第七話「ダイナマイトなのかもな」
『ヒャッハー』
俺とマリーは今、爆走するジュディの枝に抱えられロザリーと別れた所に向かっている。
オシリアさんにロザリーがさらわれたことを聞いて、慌てて走り出そうとした俺を『私に任せなさい』とジュディが運んでくれているのだ。
ジュディの力なのか森の木々は道を作るようにジュディを避けていく。そこを時速80kmほどのスピードで駆ける巨木。
目的の場所にあっという間に辿り着き、地面に降りた俺は――盛大にゲボった。
『こっちに』
マリーがメモを見せて来て、付いていくとまだ乾いていない血の跡。焚き火の後もある。
「ロザリー、ロザリー!!」
俺は叫ぶように、名前を連呼し辺りを見渡した。馬車の轍を見つけ走り去ったであろう方向に向かう。すると、木陰から4人のエルフが姿を見せた。
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ロザリー視点
私は、このままオルドヴィア帝国に乗り込もうと思ったが――先に囚われていた4人は酷く衰弱している。先に解放するか。自分を縛る縄を魔法で燃やし、4人の縄も解く。
「おい、お前何してるんだ!」
部隊長の豚が騒ぎ出した。他の兵も牢の馬車を囲み剣を向けてくる。
「ぎゃあああ」
私は豚に向かって光の魔法を放つ。右手が吹き飛んだ。
「うるさいぞ。さぁこれで私の力は分かったはずだ。私に素直に従うほうが合理的だと思うがどうする?」
4人を解放させ、私はオルドヴィア帝国に向かうのだった。
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アル視点
エルフたちは、俺を見るなり泣き崩れた。
「ロザリンドさんが……私たちを逃がしてくれて……」
「あの人が帝国の奴らを引き受けてくれたんだ……」
話を聞くと、ロザリーは自分から捕まり、4人に逃げろと指示を出したらしい。
「……マリー、ジュディ。一度村に戻る」
マリーが心配そうにメモを差し出した。
『今すぐ追わなくていいの?』
「追っても俺一人じゃ何もできない。まずは4人を送り届ける。その後は―――」
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4人のエルフを村へ送り届けた俺は、そのままグリーンウッドさんの元へ急いだ。
「グリーンウッドさん、ロザリーが帝国にさらわれたんです。救出に人手を貸してください!」
息を切らしながら訴えると、グリーンウッドさんは静かに目を伏せた。
「アル……気持ちは分かる。じゃがな、儂らエルフで戦える者は百もおらん。帝国は万を超える兵を持つ大国じゃ。無謀じゃよ。女王も許さんじゃろう」
そんなことは、分かっている。それでも引き下がるわけにはいかない。
「策があります」
俺ははっきりと言った。
「俺が準備をします。半日後、女王様と村人を広場に集めてください」
グリーンウッドさんは驚いたように目を見開いたが、やがて小さく頷いた。
「……分かった」
その言葉を聞き、俺は踵を返した。向かう先はロザリーの家。爆発して吹き飛んだ、あの家だ。
マリーに聞いた話では、地下に研究用の素材を保管した倉庫があるらしい。
家の残骸をかき分け、瓦礫を押しのける。
やがて、半ば埋もれた地下への入り口を見つけた。扉を開けて中へ入る。
――広い。とてつもなく広い空間だった。空間魔法が使われているのか、地下とは思えないほどの広さがある。
棚には、鉱石、薬草、瓶に詰められた薬品、あらゆる素材が、整然と並べられていた。
そして俺は見つけた。目的の物を。
「……あった」
硝石だ。大量の硝石が、木箱に詰められて保管されている。俺はそれを、必死に地上へ運び出した。
マリーとジュディにも材料集めを頼んでいた。俺が地上へ硝石を運び終わると同時にマリーが戻ってきた。樽に入った油を、宙に浮かせながら。
続いてジュディも戻ってくる。ジュディが引く荷車には硫黄と珪砂が乗っている。
ちなみにジュディは体が大きすぎて目立つ。村には入れないと伝えると、枝を一本折り取り何かのスキルを使った。すると、ピノキオのような木製のパペット人形が、その場に現れた。どうやら意識を飛ばして操作できるらしい。荷車も同様に作っていた。
……便利すぎる。
「よし……材料は揃った」
俺は深く息を吸った。そして呟く。
「創るぞ。―――」
材料を並べる。頭の奥に、知識が流れ込んでくる。オシリスさんから貰ったスキルが、反応している。
「スキル【錬金化学・極】錬成」
光が走る。
「スキル【錬金化学・極】合成」
まばゆい光が辺りを包み込み――やがて、光が消えた。
そこにあったのは手の平サイズの、ガラス玉だった。
俺はそれを手に取った。
「スキル【錬金化学・極】鑑定」
■ニトロオーブ
分類:投擲爆裂具
サイズ:直径 約5〜6cm
威力:中(半径3〜5m)
使用方法:手投げ。衝撃で即時起爆
特徴:
扱いやすさと威力のバランスに優れた基本型。携行性が高く、個人戦闘に適する。
俺が作ったのはニトログリセリン。それを兵器にしたものだ。前世では、珪藻土と組み合わせて安定化させていた危険物のダイナマイト。
だが、この世界では違う。スキルを使えば、高純度で、より安定した形で作れる。そのレシピが、頭の中に浮かび上がっていた。
そして俺は止まらなかった。一つでは足りない。
もっとだ。もっと作る。さらに、数種類の兵器(威力重視型、広範囲殲滅型、地雷型、弓矢型)も作った。
……気がつけば、俺の周囲には、前世なら街一つを壊滅させれるほどの無数の兵器が並んでいた。
オシリスさんの言葉を思い出す。
『技術が人を殺すのであれば、それは技術そのものの罪か、あるいはそれを使う人間の罪か』
答えは分からない。でも―――ロザリーを助ける為なら、その罪を背負うことに躊躇いは無い。
それにしても不思議だ。前世であんなに悩んだことが、昨日今日出会ったばかりのロザリーと結婚して、悩みが吹っ飛ぶんだから。
「ロザリーは俺にとって――ダイナマイトなのかもな」
肩をトントンとされメモを渡される。
『アル、意味がわからないわ。それよりも早く村の広場に行きましょう』
俺の思考が声に出ていたらしい。マリーがメモで突っ込んでくる。めっちゃ恥ずい。俺も意味が分からんし。顔を真っ赤に染めて、俺は広場へ向かった。
名前:ダイナマイト
別名:制御された爆薬
開発年:1867年
開発者:アルフレッド・ノーベル
種別:爆発物/工業用兵器
破壊力:★★★★★
強力な爆発力を持ち、岩盤や建造物を一瞬で粉砕する。
制御性:★★★★☆
導火線により爆発のタイミングを調整可能。従来の爆薬より扱いやすい。
危険度:★★★★★
扱いを誤れば使用者ごと消し飛ぶ極めて危険な存在。
汎用性:★★★★☆
鉱山、土木工事、戦争など多用途に使用される。
影響力:★★★★★
近代工業と戦争の形を大きく変えた革命的発明。
特殊スキル:
「連鎖爆発」
複数設置した場合、爆発が次々と誘発され威力が増幅する。
「地形破壊」
壁・岩盤・障害物などを消滅させ、新たな通路を作り出す。




