表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/50

第12話 チャンス

── マルスは。


 よし、そろそろ出発するぞ。皆もう寝てる時間だからこっそり家をでれば大丈夫だ。リーザが心配しないように手紙を置いておこう。


「えーと、なんて書こうか」


 そうだ、これならリーザも心配しないな。


 リーザへ

俺はしばらく旅にでようと思う。心配しないでくれ。俺には夢があるんだ、必ず叶えて帰ってくる。親父と母さんにも伝えておいてくれ。その時が来たらまた会おう。 勇者マルスより


「よし、完璧だ。さりげなく勇者マルスにしてるとこがいいな」


 俺は装備を確認し出発の最終チェックをして部屋を出る。隣のタリナムの街までは歩いて半日かからない距離だ。朝方には到着できるだろう。


「タリナムの街に着いたら宿屋で部屋を借りて休んだ方がいいな、寝不足は体に悪い。それから冒険者ギルドでマイアを探すか」


 あ、そうだ! 宿に泊まるなら金が必要じゃないか。危ない危ない、一度部屋に戻ろう。


 えっと、俺の有り金は全部で銀貨3枚と銅貨12枚か。充分宿代はあるな。


「よし、気を取り直して出発だ」


 タリナムの街はここと違って何かと金が掛かるからな。人口も多いし、物騒な所だ。そうっと、音を立てないように階段を降りてと。


 あっ、そうだ! 大事なこと忘れた!


 仕方ない、もう一度部屋に戻ろう。


「この本はもっと見付かり難いとこに隠さないとな」


 もし俺が居ない時に母さんやリーザがここを掃除してこれを発見されでもしたら大変だ。勇者マルスどころではない、変態マルスになってしまう。


「お兄ちゃん、何してるの?」

「う、うわあぁぁっ!」

「きゃあっ、ご、ごめんね。驚かせちゃって」


 やばい、リーザだ! なんてことだ出発前に見つかってしまったじゃないか! どうしよう!?


「な、な、なんだよ、リーザか。急に話しかけるなよ、びっくりするだろ」

「ごめん、でもさっきからガサガサ音がするから気になって来てみたんだ」

「ああ、悪い悪い。部屋の掃除してただけだから、何でもないよ」


「こんな夜中に? そんな格好で? その本は何?」

「どわぁぁっ。こ、これは何でもない、何でもないから! これは剣術の指南書なんだよ!」

「へぇ、マイアみたいな女性が剣を持ってるもんね」

「そ、そうだな。この人は【剣聖】のエアリア・ハーティスだよ」

「ふーん。名前は聞いたことあるけどあの剣聖がそんな格好するの?」


 う、リーザの目が気のせいか冷やかだ。しかも、かなり食い付いてくるぞ。まさかリーザが剣聖の名前を知ってるとは意外だ。嘘がばれたか?


「お兄ちゃん」

「な、なんだ? どうかしたかリーザ」

「隣街に行くんでしょう? マイアの手助けをしに」

「!? な、なんのことだ? 俺が行く分けないだろ」


 やばい、リーザは変なところで感が鋭いからな。何とか誤魔化さないと。


「誤魔化してもダメだよ。そこの手紙はなんなの?」

「あ、しまった!」

「……お兄ちゃん、私も連れて行って。そうすればお父さん達には黙っててあげる」


「!!」


 何? 今なんて言ったんだ? 連れて行けだって!? あのリーザが?


「な、何を言っているんだ、リーザ。絶対にダメだ! そういえばこの間もそんなこと言っていたけど俺は許さないぞ」

「お兄ちゃん、私もマイアの為に何かしたいの。マイアのことを大事に思ってるのは私も同じよ。……それに…」


「な、なんだ? まだ何かあるのか?」


「連れて行ってくれないならお母さんにお兄ちゃんは変態だったって言うわ。わたしのお兄ちゃんは変態マルスだって!」

「な!? 俺を脅すのか、リーザ!」


 あの可愛いくて天使なリーザが!! 今では俺を脅迫する小悪魔なサキュバスになってしまった!? な、なんてことだ。こんなリーザも可愛いけどぉぉぉ!


「それに私、魔法も使えるし、お兄ちゃんより実は……強いわよ」

「は!? え、ちょっと何を言ってるんだ、リーザ」

「ごめん、今のは冗談よ。さあ、私も準備は出来てるから行きましょう。早くしないとお父さんとお母さんに気づかれるわ」


「う、くっ、わか、わかったよ」


 早速と言っていいのか、いきなり不測の事態になってしまったぞ。まだ家を出てもいないのに……。そう言ってリーザは羽織っていたケープを脱いだ。ええ?


「リーザ、その前にその格好はなんなんだよ、その武器って……」

「うん、鞭よ。鉄の刺が付いてるの。私、鞭の名手よ」


 嘘だろ、リーザが鞭? まさか女王さまキャラなのか? それにやられた敵は喜んでしまうじゃないか!!


「どうしたの? 早く行こう」


 いつものリーザじゃない、それに可憐で清楚なイメージのドレスばかりいつも着てたのに……。今は胸元は大きく開いてるし、そのスラリとしたきれいな長い脚がちらちらと見えるスカートは男の目を釘付けにするぞ。


 なんとなく司祭が着るようなドレスだけど、リーザが着てるからか妙に色気がある。 それに腰に鞭って。


「最高じゃないか」

「どうしたの?」


「いやいや、なんでもない。それにしても今日のリーザはいつもと全然違うな? どうしたんだよ」

「ふふ、そう? マイアの為にもお兄ちゃんに断られないように頑張っちゃった」

「そうだったのか、逆に心配したよ。じゃ、行くぞ。危なくなったらすぐ逃げるんだ、約束だぞ」

「うん、了解! お兄ちゃんよろしくね」


 こうして俺達は月夜の中、兄と妹二人でマイアのいるタリナムの街に出発した。こうなってしまっては命に代えてもリーザだけは守らないとな。マイアは強いから自分で自分を守るだろう。


「勇者、月夜に旅立ち伝説が始まる。月明かりさえも俺の栄光の懸け橋となるだろう」


 うむ、冒険の序章としてはこの月夜は神秘的で全ての可能性を感じてしまう光景だ。まさに俺の旅立ちに相応しいな。


「っぷ。あははっ。お兄ちゃん、頑張ってね!」

「…………リーザ、笑い過ぎだ」




 ── 一方、エノムは。


 よし、ついに来た! 豚頭(オーク)だ! やっと2階に上がって来やがったぞ。この距離なら奴には気づかれない、チャンスだ。【分析】してやる。あの豚野郎、豚頭(オーク)を『アナライズ』だ!!



【オーク】:Cランク

[説明]豚の顔と筋肉質な巨体を持つ二足歩行のモンスター。知能はあまり高くなく手当たり次第に暴れまわる。下唇から突き出している牙はモンスターコレクターには高値で取引されている。

スキル:【棍棒・B】

耐性 :打撃 斬撃

弱点 :火属性 風属性 光属性


おお、マジか! 【棍棒・B】だって!? こんなスキルを持ってるなんてやっぱり危険なモンスターだ。 すごい筋肉だぞ。



お読み下さりありがとうございます。今年もあと少し。来年も頑張っていこうと思います。

先日、2回目となる有難い感想を頂きました。嬉しくてまたも涙が・・・・

では皆様、よいお年を! 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