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(41)鬼の形相

 

 静命術せいみょうじゅつ奉術師ほうじゅつしみょうを、消した私たち。

 

 一時間おきに交替しながら、ホテル出入り口を監視。分かる範囲で、出入りした人物と車の詳細を書き留めた。刑事の張り込みの苦労を肌で、感じていた。

 しかし、夕方になっても、辺りが真っ暗になっても、宿泊客っぽい数人以外、それらしき出入りする者の動きがない。静命術を使っている間、私たちも奉術師のみょうを感知することは出来ない。が、現れた形跡はない。組織ネスの一人である者のGPSも、そこから移動していなかった。


「深夜にコッソリ来るかもね」


 陽はボソッと言ったが、私もそう考えていた。

 深夜は仮眠も含め、90分間おきの交替にする。夜0時を過ぎた。私の番の時、一台の黒っぽい乗用車が、ホテル地下駐車場へと消えた。入る直前ライトを消し、一般人なら減速するはずの入口で、スッと隠れるように突っ込んだ風に思えた。早くてハッキリしなかったが、高級車らしき乗用車。


(来た!?)


 ただこの時は仮眠中の陽を起こさず、継続して監視、交替の際に知らせる。陽の番の時、その高級車は出て行ったようだ。反射神経抜群の陽は、車が出て来た際の徐行で、瞬間に録画ボタンを押している。再生して解ったのは、品川ナンバーの外国高級車であること、運転手は中年の男であることだ。

 次に私から陽に交替する朝4時頃、二台の車のライトを発見。初めて録画ボタンを押した私。ホテル地下へ潜って行く、ホワイトのワンボックスカー二台には、複数の人影が見受けられた。


「陽」


「いよいよだ」


 数分後には大阪ナンバーの乗用車が、ホテル地下へ。騒々しくなってきた。ただ奉術師はまだ含まれていない。

 交替はしたものの、目が冴えてしまった私は、キッチンで作る二人分のホットコーヒー。と言ってもドリップだけど。それを持って、二階への急な階段を丁寧に上り、部屋に入る。同時に告げられた。


「さっきの外車だよ。建毘師たけびしが乗ってた」


「何で建毘師が? って言うか、静命術()いたの?」


一瞬ちょっとだけ。……建毘師がいる理由は一つ、護衛だよ。余程僕たちを警戒してるみたいだね。つまり、一緒にいるのは、それなりの人物ということになる」


「それなりの、人物……」


「高級車での送迎、建毘師を護衛に付けるほどの大物か要人。誰かは判かんないけど、組織に詳しい人じゃないかなぁ。でもこれでハッキリした。風間を蘇生させる準備をしている。今日必ず命毘師が来る!」


 愉しんでいる陽と、緊張している私がいた。コーヒーを飲みながら、期待の命毘師を待つことにした。

 通勤の交通量が落ち着き始めた朝8時半を過ぎた頃、あの黒塗りのベンツ275型S600Lが、地下から出て行く。


「あの人、何者かしら?」


「さあ。ただの運転手かもしれないし、SPエスピーかもしれない」


 雇われている人なら、それほど危険じゃない。必要なら後日処理する、とも言った。

 それから1時間程が経過。既に二人とも静命術を解き、奉術師の動きを観察する。


「姉さん、来たよ」


 強いみょうを感じ始めていた陽。その後、私も近づいて来るのが分かった。


「姉さん、隠して!」


 突然の陽のコトバで、静命術をかけた。

 窓からホテルを注視する私たち。あのベンツがホテル地下へ、我が庭のように潜って行くのを目撃。あの車に、奉術師のみょうが三人。その一人が命毘師であることを察していた。ただ、別のみょうに反応する陽は、神妙な面持ちでいる。


「厄介なのも、来たみたい……」


「えっ?」


 私には不明だった。三人中二人の建毘師がいるのは判ったが、陽の感知度は鋭い。


「かなりの持ち主だよ。僕が会ったことのある建毘師とは比較にならない。僕たちのこと、感づいたかもしれない」


 初めて見る陽の眼。恐れているような、険しい眼をしているのだ。


「ようぉ?」


「まさか……誤算……フッ、邪魔者は誰であろうと関係ない。必ず消してやる。やられる前に、倒さなきゃいけない」


 口角が微妙に上がった陽は、鬼気迫るような、まさしく鬼の形相。


(ここまで陽を本気にさせる建毘師って、誰なの?)


 


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