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(28)暴力団幹部を狙う男

湊耶都希は神戸出身の設定なのですが、中途半端な関西弁を使うと関西の方に怒られそうなので、標準語で書いてますf(^^; ご理解下さい。

 

 平成27年5月2日。


 対象者は、大阪泉州の指定暴力団組織五陸(いつおか)会系親泉(しんせん)組幹部、ナンバースリーと言われている40歳代の瀬良せら正輝まさてる。依頼人は、殉職した警察官の妻。特別捜査中に刺殺されたことへの、復讐。


 私の中で問題だったのは、その幹部にどのように近づくか、ということ。しかし解決出来た。

 警察官の妻だからといって、そこまで情報を持っているのか疑問もあったが、対象者の行動詳細を確認。運もあり5月2日に決行、結果的に成功した。



 三日前の4月29日、依頼人と面会。

 仲介屋より、対象者の立場を事前に仕入れていたため困惑していたが、さらなる情報を含め確認したかった。相手が相手だけに、普段より慎重にならざるを得ない。だが、


「また他の警官も殺られるかも。あの社会のゴミを早く消してください!」


 依頼人の強い希望もあり、急ぎで実行しなければならなかった。


 相手が暴力団幹部となると、攻め込むのは容易ではない。というより、私だって怖い。

 直毘師なおびし闇儡あんらいであれば、遠隔操作で遂行可能だが、今回はシングルでの活動になる。NSネスからの指令ではなく、祖父から引き継いだ大阪被害者支援の会で長年支援活動をしている、仲介屋からだ。

 伊豆海いずみようとのダブルスは出来ない。まして、最近距離を置いている伊武騎いぶきあおいとのコンビには抵抗がある。他の直毘師とコンビを組むことを考えていない私は、今回の依頼をシングルで実行することになる。


 依頼人から詳しい情報を入手出来たのは幸い。

 幹部のため、自宅にいる時以外は、舎弟が最低二人、通常は三人が同行している。移動は全て防弾ガラス張りのS500L。岸和田市を主拠点とした泉州が縄張り。自宅は和泉市内。事務所や自宅にいる時は、手も足も出ない。

 だからといって、スーパーやコンビニで買い物などするはずもない、と想像する。日常で接触出来る場面が出てこない。

 

 可能性として接触出来ると想定したのは、週数日不定期で通っているキャバクラ街、週二回のフィットネスクラブだ。

 ドラマのように、キャバ嬢に扮して近づくことなど、色気のない私には到底ムリ。インストラクターや客に扮してフィットネスクラブで接触するのも難儀のように思えた。それでも、このクラブで接触するほうが、まだまし、と判断。


 視察も含め、暴力団幹部ターゲットが通う時間直前に、私はトライアル客として申込み、潜入。対象者を待った。インストラクターの指導のもと汗を掻き始めた頃、写真で確認済みのあいつが来た。舎弟は一人のようだ。もう一人はビル一階の外で待機しているのだろう。


 手慣れた彼らは、器具を使い運動を始めた。シャワーを含め、大抵一時間で退室する、という情報。トライアルコースを終えた私は、早々にシャワーを浴び、資料を見る振りをしながら彼らをチェックする。

 そんな時、彼らとは別の人物に気付いた。上下ジャージ姿の若くもない男は、客として行動が相応しくなく、壁の陰から彼らを見ていたのだ。

 自動販売機へ行く降りをしながら、その男の様子を背側から観察。運動もしていないのに汗を搔き、緊張感を漂わせている様子。上下に揺らす足は、落ち着きを見せていない。さらに背の腰あたりに異様な盛り上がりを見つけた。


(財布? ……違う。もしかして……)


 男の視線先には彼らが、いる。


(こいつ、何か企んでる!?)


 その瞬間、ある策が脳をよぎる。寸刻して行動に移した。

 男の背から近づき、バッグ内に常備してある化粧ビンを、男の横腹に突き付けた。


「動かないで! 変な真似したらショック与えた後、警察呼ぶわよ」


 低音で囁く。男はビクッと硬直させたが、それ以外の動きを止めた。


「先に言っておくね。私はあなたの味方にでも敵にでもなれるってこと。あんただってここで暴れたら、目的を果たせなくなるでしょ。私の質問に素直に答えてくれればいいのよ。イエスなら首を縦に、ノーなら横に。いい?」


 首を縦に振る男に、少し安心した私は続ける。


「あそこにいる瀬良せらる気?」


 躊躇ためらっているようだ。


「大丈夫よ。あいつが死ねば喜ぶ人のほうが多いはずだから。正直に答えて」


 ゆっくりと縦に振った。


(やはり……)


「こんなところで殺ったら、間違いなく殺されるか、刑務所行きよ。覚悟出来てるの?」


 縦に振る。


「殺されてもいいの?」


 少し悩んだように遅れて、縦に振った。


「本当は死にたくない、って感じね」


 それに反応するように、身体をひねろうとする男に強く押し付ける。


「このスタンガン、効き目抜群よ」


 男は両手を軽く上げ、抵抗しないアピール。


「あんたが死んだら、悲しむ人いないの?」


 間を置いて、横に振る。


「大切な人がいるのね!?」


 力強く頷いた。


「分かったわ。……目的は一緒のようね。私が彼を殺るから心配しないで」


「それは困ります」


 


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