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状況開始、銃芸部!!  作者: 矢壱
24/39

スタート

 つかの間の休日を終え学校に向かう。

 静の事も気になるが学業も疎かにはできない。気になりつつも本人から直接聞くまで授業に集中する。


 無事に帰りのホームルームも終わり、教室が放課後特有の緩い空気に変わる。

「さて行くか」

文人は席から立ち上がり教室を出る直前、目の前を通り過ぎようとする静と目が合う。

「これから部活行くでしょ? 麗華ちゃんも誘って一緒に行こうよ」

 麗華を迎えに行く途中らしい静に誘われる。


一学年にクラスはA~Eの五つ。A組には麗華。B組には文人。C組には静が在籍している。

「そうだね。麗華のクラスはまだホームルーム中みたいだから待つようかもね」

 二人はA組の教室の前で待つ。

「そうだ、これ良かったら食べてよ。手作りで悪いけど土曜日のお礼」

 ごそごそと静がカバンから取り出し手渡したのは、小さな袋に入ったクッキーだった。しかも、丁寧に可愛らしいリボンでラッピングも施されている。

「甘い物は大丈夫?」

「ありがとう。甘いもの好きだよ」

言って、文人はリボンを解きクッキーを一枚取り出して食べる。


口の中に広がるほのかな甘みと、オレンジの風味。見た目も丸や四角だけではなく、星型などもあり、店舗で販売していても不思議が無い程に完成されている。

「美味いよこれ」

 そう言ってポンポンと二枚三枚と消費していく。

「そこまで喜んでくれると作った甲斐があるよ。今度マフィン作ったら食べてくれる?」

「良いの? 家で甘いもの好きなのは俺だけでさ。肩身狭いんだよね」

 文人は会話の合間にも五枚目のクッキーを頬張る。

するとそこで、A組から椅子を引く音と号令が聞こえ、生徒が次々と廊下に出てくる。その中に麗華の姿も見えた。

 麗華は静と文人を見つけると歩み寄り、申し訳なさそうに眉を下げる。

「随分待たせちゃったわね。先に部室に行ってても良かったのよ?」

「大丈夫だよ。一人じゃ無かったし」

 ねっ、と文人に話しを振る静。

 頷きながら、最後のクッキーを食べ終えた文人は満足そうにしている。


「さっきから思ってたんだけど、何食べてるの?」

 麗華は不審そうに文人の手元を覗き込む。

「これだよ。良かったら食べて」

 文人と同じクッキーが入った袋を静が渡す。

「すごい美味いんだよコレ」

 美味しさを適当に伝える文人を横目で無視する。

「ありがとう。これ手作りよね、家でゆっくり頂くわ」

 クッキーが砕けてしまわない様にバックの中にそっと仕舞う。


そこで、文人は静に聞かなければいけない事を思い出す。

「ところで、入部の許可が下りた理由ってなんだったの?」

すると静も忘れていたのか、慌てて説明する。

「一昨日文人くんの家に泊めてもらう時、麗華ちゃんとの写真送ったのを覚えてる?」

 二人は黙って頷く。

「その写真が決め手になったみたい」

 中学生時代にあったと言う人間関係を両親が考慮し、入部に難色を示していたが、友人と写っている写真を見た事で安心感があったのだと言う。静の兄の援護もあり、入部に納得したのが事の顛末だった。


 文人と麗華もその話を聞いて安堵した表情になる。

「それじゃ部活に行きましょうか」

 麗華たち三人は、部室棟の階段を昇り三階の銃芸部の部室へと向かう。

 部室のドアを開けると、中には数十人の人数が集まっていて、一年生の姿もある。

「やっと来たね。これで本日は全員そろった」

 三人を確認したサクラが嬉しそうに微笑む。

「一年生は七人全員が入部だから嬉しいよ」

 立ち話が思いのほか影響したらしく、最後の登場となってしまっていた。

 三人は遅れた事を謝罪するが、サクラはそんなことはどうでもいいという素振りをする。


 彼らが部室に入ってきたのを確認したサクラが、一呼吸置いてから宣言する。

「今日からこの場にいる全員で一年間を頑張っていくよ!!」

それに続いて全員が、おー! と声を上げ、今年度の緑制高校銃芸部が始まった。


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