41.取るに足らんな
魔物コンの開催時間は、大体小一時間、戦闘に換算すると3回程をこなしたら、入口に戻ってくるように伝える。
参加料を集めたタイミングで、全員に回復薬を一つずつ配っているので、不測の事態は避けられると思うが、基本的にはチームごとに自由行動となる。
「魔物が出やすいという洞窟の近くまで行ってみますか」
「そうですね、ここから東の方角です」
クレイの提案に同意し、みんなで東の方向へと向かっていく。
「おい、そなたはなぜ着いてくる」
四人チームのはずだが、運営のアリサはルビオとクレイのチームに同行していた。
「そりゃあ、色々と心配だからですよ!」
こじらせ男子二人が、上手く女性と会話しながら魔物も倒せるかどうか。
そしてなんの魔法も剣も使えないゼロスキルな自分が、一人でうろうろしていて魔物に襲われないか。
どちらも心配なので、王子達について回ることにしたのだ。
「まあいいじゃないですか。
アリサさんも、私がお守りしますので大丈夫ですよ」
クレイが、腑に落ちないとルビオをなだめながら告げる。
「あら、クレイさんってほんと優しいですよね。
こういう人が旦那さんなら、きっと幸せなんだろうなぁ」
「いやいや、褒めすぎですよ」
魔法使いの女子たちに聞こえるよう、クレイの優しさをわざとらしく大げさに褒めるが、クレイはいつも謙虚な対応だ。女子二人は後ろでクスクス笑っていた。
「おい。―――来るぞ」
ルビオが立ち止まり、剣に手を置く。
すると、暗い茂みをかき分けて、スライムとコボルト数体が現れた。
グルルル、と鳴くコボルトと目が合う。
(ひぃぃぃ!
弱いとはいえ、生で見るモンスター、怖すぎ……!)
前世では虫さえまともに相手ができないビビりなアリサだ。初めて見る魔物が怖くて、思わず後退りする。
「これは、腕が鳴りますね」
「雑魚相手だ。とっとと終わらすぞ」
クレイとルビオは目で合図をし、お互い腰に据えた剣を抜く。
「我々が倒しますので、女性達は下がっていてくださいね」
この程度のレベルの魔物は、魔法使い二人は参加せずとも大丈夫だと、頼りになるクレイが言う。
「―――いくぞ!」
ルビオは剣を構え、スライムに斬り込んだ。
剣で切られたスライムは形を変えながら後ずさるが、ルビオに飛んでくる。
赤いマントを翻し、その攻撃を軽やかに避けるルビオ。
避けた先に陣取っていたクレイが、大剣でスライムを薙ぎ払うと、その場でスライムは消滅した。
(すごい、長年王子と側近をしているからか、二人のコンビネーションはさすがね)
休む暇もなく、次はコボルトに剣を向けるルビオ。
ひと突きで倒しきれなかったので、ルビオは得意の魔法剣技を使う。
細身のレイピアに、青い雷が取り巻く。
「―――――はっ!」
ルビオの声が響き、青い雷をまとわせた剣がコボルトの体の中心に刺さり、ビリビリと雷が走り、地面へと倒れた。
「取るに足らんな」
ルビオが体中焦げ、痙攣しているコボルトを見下ろして、吐き捨てるように告げる。
(おお、ゲームの戦闘終了セリフ、生で聞けるの感動……!魔物は倒し終わったのね)
ルビオをメインキャラで使った際、戦闘勝利時に聞けるセリフ、『取るに足らんな』が聞けて、感動しているヘビーユーザーのアリサ。
二人が強くて、出る幕のなかった魔法使いの女子二人がお礼を言っている。
「あなた強いのね、かっこよかったわ」
「ありがとうございます」
エマとアンナの言葉に、当たり前だとでも言うように剣を拭きながら首を振るルビオ。
「……もう少し骨のあるやつが良い。
森の奥へ進むぞ」
ルビオはさっさと行こうと森の奥へと足を向ける。
(目的はあくまでも魔物を倒すことではなく、男女仲良くなるためなので、もっと会話してほしいんだけどなぁ)
アリサの嘆きと、物言いたげな視線には取り合わないルビオ。
しかし、五人の背後で、動く影があった。




