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照れ笑いをしながら少年はなにやら鍵の束のようなものをズボンのポケットの中から取り出して門の鍵を外し、星を門の中に招き入れてくれた。森と門の境目には小さな段差があり、少年は片手を差し出して星の手を取ると、星がその段差を上るのを手助けしてくれた。
「ありがとう」
「どういたしまして」
少年は門を鍵で締めると鍵の束をポケットの中にしまった。星はその様子をずっと黙って観察している。
少年が振り向いて星を見た。星も少年の顔を見る。
少年と星は無言のままで向かい合うように立つと、まるでお見合いの席のようにお互いの姿を観察しあった。
とても背が高く、とても優しい目をしているのが印象的な素朴な顔立ちをした黒髪の少年だった。目の下にあるホクロがとてもキュートで可愛らしい。
ゆったりとした黒い無地のフード付きパーカーに黒いぶかぶかのズボンという地味な格好をしている。星が少年の格好を見て唯一かわいいと感じたのは首に巻いている青色のマフラーだけだったが、それも誰かにもらったプレゼントといった感じで、明らかに服装から浮いていた。
少なくとも星の目には少年が自分の身なりを気にしているようには見えなかった。くりくりした癖っ毛の髪もばさばさで、もしかしたら家族や友人の誰かに髪を切ってもらっているのかもしれない。
しかし顔はかっこいい。普段、星や海が学院のご友人たちと会話をしているときに登場する男性のかたとしては、合格点は軽く超えているだろう。