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特別編「雨と手紙と」
あめふらしのお宿とのコラボ回です。
――
きみの「ありがとう」は、
わたしにとって、さいごの宝物でした。
やさしさも、痛みも、きみから教わった。
あの宿が消えてしまっても、
きみがわすれてしまっても、
わたしはずっと、きみの友達です。
あめがふるたび、そっと祈ってる。
――
「……この手紙、どこに届ければいいの?」
継由は封筒を手に、カバネの顔を見た。
手紙には、丁寧な字で「律へ」とだけ書かれていた。
「この人は、もう宿にはいない。
でも、まだ“誰か”の中に、律という名前を覚えている人がいる」
「……届くかな、そんな場所に」
向かったのは、川沿いの古い一軒家。
その一室で、年老いた男性が雨音を聞いていた。
「昔ね、子どものころに、夢みたいな宿に迷いこんだことがあるんだ」
そう語った彼の膝の上に、そっと手紙を乗せると、
彼は指先で封筒をなぞり、微笑んだ。
「そうか……ユメちゃん、元気にしてたか」
涙はなかった。
でも、その声にこもったやわらかい熱が、すべてを語っていた。
その夜、アパートの屋根に雨が静かに降りはじめた。