7 澄
澄
森の奥には真っ黒な鉄格子の門があった。その門がかなり古い建築のようで、鉄格子には草のツタが絡まり、石で作られた柱などは風化してしまって崩れているところまである。
「ここが、そうなの?」
『うん。ここがそうだよ』
「なんか、思っていた以上にぼろぼろだけど、本当にこの門の先に海がいるの?」
『ここまで来てなに言っているの? この先に海がいるのは本当だよ。さあ、行こう。海が君のことを待ってるんでしょ?』
魚は少し星を急かすように言葉を紡ぐ。
「わかってるわよ」
星は魚の声を押されるようにして、黒い鉄の門に手をかけようとした。
「だめだよ」
「え?」
不意に聞こえてきた『男の人の声』に星はとても驚いて周囲を見渡した。しかし誰の姿も確認することはできない。
「この門に近づいちゃだめだ」
再び声が聞こえて来る。しかし、やはり姿は見えない。
『柱の影だよ。そこに一人、誰か隠れてる』
混乱する星を見かねて魚がアドバイスをしてくれた。
「あの、すみません。この森で暮らしているかたですか? あの、私、実はとても大切な用があってこの場所まで訪ねてきたんです」
星の声に反応して柱の影から一人の少年が姿を現した。その少年は門の向こう側から星の姿を見てとても驚いたように目を丸くしている。
「あれ? 君、誰?」
それはこっちが聞きたいことだ、と星は心の中で思った。