53.ランキング1位の男
ルビオは腹ただしそうに足早にガーネット城内を歩いていた。
「ええい、城内にいても居場所が分かるから、女どもが押し寄せてくる……!」
城の広い庭園を歩いているが、門の前にはオシャレをした女性たちが、ルビオの姿を一眼見ようと人だかりになっている。
「生のルビオ王子、神々しい!」
「ぜひ私とデートしてくださいませ!」
屈強な門番が、門の前で城に入られぬよう女たちをガードしているが、まるでアイドルの出待ちをしているファンのような黄色い声援は止まらない。
しかし当のルビオはファンサービスなどするわけが無く、睨みつけて舌打ちをする。
「さすがアリサ殿の作った婚活システム。
マップフレンドとやらは出会いの場として使えますね」
隣を歩く側近のクレイは、門の前の女性達を眺めて感心しているようだ。
「お前はやってないのか、クレイ」
「はは、私は……今回は、遠慮しようかと」
クレイはマップフレンドの登録はしていない。
懇意の相手がいる間は、参加はしないでおこうという姿勢が、真面目なクレイらしい。
「ふん、魔物コンの女と順調なようだな。
一抜けたつもりか、余裕だな」
ルビオが嫌味っぽく言うが、そんな調子に慣れっこなクレイは苦笑いをして、いなす。
ピピピピ、ピピピピ。
コールの音が響く。
ルビオはすぐにマップ画面を開くと、ばっちり化粧をした若い女性の写真とプロフィールが表示されている。
「コールを受ける」・「拒否する」と選択肢が出ており、すかさずルビオは拒否するを押す。
しかしすぐにまた、ピピピピ、と電子音が鳴る。
マップ上には、保留待ちをしていたのか違う女性の顔の画像が浮かんでいる。
どうやら、城の中に入って姿が見えなくなったルビオに、城の前にいるファン達がコールを押しまくっているようだ。
「ああもう、拒否、拒否だ!」
ピピピピ、ピピピピ。
鳴り止まないコール音。
「くそ、変なシステムを作りおって……コールも全部無視してブロックだ!」
癇癪を起こしているルビオの横でなだめているクレイ。
何人ブロックしても、あの王子の初めてのデート相手になるのは誰だろうと、女性陣は期待しルビオのプロフィールを眺めるので、ランキング一位は揺るがず不動のものとなっていた。




