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転生した。触手に。   作者: suha
4/6

第3話 初戦闘!!

シュオォと音を立てながら千彩都の体が空を舞う。


[なんか…すごいね…]


僕の脳内にアリサの呆然とした声が響く。


〈でしょ?!〉


僕は明るく答えながらスキル(伸縮)を使いシュタシュタシュタシュタと音を立て、天井を高速で移動している。


[うん。すごい…まさか私も伸縮のスキルにこんな使い道があるとは思ってもいなかった。]


〈うんうん。〉


アリサが言う伸縮のスキルのこんな使い道。その方法は至って簡単。


まず、前提として伸縮のスキルは僕の体から無数に生えている大小様々な触手の長さを変えるというものだ。

これだけを聞くとどうしてもしょぼいスキルのように聞こえるかもしれないがそれは違う。

 

 まず最初に近くにある岩の先端に手をかけて体全体を岩の下に持ってくる。

その後スキル(伸縮)を使い、引っ掛けている触手の長さを5メートルほどまで伸ばす。

伸ばせるところまで伸ばしたら一気に縮め体を上に持っていく。

短くなるスピードを活かしそのまま宙へ飛ぶ。


これだけを聞くとそこまで速いようには聞こえないかもしれないが、これが意外と侮れない。


 まず僕の伸縮の現在のスキルレベルは6だスキルレベル6ともなれば触手を伸ばす長さもスピードも上がる。縮めるのも同様に最高速度で縮めると一気にかなりのスピードになる。


 そのスピードとさほど重くない体を活かし40メートル程一気に上へ体を放り投げる。

そして上についたらこれまた新しく気づいた伸縮の使い道、複数操作を使う。


 伸縮の複数操作。これは読んで字のままに一気に何本もの触手の長さを変えるというもので、

今ボクは洞窟の天井で一気に数本触手を伸ばし、

1本の触手がなにかを掴んだらもう片方の触手で新たなものを掴む。これを繰り返す。という移動方法をしている。

これは人間の体でやろうとすると一度後ろへ行った手を前に持ってこなければならないため時間がかかるが

手が数え切れないほどある触手ならその心配は無い。

そのため今僕の体は天井を這うようにして進んでいる。

アリサにゴキブリみたいと言われ少し傷ついたがまぁ確かに見た目は完全に天井を這っている虫だ。


これは全てアリサ考案のレベルアップ方法をしているときに見つけた技だ。

レベルアップは最初はアリサのスキル憑依を使い体を操られながら無理やり動かされていたが、

途中から自分の力で初めた。

その際に少しでも死ぬリスクを減らしたいと思いひねり出した2つの方法がこれ、というわけだ。


[ねぇ、千彩都もうそろそろモンスターと戦っても良いんじゃない?]


とアリサが壁を這っている僕に訪ねてくる。


〈えぇ…でもこっちのほうが楽だし楽しいいし…〉


と本心をこぼす。

だってそうだろう。確かに最近はスキルの伸びが緩やかでレベルの上がりも悪いが、それでも上がることには上がる。

それにわざわざ危険なモンスターと戦ってレベルを上げるよりも空中を飛び回っていたほうが圧倒的に安全だ。それに飛ぶのは楽しいからわざわざモンスターを倒したいとは思わない。


[でもさぁ…だってもう。これ見てよ!]


アリサがそう言うと


【個体名 夜野千彩都 

 種族 テンタクル

 レベル12


 ステータス

Hp:122/123 神気:122/131 体力:514/514 攻撃力:65 防御力:33 速力:326 腕力:46


所持スキル

(補助精霊ⅰ)(吸血Ⅴ)(再生Ⅳ)(伸縮Ⅵ) 


称号

(高速の触手)】


という表示を目の前に出してきた。


〈それがどうかした?〉


訝しげに尋ねる。


[どうかした?じゃないよ。なによ称号高速の触手って。今までそこそこ長く補助精霊やってきたけど初めてみたわよ!!]


アリサがまくし立てるように喋りかけてくる。


〈まぁそりゃぁこれだけ早く移動してたら高速の触手にもなるだろ。〉


[ならないよ!!高速って称号はあれよ?速力が300超えると得られるもので昔の人間でも高速を持っている人は私の知る限り20人程度よ?!確かに速度をそこまであげようと思う人がいなかったからかもしれないけど…それでもおかしいでしょ?!]


[それにこのレベルならモンスターと戦ったって勝てるでしょ?!なんでモンスターを探さないの…]


アリサが呆れたように効いてくる。


〈だって、まだ怖いし…〉


そんな他愛も無い会話をしていると、

突如どこからか ブオォォォォォ という声が鳴り響いた。


[今のは…モンスターの声…]


アリサが一気に警戒モードになる。


〈え?モンスター今まで出会ってこなかったけどほんとにいたんだ。〉


おそらく声の方向からして今僕が進んでいる方向にその声の主いる。

何がなんだかわからないがモンスターは怖い。

触手を止め一気にスピードを落とす。


[え、ちょなにしてんの?!]


