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おっさんのごった煮短編集

お爺ちゃんのサイコロえんぴつ



あんまりホラーっぽくありませんが、ご容赦くださいm(_ _)m




 「パパ、れいかんスプレー買って」


 今年、小学2年生になった娘がそんなことをいってくる。まぁ、日本の夏は熱帯もかくやってくらいに暑くなったし、熱中症対策にもいいかと買ってやろうと答えようとすると、娘から頓珍漢な言葉が飛び出す。


 「れいかんスプレーがあれば、お爺ちゃんにあえるよね」


 んー、どういうことだ。

 俺の親父は去年、亡くなっている。お爺ちゃん子だった娘は、それは激しく泣き落ち込んだんだが、冷感スプレーでお爺ちゃんに会えるとは。


 「ママがね、お盆にはお爺ちゃんが家に帰ってくるんだよって、でも『タマシイ』だから、目には見えないんだけどねって、だから、れいかんスプレーがあれば、お爺ちゃんとあえるよね!! 」


 あー、『霊感』スプレーってことか。ずいぶんと高度な間違いかたする8才児だな、我が娘ながら。


 「んーっとな、お空のくもと、虫さんのくもは同じくもだけどちがうよね」


 「うんっ」


 「れいかんスプレーのれいかんはお化けの見える霊感じゃなくて、つめたーくなる冷感のほうなんだ」


 「お化けが見えてもつめたくなるからおんなじだね」 


 くそっ、我が娘ながら、返しがうまいな。



 「お爺ちゃんとお話しはできないかもしれないけど、ちゃんとお爺ちゃんが帰ってこれるように準備すれば、お爺ちゃん喜んでくれるぞ」


 「ホントっ、じゃあ頑張って準備するっ!! 」


ふー、ちょろくて助かった。


 娘とともに精霊馬をつくる。


 「おナスさんときゅうりさんに割りばしさしたよ」


 仏壇の掃除をして、お墓参りにいく。

 

 「暑いからね」


 そういって妻が冷感スプレーに携帯の冷風ファンを俺と娘の分も渡してくる。


 「ひゃー、つめたーい」


 

 お墓につくと、娘はジーと墓石を見ている。


 「ほーら、手を合わせて」


 掃除を終えたあと、妻が娘に促す。


 「おじーちゃん、また、すごろくしよーね」



 親父は建具職人で、当然のように手先が器用だった。

 ある年の正月のこと、組木細工のように端材を組み合わせてすごろくをつくり、その上、お手製のサイコロえんぴつまで作ってきた。


 お爺ちゃん子だった娘は喜んで、親父、お袋と三人で飽きもせずに遊んでいたと思い出す。


 必ず、最後には娘が逆転勝ちしてたので、不思議に思って親父に訊いたら。


 「んなもん、えんぴつに細工してあるに決まってるだろ」


 とイカサマを堂々と宣言されて笑ったもんだ。

 必ず負ける接待イカサマとは恐れ入る。




 「ママーきゅうりのおうまさんでおじーちゃんはちゃんとこれたかな」


 「ダイジョブよ、ちゃーんとこれたよ」


 ニコニコした娘は精霊馬の前にサイコロえんぴつをおいてすごろくを始めた。

 

 そういえば可愛らしい駒も、親父の手作りだっけと見ていれば、娘のばんが終わると、仏壇の上のえんぴつがコロコロと転がった。


 「えっ」


 恐る恐る盤をみれば親父の駒が数字の分だけ動いていく、駒が止まったところには、指示を書いたメモが張り付いていた。


 「パパー読んでー」


 エアコンの効いた部屋だと言うのに、嫌な汗が噴き出してくる。

 指先が震えるが、なんとかメモをとる。



 『こんのビビりが、あとのことは任せたから、ちゃんと幸せにするんじゃぞ、駄目息子』


 「なんだよ、親父。怖がらせるか、感動させるかにしろっての」


 思わずあきれた俺だった。


 


 「ママー、パパが泣いてるー」


 「パパは泣き虫だからダイジョブよー」 


 

 ごめん、親父。

 やっぱ、俺、駄目息子だわ。




 

 


 


 

感想お待ちしてますщ(´Д`щ)カモ-ン

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― 新着の感想 ―
[良い点] ええ話やないか……。 お盆に帰ってきて、存在を示してくれたおじいちゃん(お父さんか)に感動ですね。 [一言] ちなみにワシは幽霊は信じないのですが、祖母が亡くなって四十九日の間に、ワシが夜…
[良い点] なるほど、「霊感スプレー」でヒンヤリするとは言い得て妙ですね。 この娘さん、なかなか頭の回転が速そうです。 頭の回転の速い娘に、手先の器用な祖父。 そうした具合に家族の個性が際立っているの…
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