最後に奏でる静かな旋律
真っ白な静寂の中で、俺は目覚めた。
「……う……あ……」
心臓が、痛い。……いや、熱い。
赤いシールドは消え失せ、俺の胸には何も刺さっていなかった。
俺は、生きている。
「奏様……! 奏様!!」
泣き叫ぶ声がして、抱きしめられた。リフレインだ。彼女は俺の無事を確認すると、俺の胸に顔を埋めて、子供のように泣きじゃくった。
「うわぁぁぁん! バカ! 本当のバカ! 二度と……二度とあんなこと、しないでください……!」
「ごめん、リフレイン……。でも、お前が無事でよかった」
俺は彼女の背中を優しく撫でた。
指先の痛みも、胸の苦しみも消えていた。ただ、今まであった「傲慢な誰かの気配」だけが、この胸の奥底で、静かに、本当に静かに眠っているような気がした。
数ヶ月後。
街の呪いは解け、再び人々が楽器を奏でる音が戻ってきた。
俺とリフレインは、丘の上に立って、街を見下ろしていた。
「奏、ギター。……弾いてくれませんか?」
「え? 俺のギター、ボロボロだぞ」
テレキャスターは、あの時の戦いで弦がすべて切れ、ボディもひび割れていた。
「いいえ。……奏の音なら、きっと」
リフレインに促され、俺はギターを抱えた。
切れかかった弦を一本だけ弾く。
――ポォォォォン……
それは、とても優しくて、温かい音だった。
ゼノのような力強さはない。けれど、俺の心に眠るゼノが、その音を聴いているような気がした。
「……あ。リフレイン、見てくれ」
俺の奏でた音が、崩れかけた噴水の水を、空へ向かって美しく舞い上げさせた。
俺は創造の力を、本当の力を見つけたんだ。
「……綺麗です。本当に」
リフレインが笑う。
俺の心の中で、ゼノがフッと笑った気がした。
「……よし、二人で新しい曲、作ろうか」
俺たちは、新しい旅へ出る。
それは壊すための旅じゃない。何かを奏でるための、静かで、優しい旅だ。
俺たち二人の、新しい音楽が始まる。
エピローグ
奏の心の中で眠るゼノは、二度と目覚めることはない。
けれど、奏が本当に大切な人を守る時、その温かいノイズは、奏のメロディをそっと支え続ける。
完。




