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ダイナマイト転生。またやらかした!?〜今日も爆発は止まらない〜  作者: 田舎浪漫


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第九話「千年先も」

「ダイナマイトよりヤベーの作っちまったじゃねーかー!!!」


叫んだ俺は、谷に木霊する自分の声を聞きながら、深呼吸を三回した。


気を取り直せ。今は取り乱している場合じゃない。


俺は振り返り、呆然としている村人たちと女王に向かって、努めて落ち着いた顔を作った。


「さっ……ということで、ご覧いただきましたのが私が開発した兵器になります。まあ、少し調整も必要ですが……女王様、ご決断を」


「アル、ちょーっと待て」


ヒール持ちのエルフに癒してもらったグリーンウッドさんが、杖をつきながら前に出てきた。目はまだ充血しているが、口元は引き締まっている。


「その前に、説明をするんじゃ」


えー……分かるかな。グリーンウッドさん、頭が硬そうだしな。


「……材料は三つです」


俺は指を折りながら、できる限り簡単な言葉を選んだ。


「硝石と、硫黄と、動物の油。硝石は、馬小屋の土を錬金術できれいにするとできる、白い粉。硫黄は、臭い岩から錬金術で取り出す、黄色い粉。動物の油は、獣の脂を錬金術で透きとおった油にしたもの。この三つを、間違えないように錬金術で混ぜると、特別な薬ができるんです。それがニトログリセリン。あ——これ、超危険なんで気を付けてください。後は錬金術で作った特別なガラス玉に入れて、できあがったのがニトロオーブで……す」


話し終わると同時に周りを見渡した。


グリーンウッドさんをはじめ、全員が口をぽかんと開けて俺を見ている。


「え……えーと? やっぱり難しかったですか?」


「アル」


グリーンウッドさんが、静かな声で言った。


「……そういうことじゃない」


「え?」


「儂が聞いたのはな、なぜお前がこれを作れるのか、じゃよ」


グリーンウッドさんの目が、真剣な光を宿して俺を見つめてくる。


「数日前まで、平凡で冴えない奴じゃったお前が。なぜこれを作れたのか。それを聞いているんじゃよ」


あっ、そっち!?


