出逢い
「上原すみれさん、俺と付き合ってください!」
「ごめんなさい、興味がないの」
泣きそうになりながら立ち去る男、本日4人目。
教室の窓から裏庭の告白スポットを眺め、こっぴどく男を振り続けるその女について考える。
上原すみれ、私立花崎高校1年の高嶺の花である美少女。
「あいかわらずぶれねぇよなー、すみれちゃんて。隣のクラスの朔夜も昨日振られたらしいぜ」
高橋朔夜、1年1組、爽やかサッカー青年モテモテイケメン。
「まぁ、上原さんみたいな人は同じ年の人より年上とかと付き合ってそうじゃね?」
あーねー、と話題はほかに移っていく。
上原すみれ、1年3組、美少女真面目何事にも冷静沈着。
そんなものがイメージだけだと知ったらみんなどうするかな、なんて考えてみる。
「帰ろーぜ、時雨」
「おう」
俺が高校の高嶺の花に出会ったのはこの高校に入学してすぐの頃だった。
「ちょっとごめん!かくまって!」
入学式が終わって教室に行こうと廊下を一人、歩いていると急に腕を捕まれ、人のいない倉庫裏に連れていかれる。
かくまって!なんて言いながら俺どっかに連れてかれてんだけど。
なんて思いながら大人しく連れていかれる。
しばらくすると「すみれさぁん!どこ??」と言う声と共にすざましい数の足音が通りすぎていった。
「で、俺はなんで連れてこられたのかな」
息があがっていたすみれと呼ばれた彼女に聞く。
「万が一見つかったときの保険、かしら」
さっぱり訳がわからないけど、まぁいいや。
「ふぅん、じゃあ俺教室行くんで」
さっと立ち去ろうとすると腕を再びひかれる。
「ちょっと待ちなさいよ」
「まだなんかあんの」
素直に立ち止まって振り替えるとみんなが騒ぐだけあるなぁという整った顔を歪ませた彼女がいた。
「あたしが1度頼ったからって調子に乗んないでよ」
ギリ、と彼女の腕に力が入ってからパッと手が離された。
その後、特になにもないままこの事も忘れ去りそうになっていたのに。
入学して1ヶ月たった頃の放課後。
「ちょっとあんた!」
後ろから腕を掴まれて振りかえると、皆の注目の的、高嶺の花が立っていた。
「上原さんっ待ってください!!」
後ろからすざましい足音。
「ちょっときて!」
なんだこれ、デジャブ?
廊下を高嶺の花に手を引かれて駆け抜ける。
前と違ったのは連れてこられたのが屋上だったこと。
「なんでまた俺なわけ?」
肩で息をする上原すみれを見据える。
彼女はその質問に答えず、目をそらした。
「用事がないならもういい?」
立ち上がろうとするとそっと服の裾を引っ張られる。
「用事がないなんて言ってないでしょ」
離してくれないので横に座り直すとその手が離れた。
「で?俺帰りたいんだけど」
その横顔を見ながらその用事とやらを待つ。
「よ、用事ってほどでもないけど…」
どっちなんだよ、いったい。
「あんたは他の人と反応が違うから…その」
決してこちらを見ない彼女から目をそらし、別棟の壁に掛けてある時計を見る。
早くしないと、あいつ待ってるよな…
「わり、時間ないんだ。また今度な」
今度こそ立ち上がってドアに歩き出すと、高嶺の花が声を張り上げた。
「あんた名前は?!」
それまた急な質問。
そういえば言ってなかったような。
「南野時雨だよ」
振り返り様に言ってドアに手を掛ける。
「私は上原すみれ、すみれでいいわ」
ちらりと見えた彼女の表情はいつものそれと違って優しい笑顔に見えた気がする。
気のせいかもしれないけど。
「またな、すみれ」
ドアを閉めて階段を駆け下りる。
多分あいつは皆の言うような高嶺の花じゃない。
結局用事ってなんだったのか。
まぁいいや。
話はまた今度しよう。