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状況開始、銃芸部!!  作者: 矢壱
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銃芸堂

 試合二週間前。日曜日の朝十一時、文人たち一年生部員七名は『銃芸堂じゅうげいどう』に来ていた。『銃芸堂』は銃芸専門の店で、ハンドガンやアサルトライフル、スナイパーライフルなどの装備の品揃えが良い事で緑制高校銃芸部の御用達となっている。


「こっちのアサルトライフルは持ちやすけど重い気がするな」

「悩む所だよねぇ。今日だけで自分に合うものが見つかるかなぁ」

 入部テストで使用した銃は基本的に部の備品なので、自分の専用銃が故障した時などの予備となっている。そのため、今日の買い物は各個人の専用銃の購入がメインとなっている。


「それにしても部長もいきなりよね。『明日みんなで自分に合った銃を買っといで』なんて」

「でも嬉しいじゃん。俺たちに銃を持たせても良いてことだろ? しかも部費である程度賄ってもらえるのはさすが伝統校だよな」

 緑制高校では一年生も確実な戦力として扱うため、銃が撃てるようになれば早々に専用の銃を持たせ慣れさせるのが基本となっている。


「俺はコレかな」

一時間近く悩んだ末に文人は、ディスプレイされている一つのアサルトライフルを手にして構える。重さはそれなりにあるが自分の手に良く馴染む物を選んだ。

「そう、偶然ね。アタシもその銃に決めてたのよ」

 いつの間にか横に立っていた麗華が文人と同じものを選択した。

「それ麗華には少し重くない?」

「そんなことないわよ」


 本人に否定されれば、それ以上言う事は無いので納得する。

 他の皆も値段や持ちやすさを比べながら気に入った銃の購入を決める。

 遠くの方からスナイパーライフルの入ったケースを両手で抱え、ふらふらと歩いてくる静も見える。静のポジションはスナイパーなので必要なのはハンドガンとスナイパーライフル。アサルトライフルを選ぶ文人たち六人とは別行動と取っていた。


 輪に加わった静は、自分の身長とあまり変わらないケースに床に置いて一息ついている。

「最後はハンドガンか。これも選ぶのに時間がかかりそうだ」

 買い物にあまり興味のない彼にとって、長時間の買い物でうんざりし始めていたので、ぼやかずにはいられない程の苦痛になりかけていた。

 しかし買わないわけにもいかず、、合流した静も一緒に目当ての物が置いてある棚に移動し、ディスプレイしてある銃を手に取る。

「さっき麗華ちゃんと話してたんだけど、ハンドガンは皆で一緒の銃にしない?」

 若干疲れた笑顔で喋る静。


 後ろから聞こえるそれに対し、文人は手の銃を見つめたまま疑問の声を上げる。

「でもそれじゃ自分に合ってる物が買えないよね。それってまずいんじゃない?」

「それなら同じメーカーの違う種類を買うのはどうでしょうか?」

 聞き覚えのない声の方に振り向くと、七人の後ろに女性店員が立っていた。顔立ちや雰囲気から高校生だと判断できる。

 ネームプレートには『佐々木智乃ささきともの』という名前と『研修中』の文字がある。


 アルバイトであろう彼女はセールストークを続ける。

「こちらのメーカーでしたら男性向けと女性向けとの両方がございますよ」

 二丁の銃をディスプレイ棚から取り、男性向けの銃を文人に、女性向けの銃を麗華に渡す。

 麗華は手の銃を弄びながら感触を確かめる。

「アタシはこれもアリだと思うわ」

そう言って静に渡す。


 静も同じようにして眺める。そのリレーを男女それぞれで行い判断する。

「じゃあ、このハンドガンを男女それぞれ人数分ください」

「お買い上げありがとうございまーす」

 丁寧なお辞儀をして彼女は在庫の確保のために倉庫に消えた。

「これで大方の買い物は終わりか」

 買い物から解放された文人は、大きく伸びをして身体をほぐす。

 暫くして戻ってきた女性店員からハンドガンを受け取りレジに並ぶ。

「ねぇ静、本当に宅配してもらわないでいいの? 自分で持って帰るには重いと思うんだけど」


 自分でライフルなどを持って帰ると言いう静を心配して、麗華が聞いたのだが彼女はにこやかに、

「さっき聞いたら宅配だと明日以降の到着なんだって。せっかく今日買ったんだから帰ったらすぐ触りたいじゃない?」

 そんなやり取りを終え、両手に大量の荷物を持って店を出る頃には十四時を回っていたのだった。


 赤川高校との試合が一週間後に迫ってく頃には、其々の専用銃の扱いにも慣れ全員が的に当たる様になっている。練習も射撃だけではなく、戦場での動き、状況の見極め方なども練習メニューに加わる。

 そしてもう一つ、赤川高校との試合において重要なことが麗華に任せられた。

「アタシが作戦を考えるんですか?」

「もちろん君一人でじゃないよ? 作戦を立てる為の基礎は勉強会で全員に理解してもらうけど、試合で使う作戦は君たちだけで立ててもらうの。その時に近屋さんにはまとめ役をやって欲しいのよ。ボクたちは会議に参加しないし、アドバイスもしないから作戦が完璧に出来上がった時に教えてね」

 麗華は拒否できない雰囲気を悟り、頷いて了承するが気になることを聞いてみる。


「試合当日は何処で戦うんですか? 地形がわからないと作戦の立てようがないんですけど……」

「そのことなら問題ないよ。今週の土曜日に見に行くからね」


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