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56.うまくいくように


*   *    *



 ケビンは一人、自分の部屋でベッドに仰向けで寝転がりながら、天井にマップの画面を開いていた。


 自分の婚活用のプロフィールと顔の画像の下に、「マップフレンドに登録しますか?」と書かれたボタンが表示されている。


 長い指で、そっとボタンが浮かんでいる空間を押す。


 するとキラキラと星が輝くモーションが流れ、マップ上に自分の緑のハートマークが浮かんだ。


 ふう、とケビンが息をつき、マップを消そうとしたら、



 ピピピピ、ピピピピ。



 マップ上で、早速ケビンにコールをする女性がいた。



『初めまして、レイラと言います』



 電話ではなく、メッセージが送られてきたようだ。


 見た目も可愛らしく、住んでいるところも近い女性なので、ケビンは勇気を出し、



『俺はケビンだ。コールしてくれてありがとう』



 とメッセージを返した。

 ぽんぽんと会話は続き、最後にはぜひ会いたいと相手から誘ってきてくれた。



『では明日12時、レストランにて』



 メッセージをレイラに送り、うまくいくか心配そうにケビンは前髪をかき上げた。




*   *   *



 

 夜が明け、次の朝。


「……よし」

 

 鏡の前で身支度をするケビン。髪を整え、シャツの襟を正す。


 眼帯をしている自分の左目を軽く撫で、コンプレックスを克服しなければ、と鏡の自分を見つめる。


『辛かったケビンさんの心に寄り添いたいのです。

 次素敵だと思う女性がいたら、伝えてあげてください』


 昨日のアリサの真剣な言葉が頭に浮かぶ。眼帯をした左目を押さえて、頷いた。




 今日はギルドは休みの日なので、ゆっくり寝たアリサがベッドから起き伸びをする。


 アンティーク家具の揃った、日当たりの良い広い部屋。


 可愛い部屋着のワンピースを着て、バゲットとハムエッグを作り、紅茶を優雅に飲む。



<アリサ所持金 100万フィル>



 結婚相談所の経営がうまくいっているため、少しずつ生活のグレードが上がっているのを感じている。


 夜帰りに半額の野菜を買い込むのではなく、少しおしゃれなベーカリーでパンとチーズを買えるほどになった。


(相談所の運営も順調。

 婚活アドバイザーとして、会員様達がどんどん幸せになり退会していくのは嬉しいな。

 あとはケビンさんとルビオ王子にいいお相手ができれば……)


 食事が終わり、紅茶のカップに口をつけながら考えるアリサ。


 そんな優雅なブランチ中に、ピピピピ、とコール音が響いた。



「あら噂をすれば……ケビンさんだわ」



 マップを表示すると、自宅にいるらしいケビンからコールがかかってきていた。



「おはようございますケビンさん。

 どうしました?」


『おはよう。休日にすまないな』



 いつもと変わらないケビンの低い声が頭の中に響く。



『……マップフレンドを始めて、今からデートに行ってくる。

 君に言われたことを、心に留めておくよ』



 おお、とアリサは驚く。



(初めてすぐにデートを取り付けることができたのね。さすがイケメンは早いわ。

 あとは、ケビンさんが自分のコンプレックスを払拭するだけよ……!)


 彼も少し不安な気持ちがあるからコールしてきたのだろう。

 そういう人の背中を押してあげるのも、婚活アドバイザーの仕事だ。



「ええ、素敵な相手に出会えるように、応援してますからね!」


『ああ、ありがとう。じゃあな』


 コールは切れ、ほっと息をつく。


 紅茶を飲みながら、ケビンがうまく行くようにアリサは願った。


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