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(42)「また会ったわね」

 

 陽の指示で、借り家の玄関を施錠し、ガレージの扉を開放。車内で監視を続ける私たち。次に出てくる黒塗りの高級車を、追いかけるためだ。

 40分程で出てきた。ホテル出口から左折、京都駅とは逆の方向へ走り出す。運転手の他に、助手席と後部座席にいた。助手席にいる男は、耳が隠れる程のヘッドホンを付け、目隠しをしている。


「いいよ、追ってぇ」


 黒RXを、50メートルほど後方で走らせることに。


「助手席にいる男、大阪にいる建毘師の佐藤虎騎介(とらのすけ)という人だと思う」


 陽はある程度の奉術師の顔と名前を、脳に刻み込んでいると、以前教えてくれたことがある。


「あれだけでよく判るわね」


「彼は左腕がないんだ。シートベルトで出来る服のしわで判った」


「スゴい考察。で、なぜ彼は目隠しされてるの?」


 疑問に思った私に、陽は優しく応えてくれる。


「あいつらに、場所を知られないためだと思う。ヘッドホンも周囲の音を消すため、じゃないかなぁ」


「ただのビジネスホテルなのに?」


「外見はそうでも、中は違うかもしれない」


「ホテル、じゃない?」


「それはまた別の機会に探ってみる。ただ……」


「ただ?」


「もし、この方法をあの運転手が考えたとしたら、あの男、ただの運転手じゃない。何かの専門家だ。……それに今気づいたけど、あの車も普通じゃない」


「えっ、そうなの?」


「ボディの下がり具合、重量感からすると、重厚な装備にしてある。最低でも防弾ガラス、防弾ボディってとこかな」


「大統領専用車並みってことね」


「そう。おまけに今走ってる道は殆ど適当。時間稼ぎしてるか、尾行を撒こうとしているだけ。油断していると見失うよ、姉さん」


「分かった!」


「あの運転手、やはりSPか公安かも……早目に処理したほうがいいみたいだね」



 京都市内を40分程追尾。一度見失いそうになったが、二人で協力しながら何とか食らいついた。京都ならではの特徴ある道路体系は、ある意味助かった。

 稲荷シティホール西路地に入った時、停車している黒塗り高級車を確認。慌てて停車した私は、ゆっくりバックしながら目視出来る場所で停車し、様子をうかがう。そこで降車する三人。その中に私の知ってる人物が、いたのだ。


「あの!」


「知ってる人?」


「命毘師、端上レイってよ」


「あ〜、最近活動し始めたっていう」


「先月もあのにやられたわ」


「それじゃあ消したいよね、彼女」


「……そうね」


「でも今日は苦戦するかも」


「どうして?」


「傍にいる背の高いほうの男、安倍坂あべさか敬俊けいしゅんだ。安倍坂一族の指揮官、そして最高度トップクラス建毘師たけびし。って資料にあるけど、実際見たことあるわけじゃないから解んない。でもさっき感じたあの能力パワーは半端じゃない」


 恐怖に立ち向かおうとする狂犬のような陽が隣にいる。前のめりになり、すぐにでも襲いかかろうとしている。が、視線を落とし見えたのは、小刻みに震えている彼の拳だった。


(陽が震えてる!? そんなにスゴい男なの!? 安倍坂って人)


 背の高い建毘師を凝視する私。高級車は去り、三人が向こう側へ歩き出したため、徐行で後を追う。佐藤という人物と別れ、その後若い命毘師と近くのパーキングへと、入っていった。


「車か?! 姉さん、あそこに付けて」


「うん」


「術も解いて」


「分かった」


 運転しながら奉術師のみょうを解放した私は、陽の指示通りにパーキング付近の路上に停車させた。陽も命を解放しているが、攻撃性が強過ぎることを感じた私。嫌な予感がした。


(こんな所で暴れたら……マズい!)


「陽は少し待ってて。私が先に行ってくるから。いぃい、冷静に」


 彼を残して降車し、パーキング内へ。すでに建毘師たけびしの体勢と鋭眼は、コチラを向いている。ナチュレ・ヴィタールのシールドを張り、命毘師のを背側に隠すように護衛している、安倍坂の指揮官。その二人の元へ歩み寄る私は、数メートル手前で足を止め、女子に話しかけた。呆れた口調で。


「また会ったわね」




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