(31)県議会議員への復讐
―― To.L13
06171600
INU(IZUMO)
S L13
Mr.KAITO 50
・・・・・・・
OK or NO ――
予定日五日前に届いたNSからの通知。私はOKを出した。
6月17日16時、出雲の伊怒神社。
私にとっての出発点とも言える場所。18歳の時、ここで祖父と実父に初めて会い、祓毘師であることを知った地だ。
あれ以来、この神社で何人もの闇喰を行なってきたが……未だに懐かしい。
今回の依頼人は同時三人。多可町前町長の息子、不動産社長の妻、建設会社専務の母の三人だ。ターゲットは、マスメディアで騒がれている兵庫県議会議員の回道正志。4月12日の選挙で再選したベテラン議員だが、黒い噂が立ち始めていた。
私もこのニュースは知っている。SNSでも騒々しいから、事件内容も確認出来ていた。
前町長は交通事故死だったが、事故加害者が『回道議員の秘書に頼まれた』と警察に告白している。自殺したとされる不動産社長は、回道議員が裏で手を回した可能性を匂わせる、自殺幇助ありと断定。建設会社専務の変死は他殺と断定、回道議員が関与している疑いで警察も捜査している。本人は否定しているものの、徐々に捜査網は狭まっているようだ。
そんな渦中、犠牲になった三人の家族が依頼してきた。
物的証拠がない現状では逮捕される可能性が低く、他に犠牲が出る前に処理して欲しい、との強い願いである。そしてこの依頼は、NSの指示により単独で遂行する。
私はすぐに納得した。相手は県議会議員であり、私は兵庫県民だ。接触することは容易である。定期的に街頭演説もあるし、後援会活動もある。その予定はWebサイトに記載されているのだから、直毘師が出てくるほどではない。
依頼人の話しを聞き、闇喰の説明と明日遂行することを伝えた。三人とも承諾し、ともに闇喰を行なう。すぐに愛車で神戸へと戻った。
翌日、姫路市民センターで行なわれる回道議員の講演を傍聴。終了すると、後援者や支持者が握手を求め、彼の周りに群がった。私は様子を見ながら、彼の乗るだろうハイヤーを確認、センター出口手前で待機した。
金魚の糞のように支持者を連れる彼が、徐々に出口へとやって来る。タイミングを見計らい、半歩前に出て、握手を求めた私。
「これからも頑張ってください」
作り笑顔の私の手を強く握り返す彼の手は、すでに汗でベトベト。
「ありがとうございます。応援よろしくお願いします」
政治家の満面の笑顔に、不愉快さをも感じた。
(偽善やろう)
その男がハイヤーで立ち去る前に、私はトイレへ。手を洗った。
依頼人三人の幽禍がなくなり、軽くなった身体とは反対に、心は鈍い。
(苦しんで死ね)
その想いは、注入した三人分の闇への指令に反映されている。数時間後には頭痛と吐き気、夜には幻覚と幻聴が襲い、三段階でその度合いをアップ。二日間苦しみ続け、そして心筋細胞の全停止を指示していた。
ブラックのRXに乗り込み、駐車場を出、帰路につこうとした。その時ふと頭に過ったものが、足を踏み込んだ。急ブレーキで、助手席のバッグが落ちる。
(命毘師……)
蘇生させられる可能性が高い、と考えた私。政治家ならそのコネクションがあってもおかしくない。支援している人も数多くいる。
意識を帰路から再びターゲットに。急発進させ、議員事務所へ向かった。
しかし事務所には戻っていない。一時間待ったが現れない。仕方なく電話し確認。会食後、そのまま帰宅するとのことだが、場所までは教えてもらえず。
毎度世話になっているネット2CHで検索。ネット炎上するような騒動の際、本人の写真や個人情報が第三者によって書き込まれることが多い。案の定、自宅らしき住所が記載されている。
一旦淡路の自宅に戻り、彼の尽命予定日、私はその住所を頼りに回道議員宅を張り込むことにした。
二日後の雨の夕方、昔ながらの住宅街にある回道議員宅を発見。周辺を探索し、近くの公園駐車場に停めた車内で待機。
今頃は病院で発狂している、と予想した私は一時間毎に黒傘を持ち徒歩で回道宅の様子を覗う。調達した三日分程度の食糧と数冊の小説本を準備している私は、のんびりと待った。
近隣住民に怪しまれ通報される可能性もあり、逃げ道として偽の名刺を準備してある。フリーライター、○○調査員、○○研究員など臨機応変に出せるように。当然、名前や住所、組織名等はデタラメだ。ただ一度も使ったことはない。今日も雨だからか、歩いている人は殆どいない、静閑な地域である。
深夜11時過ぎ、先ほどまで真っ暗だった回道宅に電灯と複数人の出入りする人影。彼が亡くなったことを察した。公園から回道宅が見える場所まで車を無灯移動、張り込む。約一時間後、三台の車が。家族らしき男女と複数の男に見守られ、四人で運ばれる白っぽく細長いものを確認出来た。
(さてと、来るかしら、命毘師)