〈え?だってモンスターがいるなら逃げないと…〉


そう言いながら僕は1本の触手を最大限伸ばし、水平にぶっ飛ぶ用意をする。


[だめだめだめだめ〜〜〜せっかくのレベルアップのチャンスだよ?今まで何故か魔物に遭遇しなかったけどやっと声が聞こえたんだ。これは行くしか無い。]


〈え、えぇぇ〉


どうも乗り気にはなれない。

だってやっぱり怖いじゃん。よく知らない世界の知らないモンスターと戦うなんて。

たしかに今のステータス的に勝てるかもしれないけど、やっぱり怖いもんは怖い。


[ねぇ、そんなんで本当にいいの?だって千彩都この世界でめいちゃん見つけて早く2人でこの世界から帰るんでしょ?!そんな大きな夢を持ってるのにここで逃げるっていうの?それじゃいつまで立っても元の世界に帰るどころか芽結ちゃんすら見つけられないよ!行くんだよ千彩都声のしたほうに。]


その言葉にハッとする。


〈ごめん。アリサ…ありがとう僕行くよ。モンスターと戦う。〉


そうだ。こんなところでビビってちゃいつまで立っても元の世界に帰るなんて夢のまた夢。

少し怖くてもここは勇気の見せ所だ。

戻ろう。

伸びた腕を中心にブランコのようにして反対側へ行く。


[よしっそれでこそ千彩都だ。かっこいいぞ]


〈うん。〉


そう言うと一気に伸びた腕を縮めすごい勢いで水平に飛ぶ。

あの最初のジャンプの方法。これは水平方向でも可能だ。

ただ水平に飛ぶと勢いがすごすぎて連続で使うとどこかに触れる前に地面に落ちてしまうからこれは天井で加速したい時以外に使っていない。


シュオォォォォ 体が風を切っている音が聞こえる。

水平に60メートルほど飛んだところで体が下に向かい始めた。

そこで腕をのばし再度天井を掴む。

とんだ勢いを殺さないようにできるだけ早くシュタシュタシュタという音を立てながら天井を這い始める。



ブオォォォ 再度声が聞こえた。

さっきよりもかなり近い。

もうすぐだ。

そんな事を考えていると急に

回りが開けた場所についた。

そこは円形の広い空間だった。

そこには今まで所々生えていた岩の棘はきれいになくなり代わりに壁すべてが青紫色の光る鉱石で覆われていた。

自然が作り出した神秘的な空間。

その真ん中に声の主が佇んでいた。


それは元いた世界の首長竜のような長い首とでかい体をしていた。

だが顔は首長竜とは似ても似つかない。

その恐竜のような生物の顔は丸い顔が8つに割れ、その隙間から無数に生えている牙が見える。

そして再度苦しそうにブオォォォォと叫んでいた。


[あれは、プレシオファング。昔この洞窟で一番数多く生息していたモンスターなんだけど。今はなぜかこの一匹しか見当たらない。なんでだろう…]


アリサが一人頭を悩ませているなか、僕はそのモンスターをじっと見ていた。


〈あれが…モンスター〉


ここに来てみっともないが正直とても怖かった。

だってそうだろう。今まで見たこともないおぞましい生物がそこにいる。

とてもじゃないがこの小さな体であの化け物に勝てる気はしない。


[まぁとりあえずステータスを見てみよう。]


アリサがそう言い補助精霊の所持スキル鑑定を使う。

【個体名 なし

 種族 プレシオファング

 レベル30


 ステータス

Hp:254/300 神気:15/50 体力:315/520 攻撃力:98 防御力:59 速力:23 腕力:153


所持スキル

(噛み砕きⅲ)(毒霧ⅰ)

状態:毒ⅰ】 


この鑑定は普通の鑑定とは違う補助精霊特有のスキルだ。

相手のステータスを見るということに変わりはないが絶対に成功するという点が違う。この世界には鑑定無効というスキルがあるそうだがこの鑑定はその鑑定無効が効かない。 らしい


その鑑定を使いプレシオファングとやらのステータスを見たアリサが驚きの声を上げる。


[レベル30?!

