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内山、部活やめるってよ  作者: 北塚欅
4/5

野村大志

内山が剣道部辞めたって話、マジかよ。

昼休み、購買でカレーパン買ってたら、隣のクラスの奴が話してんのが聞こえた。

「内山くんって剣道部辞めたらしいよ」

「え、マジ?」

「うん、昨日先生に言ったって」

内山。

久しぶりに聞く名前だった。

っていうか、最近あいつと喋ってねえな。

中2のときは同じクラスで、しょっちゅうつるんでたのに。

中3になってクラス離れて、しかもあいつ剣道部入って。

それから、なんか疎遠になっちまった。

教室に戻りながら、スマホでLINE開く。

内山とのトーク画面。

最後のやりとり、いつだっけ。

スクロールすると、去年の12月だった。

「大野、明日パソコン部来んの?」

「行かねー。サボる」

「マジか。じゃあ俺も休もうかな」

「やめとけ。お前真面目だから後で後悔すんだろ」

「うるせえw」

そんな会話。

懐かしい。

あの頃、内山とはよくつるんでた。

中2の4月。俺と内山、同じクラスになった。

席が近くて、なんとなく話すようになった。

最初は普通の会話。

「昨日のテスト、どうだった?」

「まあまあ」

「俺、マジでやばい」

「勉強しろよ」

「無理ー」

そんな感じ。


でも、ある日、内山が俺に話しかけてきた。

「野村、パソコンとか詳しい?」

「んー、まあまあ。なんで?」

「パソコン部入ろうかなって思って。一緒に見学行かない?」

「え、俺も?」

「うん。一人だと不安だから」

内山、そういうとこあった。一人だと不安、みたいな。

でも憎めない感じで。

「いいけど。てか、お前パソコン興味あんの?」

「最近、プログラミングとかやってみたくてさ」

「へー。意外」

「意外?」

「だってお前、本ばっか読んでるイメージだし」

「まあ、本も好きだけど。他のこともやりたい」

結局、二人でパソコン部見学に行った。

部室は、校舎の4階、情報室の隣。

中には、パソコンが10台くらい並んでて、部員たちがそれぞれ作業してた。

「新入部員?」

顧問の先生が声をかけてきた。

「はい。見学に来ました」

内山が丁寧に答える。

俺は適当に「っす」って言った。

「何に興味あるの?」

「プログラミングとか」

「いいね。うちの部、プログラミングやってる子多いよ。野村くんは?」

「え、俺?」

急に振られて焦った。

「俺は...まあ、ゲームとか?」

「ゲーム作りたいの?」

「作るっていうか、やりたいっていうか」

先生が笑った。

「まあ、とりあえず入ってみたら? 週2回の活動だから、気楽だよ」


結局、俺たちは二人ともパソコン部に入った。

週2回。火曜と木曜。

ゆるい部活だった。

みんな好きなことやってる感じ。

プログラミングやってる奴、動画編集してる奴、イラスト描いてる奴。

俺は、主にゲームやってた。フリーゲームとか。

内山は、最初の頃は真面目にプログラミングの勉強してた。

参考書買って、コード書いて。

でも、半年くらい経ったら、だんだんサボるようになった。

「内山、今日も勉強すんの?」

「いや、もういいわ。難しすぎる」

「だろ?」

「大野、何やってんの?」

