再度作戦会議
そして今は、今後の作戦を考える資料として全員の情報の統合をしている。
その結果わかった事は、リタイア者も含め戦闘不能は無し。被弾していたとしても、精々一~三発と戦闘不能を出さないように撃っていたことが判明した。
「つまり戦闘不能を出さなかったのは、この先も銃芸部では痛い思いをするだろうけど続けるの? っていうメッセージってこと?」
静が話のまとめを口にすると、麗華が頷く。
「それで間違いないでしょうね。実際には撃たれていない人たちも辞めたんだから、篩としては成功よね」
それともう三つ。と右の人さし指と中指と薬指を顔の前でピンと立て、話しを続ける。
「まず一つ、アタシたちの今の人数は七人、先輩たちは十人。さっきまで人数で保っていたのに、約四分の一までに減ってるわ。もし、部長を倒すのが合格条件なら、ほぼ合格不可能な人数差よ」
続けて、
「二つ、三十分も時間をくれるのに、クリアできない条件をそのままにしておくなんて不思議でしょう? だから部長を倒す=合格は限りなく無いに近いわ」
何となく理解して頷く一同をよそに三つ目を話す。
「三つ、そもそも終了条件のクリアによる合格っていうのが間違ってると思うの」
これには全員が驚きの表情を向ける。
「アタシたちが何かを判断する側では無く、判断される側である以上いくら推理を広げても意味がない。全員が何かしらの働きを見せて終了を迎えれば良いと考えているの」
だから、と前置きし、
「終わらせることに専念した方が賢明だと思っているわ」
猛とは真逆の説を唱える麗華に説得力があったのか、あっさりと皆が受け入れた。
その後はどの方法を持って終了させるのかに話が向く。
当 然一番有力な方法は、時間制限まで耐えるのが良いのではないかという事なのだが、浮かれない表情が並ぶ。理由は全員同じだろうが誰も触れない。
完膚なきまでに負かされ、敗走しかしていない自分たちが、何もしないという終了方法を選びたくない思いが募る。
しかし、再度同じ目的を立てたところで勝ち目はないだろう。その事を悟っているからこそ誰もが堪えようとしていたのだが、文人が深く息を吸い、一言。
「それは、ちょっと待ってくれないかな。俺は作戦とか考えられないから、代案とかは出せないけど負かされっぱなしは性に会わないんだ。何とかならないかな」
頼む、と頭を深々と下げる文人に合わせるように次々と頭を下げる。
それを見た麗華は、額を右手の甲で二度三度叩きながらため息を一つ吐く。
「やっぱりそうなるわよね。でも今度は逃げられないし、全滅する可能性があるけどそれでもやる?」
六人の首肯を見た麗華は再びため息を吐くが、
「合格の可能性を増やすってことで、部長を倒す事も作戦に入れましょう」
その一言で全員の気持ちが一つに繋がった。
「皆で勝ちにいきましょう。作戦の方は考えがあるから問題ないわ」
笑みを浮かべる麗華。
刹那、激しくなる雨音と共に光と音が炸裂する。
「うわ! びっくりしたぁ。今の雷何処かに落ちたかな」
驚いて身をすくませていた静が窓の方へ近寄る。窓越しに外の様子を見ていた彼女の視線は右下のある一点で止まった。
「ねぇ、あれさ」
誰に話しかけるでもなくつぶやいた。
声に寄せられるように他の六人も窓辺に近寄り、静の視線の先に注目する。
そこには部室棟から出てくる数人の人影があった。窓に当たる雨が邪魔ではっきりとは確認できないが、今日は部室棟には銃芸部に関係する人間しか立ち入れないので、間違いなく先程リタイアした彼らだと確信する。
「後悔しないのかな。高校生になったら銃芸部に入って、楽しい高校生活を送ろうと思ってたんじゃないのかな」
下に開く複数の傘に話しかけるようなその静のセリフに麗華が答える。
「自分で選んだ結論とはいえ、後悔はあるんじゃないかしら。でも、銃芸部では楽しい高校生活は実現できそうにないから辞めたのよ。誰が悪いわけでもないわ」
言って静の肩を軽くたたき、机の方へと戻る。
静たちも彼らが校門をくぐるのを見届けてから机へと戻る。
机を囲む七人の中でまず話しを切り出したのは麗華だった。
「私たちは自分の意志でここに残ることを選択したけど、負ければ帰るしか残されて無いんだから必死で足掻きましょう」
口端を持ち上げ、それだけ言うと真剣な表情と話しに切り替える。




