とこれといった変わりは無かったっけどなぜか他のモンスターがピタリといなくなっていた。他のモンスターは俺を避けているのか? 随分と嫌われたようだな。
俺はもう陰影のスキルが発動するエルフのマントで姿を隠してはいない。胸を張り堂々とダンジョンを探索していく。コソコソと逃げ回っていた頃が懐かしいと感慨に浸ってしまうな。
なぜか地下3階は他の階に比べると入り組んだ造りにはなっていない。ほぼ一本道だった。30分ほど進むと今までにないくらいの大きな部屋にたどり着いた。
どうやらここが最深部のようだな。
「おお、あれはまさか!」
なんと部屋の隅から蒸気の湯気がゆらゆらと上がっている。そしてそこからはお湯が沸き出していた。まじか、「温泉」が湧いてるじゃないか! この独特の硫黄の匂いは間違いない。しかも結構深そうだぞ。
「なんてこった、ダンジョンで風呂に入れるぞ。これは一番うれしいかも」
きっとここはあのオークの根城だったはず。あのオークめ、温泉一人占めしてやがったのか。
ダンジョンの中には湧水が湧いている場所は確かに何ヵ所かあった。俺はそれでここまでやってこれた分けだが、まさか温泉まで湧いてるとはね。これはもしかして観光名所になるんじゃないのか?
「さっそく入らせて貰いますよぉ。おおっ、あれは!?」
服を脱ぎながら歩く俺の目にある物が飛び込んできた。
「た、宝箱だ!!」
なんと部屋の奥にはちょこんと宝箱が置かれていた。それは豪勢な装飾が飾り付けられている宝箱、ではない。
普通の木箱にいかにも宝箱といった質素な飾りと鍵穴の宝箱。しかし流石にそれでも初めて見る宝箱には心が躍る。いったい何が入っているんだ? わくわくするじゃないか。
「でもやっぱり温泉の方が優先だな。……おお、湯加減も丁度いいじゃないか」
温泉と宝箱、2つの宝が同時に舞い込んできた分けだが、俺には温泉の誘惑の方がずっと強かった。
俺にとって何日ぶりになるかの風呂は最高に嬉しいことだった。極楽とはまさにこのこと。今までのダンジョンでの苦労と努力、疲れなんてまさに洗い流されたようにぶっ飛んだ。
「ついでだから、服もマントも洗っとこうかな」
服とマントを洗い、壁に引っかけ干しておく。いやあ、これも嬉しい。快適だ、住もうかなここ。
「このダンジョンのボスになるのも悪くないな」
という冗談はさておき、俺は1時間くらい温泉を堪能した。さっぱりした後は宝箱だな。温泉から上がり、服が乾いたか触ってみるともうすっかり乾いていたことに驚いた。
なにかとダンジョンは都合よく出来てるもんだな。たしか魔力があるとかなんとかとマルスが言っていたからそれが関係してるんだろう。
それにアルバスさんの冒険の書にもダンジョンの魔力は有限だがそれは魔力保存の法則と生物の連鎖がなんたらかんたらと書いていたな。
まあ、そういうことだ。俺は洗って綺麗になった服を着て宝箱まで歩く。
「まさか、鍵が掛ってるなんてことはないよな?」
おっと、その前に宝箱に擬態しているミミックと呼ばれるモンスターの可能性もある。調べておくか。
アルバスさんの冒険の書によればミミックの見分け方は至極簡単だった。
まず、ミミックには鍵が掛っていない。そのため知らずに開けた場合はそのまま襲われる。
でも、ミミックの見分け方は簡単だ。
まずは宝箱の裏に回る。
そうしたら宝箱に蹴りを入れる。
「「ドカッ!!」」
「…………」
よし、何も起きなければ大丈夫。本物の宝箱だ。ミミックなら衝撃で餌が来たと判断し蓋が開き、開けた者を襲うそうだ。だが後ろにいれば当然ミミックには発見されない。バカバカしいがまさにこれが正解の見分け方らしい。
俺は早速宝箱の正面に行き、蓋に手を掛ける。そして一瞬だが宝箱から眩い光が発せられた。
「な、なんだ今のは? この宝箱一瞬光ったぞ?」
おお、でも開くぞ。やった、鍵はかかっていない。
俺は勢いよく宝箱を開けた。そこに入っていた物は…………。
「これは、剣とグローブか?」
そこには一本の剣と赤くうっすらと輝くグローブ。そして丈夫そうな黒いジャケットとスーツ、ブーツまでが入っていた。
「おお、すごい。まさに宝箱だ。これ全部レア物なんじゃないのか?」
俺はまず一本の剣を取り出した。長さは柄まで入れると90センチといったところか。非常に軽い。それでいて凄まじい硬度が見た目だけでも伝わってきた。だが、形状は赤黒く独特で溶岩が波打つような感じだ、少し幅も広い。
「でも、怪しいな。なんでこんな赤黒いんだ? まさか呪われてるとかか?」
そう、なぜかこの剣とグローブは赤黒い。グローブに至ってはうっすら輝いてるようにも見える。
ちょっと【分析】してみようかな。
試しにやってみよう。まずはこの剣を『アナライズ』だ!!
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