第13話 【神速】をゲット
『ドガンッ!! ドゴンッ!!』
「!!」
なんだ!? 豚頭がまた棍棒で当り散らしてるぞ。あんな壁ぶっ叩いて意味あんのかよ。しかし、力がすごい。壁が抉れてるぞ、あの筋骨隆々の腕の攻撃を食らったら一溜りもないな。
早く自分の寝床に行けよ、豚野郎。 お前にもう用はないんだよ。
「ブコッ ブコッ ンガアァァ!!」
『ドガンッ!!』
あっ、ヤバい! こっち来るぞ!? 俺がいることがバレたのか? 散々バカにしたからな。よし、豚頭の心の声を聴いてみるか、奴は単純だから何も考えてないだろうけど。【心眼】発動だ!
「ブゴッ ブゴッ!!」
【 スライム イナイ イライラスル コロシタイ 】 (心の声)
うわあ、まんまだよ。やっぱりただ暴れまわってるだけか。おお、あと10メートルまで来たぞ。で、でかい。2メートル近くありそうだ。こう見ると勝つのは無理なような気がする。魔法とか使えるなら話しは別だけど。
「ブゴッ!! ブゴッ!!」
【 ツマラナイ ソロソロ ココモ アキテキタ チジョウニイクカ 】(心の声)
なんだと!? この豚野郎はなんてこと考えてんだよ!!
「フゴッ フゴッ」
【 ニンゲン メス サガシテ ハーレム ツクル 】(心の声)
なんだと!? この豚野郎がハーレム!? 豚野郎の分際で!
「フゴッゴッゴ」
【 オスハ ゼンブ コロス ブッヒッヒ 】(心の声)
ふざけんな豚野郎! 何回豚野郎を言わせるんだ!!
しかしこの豚頭。前に心を読んだ時はもっと簡単な、飯食うとか、暴れるとか単調な単語ばっかりだったのに。まるで知能が発達したみたいじゃないか。なんとなく嫌な予感がする。
でも絶対阻止してやるからな、あの豚野郎。 何がハーレムだふざけやがって。
「よし、あいつは下の根城に戻ったな。あとはあの罠を仕掛けた場所でスライムロードを倒すだけだ、レベルを上げてあの豚をぶっ倒してやるぞ!!」
俺は地下2階にスライムを餌にした罠を仕掛けていた。もちろん生きてるスライムを使って餌に食い付くかは実験済みだ。俺は何度も実際にスライムを罠にかけ練習して成功している。
そして俺は罠の仕掛けた場所に行き、ただひたすらスライムロードが餌に掛かるの待ち続けた。
そしてただ時だけが過ぎていく。
もう来ないかと諦め掛けたその時だ、ダンジョンの隅が明るく輝きだした。
きた!! スライムロードだ! 周りを警戒しながら素早く移動している。
俺は生餌のスライムを餌に、気配を消しじっと隠れている。
そう! 俺の作戦はスライムロードが餌に食い付いたら速攻で倒す! 辺りはもう輝きで目が眩むような明るさだ。
よし、来た来た! 行けっ、食い付け!! 食え! 食え! 行けっ!!
「 ガブウッ 」
食い付いた!! 今だぁ!!
そして俺はマントを勢いよく脱ぎ、素早くスライムロードの後ろに回り込むと餌に掛かっているスライムロード目掛け短剣を振り下ろす。
「うおおぉぉっ!!」
『ザッシュッ』
「ピギャーー」
【ヤラレター チキショウ ブンレツダア】(心の声)
俺は右手に持っている短剣でスライムロードに渾身の一撃を食らわせた。するとスライムロードは暴れ回り分裂を行った。
しかし、そこに隙ができる!
「今だいくぞ!!」
俺は分裂したスライムロードにも渾身の一撃を食らわせ倒した。
「はぁはぁっ。や、やった、やったぞ、俺は遂に…………」
俺は遂にスライムロードの最後の一匹に止めを刺した。達成したんだ!
「うおあぁぁぁ!! どうだ!! やってやったぞおぉぉ!!」
俺は思いっきり叫んだ。これからやってくるであろうレベルアップの大波大フィーバーの期待に自分を抑えることができなかった。
今俺は姿を隠していない、その状態で大声で叫ぶことがどんなに危険かは理解していた。
でも、どうしても我慢できなかった。叫ばずにいられなかったんだ。
そして、【分析】でレベルを確認してみる。
「おお、やった! レベル12!!」
ああ、涙がでそうだ。遂にやったんだな俺。一人でダンジョンに潜入して何日も・・・・。よくやったよホント。それにここまでレベルアップするなんて予想以上だ。
その時だった。
【ラーニング】スライムロード
【神速】スキルをラーニングしました。スキルを確立20%でコピーしますか?
「おおっ、きたあぁああああ!!」
これは絶対ほしい!! そのスキルは欲しくて涎がでるぞ。でも20%!? ってなんでだ? 凄いスキルだと確率が低いのか? だがこうなれば運任せ、やるしかない。
「よし、やってくれ。【神速】を【ラーニング】だ!」
【ラーニング】成功
【神速】スキルをゲット!
【神速】スキルが使用可能になります。【神速】をセットします。
【残りスキル枠】:3
「すごいぞっ!! やったあぁぁ! スキルゲット!! 凄いスキルだぞ!」
よっしゃああ、これはもう無敵の魔眼術師エノムの誕生だろう!? やったぜ!!
── 喜びで歓喜しているエノムの背後に巨大な影が迫りつつあった。エノムはまだ気づかない。
── 一方、タリナムの街を目指していたマルスとリーザは日が昇る前にタリナムの街に到着していた。
「お兄ちゃん、マルスお兄ちゃん! いい加減に起きて! 早く冒険者ギルドに行こうよ」
なんだ、ゆらゆら揺れると思ったらリーザが俺を揺すってる。起こしに来てくれたのか?
「う、うーん? なんだリーザ。おはよう、もう朝食できたのか?」
「ちょっと、寝ぼけてないで起きてよお兄ちゃん。ここはタリナムの宿屋だよ」
「う、うん? そういえば俺の部屋じゃないなここ」
ああ、そうだった。今朝の日が昇る前にタリナムの街に着いたんだった。それで宿屋で部屋を二部屋借りたんだったな。どうやらリーザが俺を起こしに来たらしい。
「もう、お兄ちゃんノックしても全然起きないからマスターから合鍵借りてきたんだよ」
「すまん、起きるよ。じゃあ、準備してギルドに行こうか」
「うん」
「でも朝食食べたらな。腹が減っては何もできないぞ」
俺はぐぎゅうっと鳴った腹を摩りながらリーザに言った。俺の腹
の音がよほど可笑しな音に聞こえたのかリーザはクスリと笑う。
あけましておめでとうございます!お読み下さりありがとうございます。
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