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第10話 それぞれの目標

 

「よし、これはすごく上手にできたな。俺は天才だ」


 俺がスライムロードを倒して経験値を荒稼ぎしようとダンジョンに一人潜入してから既にかなりの時が過ぎていた。正直、どのくらい時間がたったのかわからない。もうダンジョンの住人と化している。


「このスライムの一夜干しなんて最高の出来だぞ!」


 うん、残念ながら食い物はスライムしかない。スライムも内蔵さえ食べなければちゃんとした非常食になるんだ。味は何となくアロエの食感がするんだぞ、これホント! アルバスさんの冒険の書にも書いてあったんだからね! 


「やばいな、一人でこんな所にいるから独り言ばっかりだ。今日はスライムのプルプル刺身にでもするか」


 最近考える、ここまでする必要あるのかと。一人でいるから考える時間もかなりあるんだ。確かに、最強無敵のチート野郎には憧れるけど、スライムを朝から晩まで食って強くなりたいかって言われるとなりたいとは即答できない。


「俺、料理人にでもなろうかな。ここまでスライム料理を作れる奴なんていないだろ? そうだろ?」


 あれ? 俺、誰に話しかけてんだ? なんか流石に精神状態はやばいかも。


「違う違う、俺はなんの為に魔眼術師になったんだ! モテるためじゃないのか!」


 俺の一人葛藤は続く。一人二役のエノムを演じてます。


「いや、確かにモテたいけど。でもこれはマイアの為に強くなりたいって思ったんじゃないのか? マイアの両親の仇を取る手助けをしてやりたいって思って! そこに(よこしま)な考えはない」


 マイアはたしかに魅力あふれる女だ。しかし、俺はマイアの好意を得ようと手を貸すわけじゃない。あの涙を少しでも流さないようにしてやりたいからなんだ。


「なんだ? エノム。お前随分と立派なこと言うじゃないか?」

「いや、そうだろ。下心でこんなことするような奴は何時まで経っても英雄になんてなれない」

「はあ? お前は英雄になりたいのか? 本気か? なれる分けないだろう? 笑わせるな、落ちこぼれの能無しが!」


 俺、虚しくなってきた。でも、これが俺の本心なのかもしれない。俺は英雄になりたいのか? だから強くなりたいのか? 


「いや、違う。そうじゃない、英雄なんて呼ばれたいからじゃない。俺は…………」


「俺は自分の手の届く範囲くらいの人達は守りたいって思う。そうだ、それだ!それが俺の目指す魔眼術師だ」


 俺は別に見ず知らずの人の幸せを願うような聖人様でもないからな。まずはマイアのために強くなろう。強さはどんなことをするにも必要だ。正直、それが全てと言ってもいいくらいだ。


「強さが全てじゃないなんて言う奴はいざという時に何も守れない! まずは力が必要なんだ!」


 まずは、スライムを三枚に卸してと。


「やるだけやってダメならスライム料理の店でも始めよう」



 ── オロビアの村 (マルスとリーザの村) ──


「やあ! はっ! せいやー!」


 よし、いい感じだ。エノムとダンジョンに行ってからなんだか調子がいいな。


「どうしたのお兄ちゃん。急に剣の稽古なんかやりだして」

「ん? リーザは下がっててくれよ、危ないからな。」


 俺は強くなることに決めたんだよ、リーザ。今がチャンスだ。マイアの両親の仇のモンスターを俺が倒せば……。くっくっく、マイアは俺にぞっこんだ! マイアだけじゃない、俺は英雄になって女は選り取り見取りってもんだ。


「俺は勇者を目指すぞ、リーザ。今から真面目に剣の修行を始めることにした」

「お兄ちゃん、まさかあのゴブリンロードと戦う気なの?」

「いや、心配するなよ、リーザ。大丈夫だ、勇者を目指すだけなら俺でもできるだろ? 危ないことはしないって」


 リーザにだけは心配かけたくないからな。もしモンスターがでたらリーザには内緒で行かないとな。


「エノムさん、ここにはもう来ないのかな」

「なんだ、リーザ。あいつのことが気になるのか? 忘れろ、あいつは他の町に行ったんだ。もう戻ってこないぞ」

「うん。…………そうだね」


 エノムの奴め、本当にどこ行ったんだ? あいつがいれば二人で修行ができたのに。しかし、エノムはやっぱり只者じゃなかったな。あいつは力こそなかったが、あの動き。まるで相手の動きが読めるように戦っていた。しかし、いない者を頼っても仕方ない。俺もあんな感じで戦えればきっとやれる。


「さあ、リーザは危ないから家に戻ってろよ。俺はもう少しやっていくから」

「わかった。がんばってね」


 我が妹ながらリーザは可愛い。リーザを守るためにも強くなってみせるぞ。


「ねえ、お兄ちゃん」

「なんだよ、リーザ? まだなにかあるのか?」


 どうしたんだ? リーザの様子がおかしいな。いつもなら言いたいことははっきり言ってくるのに。


「う……うん。もし私がマイアと一緒に戦いたいっていったらどう思う?」

「えっ? 何をいってるんだ!? リーザが戦かえる分けないだろ!?」


 リーザの奴、どうしたんだ? こんなことを言ってきたことは今まで一度だってないのに。


「もし、私が魔法を使えても?」

「ダメだ! それにリーザは魔法を使えないだろ? 誰にも教わったことないんだから」


 何を言ってるんだ、リーザは? 魔法なんて魔法学校に行って長い時間をかけてやっと習得できるっていうのに。


「わかってる。もしもの話しをしてみただけだから。じゃあ、頑張ってね」

「…………まさかな」


 リーザがあんなことを言ってくるなんて予想外だった。それに魔法? 魔法を使える奴はこの村にはいないはずだ。リーザが魔法を使えるはずがない。考えるな、まずは自分の剣の腕を上げるんだ。リーザにまで俺は心配をかけてるからだ。


「うおおおおぉぉぉ!!」


 これからだ、これから俺は強くなる! マイアのため、俺のハーレムを作るために!!



 ── その頃エノムは



「すごい、なんてレアモンスターだ」


 ようし、美味い、美味いぞ!! いいぞ、焼いても美味いし、刺身もいい。これはいい素材をみつけたぞ!



【くらげスライム】:Dランク

[説明]スライム種だが出現率の低いレアモンスター。スライムとは違いふわふわと空中を泳いで移動する。触手があり、触手に刺されると痺れるため注意が必要。非常に美味で美味しいが触手には毒があり食べられない。

耐性:水属性

弱点:火属性 風属性 光属性


「……なんか、アナライズまで職人使用になってないか?」


 そろそろ、スライムロードを見つけないとヤバいぞ……。



お読み下さりありがとうございます。評価、感想、ブクマしてもらえると光栄です。


読みやすくなればと改行等しています。内容はほぼ変えていません。

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