…これはまずいかも。それに毒霧持ちか…あ、でも毒耐性を持ってない。だから毒状態なのか]


アリサが少し安心した口ぶりで独り言を言う


〈毒耐性ってなに?〉


意味は理解できるがイマイチ感覚がわからないので一様聞いておく。


[まぁ毒耐性は毒耐性だよ。その名の通り毒に耐性をつかせるスキル。

これを持ってないと自分が使った毒攻撃が自分にも効くようになる。

まぁモンスターに毒耐性を取得する知能なんて無いだろうから仕方ないといっちゃ仕方ない。

でも、それはそれとして。これは思ったよりもまずい状況だよ。

まず、あいつのレベルが千彩都よりも上すぎる。これじゃ逃げながらちまちま攻撃しててもあいつのHPを削り切る前に避けるのがむずい毒霧でやられるな…]


〈えぇ…じゃあどうすれば…〉


[うーんそうだなー

…そうだ!首を狙おう。そうすればあいつのスキル噛み砕きも使えないし、首なら太い血管もあって吸血で血を吸いやすいだろうからね。

まぁ多少毒霧ダメージを喰らうことはあるだろうけどその時は自分でなんとかして。]


そんな人任せな。

だけどここまで来たからには覚悟を決めるしか無い。こんなところで怖くてにげ出してたらいつまで立っても帰ることはできない。

よしっ


〈行くぞ!〉


伸縮を使い腕の1ぽんを最大まで伸ばし、そのモンスターに照準をあわせる。

ヒュオォ 一気に加速しそのモンスターの首に思い切り吸血を喰らわす。


ドジュッ という音とともに牙がそのモンスターの首に突き刺さる。


ブオォォォォォォ モンスターが苦しそうな声を上げ、首を左右に激しく動かしだす。


僕は振り落とされまいとし、伸縮を使い無数の腕を首に伸ばし、がっしりとしがみつき首を締め上げる。

 

 首を絞められ、命の危機を察したのか、モンスターの8つに裂けた口がそれぞれ外側に バガッ と開く。


〈なに、これ〉


モンスターは開いた口から紫色の霧を出す。


スキル(毒霧)を発動したのだ。


プシューーーと音とともにダメージを発生させる霧が千彩都とモンスターの体を覆う


[千彩都!こいつは神気が少なくて毒霧をそんな長い持間使えない。だからその腕を絶対に離すな。離したらもう一度つかめりチャンスは来ない!!]


焦った様子のアリサの指示が飛ぶ。


2匹とも霧により少しずつだが確実にダメージを食らっていく。


〈おう!!〉


 死への恐怖とアドレナリンでその指示を聞く余裕もなかったが適当に返事を返す。


二人のHPが4割を切った時ついに神気がオーバーヒートしたのか霧が晴れていく。

今のHPは少しだがモンスターのほうが優勢だ。


[千彩都このままじゃまずい血をできる限り吸って体力を回復させるんだ。!!]


モンスターの首から血が出る。その血を吸血を使いどんどん吸いHPを回復させる。

千彩都のHPがモンスターを少し上回った。


 そこまで来てもう手段を選んでいられないと思ったのか今度はモンスターが壁に向かって走り出す。鉱石の壁まで走り、モンスターは走った勢いを利用し思い切り首を光る鉱石の壁に打ち付ける。


 鉱石に首を刺されHPを減らしながらも、モンスターは僕を殺そうと躍起になり更に強く首を壁に打ち付ける。


 僕は鉱石の先端に目や手をさかれながらも絶対に離すまいと万力の力でそのモンスターの首を締める。


 両者のHPがどんどんどんどん減っていく。


それでも決して手を離さず血を吸い続け首を締め上げる。


ズグッ 鉱石でできた棘に体が深く刺さるHPがごっそり持ってかれた。


〈ぐ、うぅぅぅ〉


僕のHPが2割を切り、もう体の至るところがボロボロになった頃にはモンスターの動きも鈍くなっていた。

弱ったモンスターは首を壁に打ち付けるのをやめ。

フラフラと数歩前に歩く。


数歩歩いたモンスターは、首からブシッブシッと血を流しながらズダァァァァンと大きな音を出して横に倒れ、そのままピクリとも動かなくなった。


〈や、やった、僕が、殺した。〉


命を奪った罪悪感と勝利の高揚感が入り混じった複雑な気もちになりながらも初戦闘になんとか勝利したことを喜ぶ。


[おぉーーやったね。正直首を壁に打ち付け始めた時はまずいと思ったけど勝てたから結果おーらいだね。]


千彩都の体がスキル(再生)により、ボコボコと言う音を立てながら治っていく。


【レベル12>15

 スキル(吸血ⅵ)(再生ⅴ)(伸縮ⅵ)】


勝利のレベルアップの表記が目の前に現れる。


[え、えぇぇぇぇ一気に3レベルも上がっちゃった。すごいなモンスター討伐…]


驚いたアリサの声が脳内に響く


〈いくら効率が良くても毎回こんなんじゃ生命がいくらあっても足りないよ。〉


傷ついて未だ修復中の触手を見ながらそうぼやく


[でもまぁこんなに強いモンスターはそうそういないよ。だからこいつを倒せたってことは多分他のモンスターは案外楽に倒せると思うよ。]


〈そうかなぁ…〉


まぁなにはともあれ僕の初戦闘はなんとか勝利できた。

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