それならそう言ってくれないと。かなり危険なレシピをぜんぶ口に出してしまったじゃないか。


しかし……どうしよう。転生者のことを言うべきか。


俺が黙って考えていると、隣にいたマリーがするすると紙にメモを書き、俺に差し出してきた。


『閻魔大王様もオシリス様も神様ですわ。神様にスキルを頂いたとおっしゃれば宜しいのでは?』


……確かに。嘘でもない。


俺はメモをそっとしまい、顔を上げた。


「あー、それを説明する前に、聞いてください。紹介したい二人がいます」


俺が手で示すと、マリーとジュディのパペットが、すっと前に出た。


村人たちがざわめく。


「こちらは、神様の眷属のマリーと、ジュディです。二人のおかげで材料が集まり、神様から頂いたスキルで兵器を作ることができました」


グリーンウッドさんは、しばらく沈黙していた。そして、みるみる顔が青くなっていく。


「……神様の眷属?わわわ、わし、か、神様の眷属様に…墓守りをさ、させてた!?て、天罰が……」


グリーンウッドさんの視線がマリーに向いた。


マリーがサムズアップをして―――親指を下に向けた。グリーンウッドさんは気絶した。


『あの方、面白いですわ』


メモを見て、一度マリーと話し合う必要があることを俺は悟った。


「分かりました」


唐突に女王が口を開いた。鋭い視線で俺たちを見ている。


「帝国への出撃を、認めましょう。エルフに手を出したことの罪深さを教えてやりなさい」


広場に、わっーと歓声が上がった。


その後村に戻り、俺はグリーンウッドさんに頼んで、村人を広場に集めてもらった。


「材料集めを手伝って下さい。馬小屋の土、臭い岩、獣の脂。できるだけ多く集めて欲しいんです」


村人たちが、それぞれの持ち場へ走り出した。猟師は獣の脂を、鉱夫は鉱山へ、農家は馬小屋の土をかき集め始める。子供たちまで桶を抱えて走っていた。


「アル」


グリーンウッドさんが小声で言った。


「……本当に勝てるか?」


俺は答えた。


「勝てます」


それから俺は、広場で材料が届くたびに、スキルを使い兵器を量産した。


気がつくと―――うん、作りすぎたな。


ニトロオーブ(標準型)が千個。


ニトロオーブ・ヘヴィは二百個。


ニトロオーブ・チェインは二百個。


ニトロアロー(標準型)が三千個。


ニトロアロー・ピアス(貫通型)が千個。


ニトロアロー・チェイン(拡散型)が千個。


移動式カタパルト10基はジュディに作ってもらった。


そのジュディは、村人たちから『世界樹様』と祀られている。ジュディのムダにデカい本体が森に住むエルフには神聖に映った。さらに村全体を覆う認識阻害の結界がそれに拍車をかけた。


「世界樹様が、この村を守ってくださっておる……!」


その言葉が広がるのに、時間はかからなかった。


気がつけば、世界樹を拝む村人が増えていた。


その光景を見ている、マリーがメモを書く。


『私との差は何ですの?前世以上に恐れられているのですが……』


マリーもスキルで村の防衛に一役買っている。ただその方法が村人の恐怖心を煽るのだが。


村の周囲にスケルトンとレイスを各200体も配置したら―――うん、そうなるよね。


ただ、そんなマリーのことを拝んでくれる人もいることは救いだなと思う。


グリーンウッドさんだけど。


それから三日間。


俺はエルフの戦士たちに、ニトロオーブの使い方と危険度を、丁寧に、しつこいくらい説明した。


一日目は、理論。どういう仕組みで爆発するか。


二日目は、実技。投げ方、タイミング、距離の取り方。


三日目は、作戦会議。帝国の布陣を想定し、どう動くか。


三日間で、戦士たちは見る見る変わっていった。最初は「ガラス玉ひとつで家が吹き飛ぶ」という事実に怯えていた者たちが、三日目には落ち着いた目で「どこに投げれば最も効果的か」を俺に質問してくるようになっていた。


そして、出発前夜。


俺は村の外れで、一人、星を見て考えていた。


この三日間。俺は帝国を攻めるための兵器を大量に作った。


前世の記憶が、じわりと滲んでくる。ダイナマイトを作った日のこと。世界中で、俺の発明が使われていくのを聞いていた日々のことを。


そして―――1888年 パリで読んだ新聞。


アルフレッド・ノーベル『死の商人、死す』


これを読んだ時、俺は一冊の本を思い出した。


俺はそれを何度も、何度も読み返した。


フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキーの『罪と罰』を。


千年先も俺は答えを出せないだろうな。


『人は、目的のために罪を犯してよいのか』


今もそうだ。俺はまた、作ってしまった。今度は自ら使うために。


『罰は、すでに始まっている』


それでも――――


「………ロザリー。待っててくれ」







名前:フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー

別名:魂の解剖者/苦悩の文学者

生没年:1821年 − 1881年(享年59)

出身:ロシア

職業:小説家

文学的深度:★★★★★

人間の罪、苦悩、救済を極限まで掘り下げた、世界文学史上最高の心理描写を持つ作家。

苦難耐性:★★★★★

死刑宣告と土壇場での恩赦、シベリア流刑、てんかん、賭博依存、貧困。それでも書き続けた。

影響力:★★★★★

フロイト、ニーチェ、カフカ、カミュ。後世の思想家・作家たちが最も影響を受けた作家の一人。

同時代性:★★★★★

ノーベルが生きた時代と、ほぼ重なる。

特殊スキル(作品):

「罪と罰」(1866年)

『人は、目的のために罪を犯してよいのか』

主人公ラスコーリニコフは、自らを選ばれた人間と信じ、罪を犯す。しかし罰は法ではなく、すでに自分の内側から始まっていた……


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