入部テスト開始
次のB班は、希望者が次々と手を上げて、その中には静の手もあった。
しかし、その手はすぐに沈む。静は自分の右腕を強引に下ろさせた張本人を目を瞬かせながら見つめる。
「ごめんなさい。知り合いが隣にいてくれた方が安心できるから、一緒にA班に来てくれないかしら。……それに嫌な予感もするのよ」
麗華は小さくそう言いながら、やさしく静の右手を放す。
当然、麗華の右側にいる文人にもそれは聞こえ、静の返答より先に気がかりな事を聞く。
「なぁ、俺はA班で大丈夫なの? 麗華的には嫌な予感するんだよね?」
「アタシたち三人がこの部屋に籠っていたら正確な情報が入りにくいでしょ? 文人の運動能力があれば生き残れるし、それにC班は二人までよ」
文人の武道などに対する直感力と反射神経を知る麗華は、文人がA班に行っても生き残れると踏んであえて黙っていた。
二人の掛け合いを軽く見上げる形で聞いていた静は、取りあえず自分に向けられた質問に答える。
「私は麗華ちゃんのカンを信じて付いて行くよ」
左手で小さく拳を握り気合を入れ、子犬のような微笑みを溢れさせる。
文人も自分の役割に諦めがついたのか麗華を信じることにした。
そして無事に麗華と静はC班に決まり、全員が各班に割り振られた。
その後は全体の流れ、各班での自分の行動の最終確認をし終えたところでテスト開始時間が迫る。
そこに突然、室内にノイズ音が走りスピーカーから女性の声が響く。
『銃芸部顧問の野坂だ。テスト開始五分前だ。覚悟は良いな? 校舎と備品は壊すなよ。後で怒られるのは私なんだからな』
絶対に嫌だからな、と念が押される。
姿が見えないにもかかわらず、それがひしひしと伝わってくる。
そして、ため息を一つしてから気だるげな声で、再度ルールなどを読み上げていく。
一年生たちは各々、放送に耳を傾けたり、複数人で会話をして緊張を和らげようとする、事に時間を消費していく。
麗華・静・文人の三人は集まり、雑談を始めていた。
「これで撃たれたらホントに痛いのかな。テレビではそんなに痛そうに見えなかったけど」
言いながら静は自分の首に付けているチョーカーを指でなでる。
「確かにそうね。上級者ともなれば痛みに慣れてくるのかしら」
麗華も同じ様に自分の首をなでる。
そこに文人が腕を組みながら自分の考えを告げる。
「痛いのを我慢してるんじゃない? 痛さより状況を把握したりする方が重要だと思うし」
その言葉を聞いた麗華は機嫌の良い口調で言う。
「じゃあ、文人も一、二発の銃弾が当たっても、挫けないで私たちに状況を教えて頂戴ね」
当然文人は上級者ではない。彼女もわかっているのに、それを平然と言う麗華を半目で見つめる文人。
自分に話が回ってこないようにワザとらしくそっぽを向き、会話に参加してこない静。
スピーカーからはルール説明を終え、開始時間が三分を切った事を告げる顧問の 声が聞こえる。
全員が緊張し、声のする方へと視線を向ける。
『泣こうが、どうしようがこのテストは一回しか行われない。ベストを尽くして戦え。開始カウントは十秒前から始めるぞ。それまでに気合を入れとけ』
猛は戦闘直前、最後の檄を飛ばす。
「テストは個人ではなくチームとしての挑戦だ。信頼と連携があれば必ず合格できる。だから自分の役目をきっちり守ってくれ」
真剣な眼差しで全員を見渡す。
それを合図に、A班の五人はドアに近い位置に集まり、その後ろにB班が待機する。C班の二人は、麗華が校内地図を見て状況を把握する役として中央の机を陣取り、静は無線からの報告をホワイトボードに書き起こすサポート役をこなす為、窓際のホワイトボード前を陣取ってマーカーで【十一時:テスト開始】と書いている。
時刻は十一時を十秒前に迎える。
『カウントを始めるぞ。一〇・九・八・七・六・五』
放送の声だけが室内を埋める。
『四・三・二・一』
『入部テスト開始!』




