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曇天

時間は無情にも過ぎていく。

段々近付いてくる宿泊研修、

面倒な委員会と複雑な空気。

黙々と手元の作業に取りかかりながら、

向かいに座っている高橋の顔を盗み見る。

明らかに不機嫌なそいつは乱雑にホチキスで書類をまとめていく。

「しおりなんてこんなに何枚もいらねぇだろ」

殴り付けるように机にプリントを叩きつけて彼はぼやく。

ぼやきながらの作業は難航しているようだ。

その隣ではすみれがクラスの座席表や部屋割りを綺麗な字で書いている。

なにも言わずに作業に没頭する彼女を、

高橋は真っ直ぐな瞳で見つめていた。

「おい、作業すすんでねぇだろ」

自分の役割を終わらせた俺がそう言うと、

こちらを睨み付けてから高橋は黙って作業に戻る。

クラスごとに出来上がったしおりを分けているうちに高橋の作業も終わったようだ。

「これで終わりだ。

あと一週間で宿泊研修だってのに、全然楽しくねぇや」

心底つまらなそうにぼやいた高橋に、

すみれがクスッと笑みを漏らした。

「高橋くん、今日のお昼に楽しみって叫んでなかった?」

そういえば昼休みに廊下ででかい声の集団が楽しみだとかって叫んでいたが、それはこいつか。

「聞こえてたのかよ」

真っ赤になった高橋は俯いて、それから開き直ったようだ。

「楽しみだろ、そりゃ!

こんな委員頼まれなかったら心底楽しみだったんだよぉぉ」

悲痛にも聞こえるその声に、俺たちは爆笑した。

確かにこんな委員を任されなければ楽しみって思えたかもしれない。

それでも少しだけ、楽しみに思えるような気がする。

高橋はすみれが絡まなかったら面白くていいやつだ。

さすが人気ナンバーワンの爽やかイケメン。

すみれもみんなには優しい高嶺の花として接しているのに俺には強気で、そして弱さを見せる。

見ていて飽きない二人と同じ委員になれたことがせめてもの救いだと思った。


この研修をきっかけに、柚葉にも友達が増えるといいが。

なにかと俺と一緒にいるせいか、

ただ単に気の合う奴がいないのか、

柚葉は学校で喋ることも笑うことも少ない。

話しかけられても頷くだけだ。

このままではだめだ。

いつまでも一緒にいられるわけじゃない、

いつでも助けてやれるわけじゃない。

他にも柚葉を支えてくれる人がいれば少しは安心できるんだが。


「じゃあ今日は終わり。じゃな」

高橋はサッカー部に走っていく。

いつもより早く終わったから、

柚葉の家に顔を出して適当に連れ出すか。

「じゃあ、また明日」

すみれにそう言って立ち上がり、教室を駆け出す。

最近我慢させすぎている分、今日はとことん時間をとろう。

行きたいと言っていた本屋にでも連れ出すか、そう思いながら走る。


空は薄暗くて、今にも雨が降りだしそうだ。

曇天は少しもやもやする心の奥を映し出したかのようだった。



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