第八話「よりヤベーの」
ど――ん!!
耳をつんざく轟音が村中に響き渡った。
地面がびりびりと震え、土煙が空へと舞い上がった。
そこにあったはずの建物は跡形もなく消えた。ついさっきまで建っていた、グリーンウッドさんの家が。
「……わ、わ、わ、わしの家が……ローンが200年も残っておるのに……」
グリーンウッドさんが、膝から崩れ落ちた。
……うん、ごめんなさい。でも、言い出したのはグリーンウッドさん、あなたです。
――――――――――――――――――――
10分程前。
広場には、すでに多くのエルフが集まっていた。
村人、長老衆、そして中央には、この村の代表である女王が立っている。
もっとも「女王」とはいっても、実質は村長のような存在らしい。
長老たちも、議会の議員のような立ち位置だ。
帝国の人さらいが発覚し、ピリついた空気の中、俺は一歩前に出た。
「ロザリーが帝国にさらわれました。4人の同胞の身代わりになって」
ざわめきが広がる。帝国。その名は、この森にとって災厄と同じ意味を持っている。
「俺は助けに行きます」
誰も口を開かず、広場は静まり返るが俺は続けた。
「ただ助けるだけじゃありません。――帝国に思い知らせます!」
俺は顔を上げ、拳を握りしめ、全員を見渡した。
「エルフに手を出したら、どうなるかを。その為の力を持ってきました」
空気が張り詰め、女王がじっと俺を見て、やがて小さく息を吐いた。
「……面白い。ならば、その力を見せてみなさい」
その声は静かだったが、よく通った。
その時、グリーンウッドさんが前に出てきた。
「女王様、わしの家には強固な結界が張ってあります。そこへ向けて、やってもらいましょう」
「グリーンウッドさん。やめたほうが………」
「なんだ、アル。やっぱり自信が無いのか?」
このグリーンウッドさんのこの一言がいけなかった。
俺の導火線に火を着けたのだ。
俺はパペット姿のジュディにニトロオーブを一つ渡した。
「ニトロオーブがうっすら…いや強く光るまで魔力を注いでから投げてくれ。威力が数倍増しになる」
ああ、俺は投げない。何故なら運動は得意としないから。
間違いなく明後日の方向に飛び大惨事になるからだ。
そしてジュディがアルバート・グッドウィル・スポルディング顔負けの投球をした。
それが――さっきの「どーん」だ。
広場には、重たい沈黙が落ちていた。
誰も言葉を発さない。いや、発せない。
家があった場所には、巨大な穴だけが残った。
「……今のが、基本型です(魔力込めすぎたけど)」
俺は小声でボソッとつぶやき、手の中の、小さなガラス玉――ニトロオーブを皆に見せた。
しかし、一瞬の出来事のせいか、説明もせずに投げたからか、皆反応が薄い。
女王にいたっては、
「わ、妾の魔法のほうがす、凄いわ」
と頬をピクピクさせながら強がりを言う始末だ。
まだ誰もこのニトロオーブの本質を理解していない。
「……場所を変えましょう」
皆で、村の南にある谷へやって来た。
谷の向こう側に見えるのは、凶悪な魔物が跋扈する死の森。
今も俺たちの匂いに気づいた魔物が、森から続々と顔を出してきている。
だが、この谷は底が見えない。
向こう側まで50メートルほどの幅があり、天然の要塞として俺たちを守っている。
「弓に自信がある人、いますか?」
村の戦士三人が手を挙げた。
俺はそれぞれに――
ニトロアロー(標準型)、ニトロアロー・ピアス(貫通型)、ニトロアロー・チェイン(拡散型)を渡した。
三人が同時に矢を放つ。
標準型はオークに着弾し、爆ぜた。
……汚い花火だ。
貫通型は、谷を飛ぶワイバーンに狙いを定めた。
矢は硬い装甲を持つワイバーンを貫き――内部から爆発した。
拡散型はフォレストウルフの群れに飛んで行き……
空中で弾頭が分裂した。
そして――連鎖して爆発する。
周囲10メートル四方が、更地になった。
あ然としている村人を横目に、俺はジュディに合図を出した。
ジュディは、俺が渡した図面を元に移動式カタパルトを作り、押して来てくれていた。
分身体のパペットを精巧に作れるジュディなら出来ると思ったが――頼んで正解だったな。
これなら、500メートル先の目標物まで余裕で飛ばせるだろう。
ジュディは、魔力を限界まで注いだのであろう光り輝くニトロオーブ・ヘヴィを、カタパルトにセットする。
……うん!?
「ちょっ、ジュディちょっと待て!!」
俺の言葉は届かない。
ジュディが――発射した。
「みんな伏せろー!!
耳を手でふさげー!!
目を閉じろー!!
ジュディ、結界をはれー!!」
俺が必死に叫び、体を伏せて耳をふさぐと、村人たちも危機が伝わったのか、一斉に伏せた。
その直後―――
ドゴ――――ン!!
塞いだ手を超えて響く爆発音。
瞼越しでもわかる強烈な閃光。
そして――凄まじい爆風。
体が後ろへ吹き飛ばされた。
「みんな無事か!?」
慌てて起き上がり、辺りを見渡す。
村人たちもヨロヨロと立ち上がっていた。
とりあえず――皆、無事で良かった。
「目が〜目が〜」
後ろから声がして振り向くと、グリーンウッドさんが両目を手で覆っている。
――皆無事で良かった。
そして俺は、谷の向こう側を見た。
そこには――
一キロメートル四方の、更地が広がっていた。
鑑定では、50メートル四方を吹き飛ばすはずのニトロオーブ・ヘヴィだったのだが……。
魔力を込めすぎて、大惨事になっている。
俺は目を閉じる。
大きく、深く――深呼吸をする。
そして―――――
「ダイナマイトよりヤベーの作っちまったじゃねーかー!!!」
叫んだ。
俺の叫びは、谷に虚しく木霊した。
名前:アルバート・グッドウィル・スポルディング
別名:野球商人/近代野球の開拓者
生没年:1850年〜1915年
役職:プロ野球選手/実業家/野球普及者
投球力:★★★★★
現役時代は名投手として活躍し、多くの試合で勝利を収めた実力派。
経営力:★★★★★
スポーツ用品会社 スポルディング を創業し、世界的ブランドへと成長させた。
影響力:★★★★★
野球のルール整備や普及活動に関わり、近代野球の発展に大きく貢献。
先見性:★★★★☆
スポーツが巨大産業になる未来を早くから見据えていた先駆者。
普及力:★★★★★
海外遠征やイベントを通じ、野球をアメリカ国外にも広めた。
特殊スキル:
「完全試合級の投球」
選手時代、圧倒的な安定感で試合を支配。
チーム全体の勝率を底上げする能力を持つ。