「このゲーム。面白いぞ」

「貸して」

内山も、ゲームやるようになった。

二人で、フリーゲームやったり、YouTubeで実況動画見たり。

くだらないことばっか話してた。

内山、ちゃんと俗っぽいところもあった。

アニメの話とか、ゲームの話とか。

女子の話も、時々した。

「野村、クラスで誰が好きとかある?」

「は? 急になに」

「いや、なんとなく」

「お前こそ」

「俺? んー、別に」

「嘘つけ。絶対いるだろ」

「いねえよ」

「じゃあ、タイプは?」

「タイプ...まあ、優しい子?」

「ベタすぎだろ」

二人で笑った。


部活の帰り、一緒にコンビニ寄ったりもした。

「大野、何買うの?」

「ガリガリ君」

「冬なのに?」

「冬だからこそだろ」

「意味わかんねえ」

内山は、肉まん買ってた。

外で食べながら歩く。

「寒いな」

「だろ? だから肉まんなんだよ」

「まあ、確かに」

俺もガリガリ君食いながら認めた。


そんな日々が、中2の間、続いた。

楽しかった。

内山といると、楽だった。

無理しなくていい感じ。

でも、中3になって、クラスが別々になった。

内山は文系コースで、女子ばっかりのクラス。

俺は理系コースで、男子ばっかりのクラス。

4月になって、内山が言った。

「大野、俺、パソコン部辞めるわ」

「は? なんで?」

「いや、なんか...他のことやりたくなって」

「他のことって?」

「剣道部入ろうかなって」

「剣道?」

俺は驚いた。

内山が、体育会系の部活?

「マジで?」

「うん」

「なんで剣道?」

「いや、なんとなく。かっこいいかなって」

「お前、運動とか嫌いじゃなかったっけ?」

「嫌いじゃないよ。得意じゃないだけで」

「まあ、そっか」

正直、止めたかった。

パソコン部、内山がいなくなったらつまんねえじゃん。

でも、言えなかった。

内山の顔、真剣だったから。

「まあ、頑張れよ」

「ありがとう。パソコン部、寂しくなるけど」

「別に。俺、一人でも平気だし」

「そっか」

内山は笑った。

でも、その笑顔、どこか寂しそうだった。


それから、内山とはあんまり会わなくなった。

クラスも違うし、部活も違う。

廊下ですれ違っても、軽く挨拶する程度。

「おう」

「あ、大野。元気?」

「元気元気。お前は?」

「まあまあ」

「剣道、どう?」

「うん、頑張ってる」

「そっか。じゃあな」

「うん」

それだけ。

夏休み、一度だけLINEした。

「内山、暇?」

「ちょっと忙しい。部活で」

「マジか。了解」

「ごめん」

「いや、いいよ。頑張れ」

「ありがとう」

それきり。

秋になって、冬になって。

気づいたら、もう1月だった。

そして、今日。

内山が剣道部辞めたって話を聞いた。


教室に戻って、席に座る。

弁当を開けながら、考えた。

内山、剣道部辞めたのか。

なんでだろう。

合わなかったのかな。

それとも、何かあったのかな。

内山にLINE、送ろうかな。

「剣道部辞めたって聞いたけど、大丈夫?」

とか。

でも、やめた。

なんか、余計なお世話な気がして。

弁当食べながら、窓の外を見た。

校庭で、サッカー部が練習してる。

あ、そういえば。

内山、剣道部辞めたってことは、また帰宅部?

