2-[3] 魔王、招待。
じゃなくて、話を思いっきりずらしてしまったではないか。真琴はいま、自分が持ってきたと言い張るイスに座っている。そのときはあいつは何も飲まない。飲むとしても購買で買ったであろうジュースをちびちびと飲むだけだ。
なのに、今日はまたどこからか持ってきたかわからない陶器製のティーカップが机の上に乗っていた。しかも、イスが一つ増えていた。
「あれ?」俺は思わず呟いて、あたりを見渡す。「どうした?」真琴の声がすぐにかえる。
「いや、イスが増えてるから・・・・・・」
「ああ」無機質に答え、「新しく図書委員になった子。お茶汲みしてもらってる」
どうやら今日の調子はいいらしい。真琴の調子がひどいときなんか常に怒っていて、話すのもきつい状態なのだ。
「・・・・・・もしかして、強制?」
「何言ってるのよ。普通に帰ろうとしていたところを”丁寧に”ここまでお連れしただけよ?」
「おまえそれを強制って言うんだよ!!」
「なによー。ムカムカして。こっちまでイライラしてくる」
おっと、これはまずい。おれは地雷をギリギリ踏みそうなところまで来ていたようだ。俺は急いで地雷原から逃げるために、いつもの席――真琴の隣に座ることにした。
「んで? 呼んだ理由ってなんだ? また『探索』か?」
「ええ! 当たり前じゃない! これが図書委員会の日課ってものでしょう?」
いや、図書委員会って外歩くんかい。活動内容に全く書いてないだろそんなこと。と心の中で突っ込んでおいて、
「じゃあ、行くわよ!!」今日のテンションはいい方らしい。ウキウキとエアロスミスの『I Don't Want To Miss A Thing』を口ずさみながら、外へ出ていった。