それとも、別の部活入るのかな。

パソコン部、戻ってきたりして。

そしたら、また一緒に遊べるな。

ちょっと、期待した。

でも、たぶん、ないな。

内山、戻ってこない気がする。

なんでか知らんけど。


放課後、パソコン部の部室に向かった。

今日は火曜日。活動日。

部室に入ると、部員が何人かいた。

「大野、遅い」

先輩が言った。

「すいません」

適当に謝って、自分の席に座る。

パソコンを立ち上げる。

画面が光る。

さて、今日は何しよう。

ゲームするか。

それとも、動画でも見るか。

マウスを動かしながら、ふと、隣の席を見た。

誰もいない。

去年まで、内山が座ってた席。

空っぽ。

なんか、寂しい。

「野村、何してんの?」

先輩が覗き込んできた。

「いや、別に」

「ぼーっとしてんな」

「そうすか?」

「最近、元気ないぞ」

「そんなことないっす」

「内山くんが辞めてから、つまんなそうだけど」

「...別に」

「素直じゃねえな」

先輩は笑った。

「内山くん、剣道部も辞めたらしいな」

「え、先輩も知ってるんすか?」

「うん。噂で聞いた」

「そうなんすか」

「お前、連絡取ってないの?」

「取ってないっす。クラスも違うし」

「そっか」

先輩は自分の席に戻った。

俺は、また内山の席を見た。

去年の今頃、内山はここに座ってた。

パソコンの前で、真面目にコード書いてたり。

途中で諦めて、俺と一緒にゲームやったり。

くだらない話して、笑ったり。

あの時間、楽しかったな。


部活が終わって、校舎を出た。

空が、暗くなり始めてた。

門を出ようとしたとき、前から誰か来た。

内山だった。

「あ」

「おう」

二人とも、立ち止まった。

「久しぶり」

内山が言った。

「だな」

俺も答えた。

気まずい沈黙。

何話せばいいか、分かんない。

「剣道部、辞めたんだって?」

俺から切り出した。

「...うん」

内山は少し驚いた顔をした。

「もう聞いたんだ」

「まあ、噂で」

「そっか」

また沈黙。

「なんで辞めたの?」

聞いちゃいけない気もしたけど、聞いた。

内山は、少し考えてから答えた。

「合わなかった」

「そっか」

「うん」

「きつかった?」

「まあ...うん」

内山は苦笑いした。

「野村の言った通りだったわ。俺、運動向いてない」

「いや、俺そんなこと言ってねえけど」

「言ってたじゃん。『運動嫌いじゃなかったっけ』って」

「ああ...まあ、そうだけど」

二人で笑った。

久しぶりの会話。

やっぱ、内山と話すの、楽だわ。

「パソコン部、戻ってこないの?」

俺は聞いた。

内山は、首を横に振った。

「いや...もういいかな」

「そっか」

「ごめん」

「謝んなよ。お前の自由だろ」

「まあ、そうだけど」

内山は笑った。

でも、その笑顔、やっぱりどこか寂しそうだった。

「じゃあな」

内山が歩き出した。

「おう。またな」

俺も手を振った。

内山の背中が、遠ざかっていく。

小さくなっていく。

「内山!」

思わず、呼び止めた。

内山が振り返る。

「なに?」

「今度、一緒にゲームしようぜ。オンラインでもいいし」

内山は、ちょっと驚いた顔をして、それから笑った。

「うん。そうだな。今度やろう」

「マジで?」

「マジで」

「じゃあ、LINEするわ」

「おう」

内山は手を振って、また歩き出した。

今度は、止めなかった。

俺も、反対方向に歩き出す。

家に帰る道。

スマホを取り出す。

内山とのトーク画面。

「今度ゲームやろうぜ」

送信。

すぐに、既読がついた。

「おう。今度な」

内山からの返信。

短い。

でも、嬉しかった。

また、内山と遊べる。

そう思うと、なんか、ホッとした。


家に着いた。

「ただいま」

「おかえり」

母の声。

部屋に上がって、制服を脱ぐ。

ジャージに着替えて、ベッドに寝転がる。

天井を見た。

内山、剣道部辞めたのか。

10ヶ月で。

何があったんだろうな。

まあ、本人が決めたことだから、いいんだろうけど。

でも、ちょっと心配。

内山、大丈夫かな。

落ち込んでないかな。

今度会ったとき、ちゃんと話そう。

ゲームの話だけじゃなくて。

内山のことも、ちゃんと聞こう。

そう思った。

スマホの通知が鳴った。

LINEかな、と思って見たら、パソコン部のグループだった。

「明日の部活、どうする?」

先輩からのメッセージ。

俺は「行きます」って返した。

そして、また内山とのトーク画面を開く。

最後のメッセージ。

「おう。今度な」

今度、か。

いつだろう。

明日かな。

それとも、もうちょっと先かな。

まあ、いつでもいいか。

内山とは、またちゃんと話せる。

そう思えるだけで、十分だった。

目を閉じる。

内山の顔が浮かぶ。

去年、パソコン部で一緒にゲームやってたときの顔。

笑ってる顔。

あの顔、また見たいな。

そう思って、俺は眠りについた。

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