第7章 趣味コン・魔物狩り 37、
毎朝のルーチンワークであるギルドの清掃をしながら、アリサは昨日の街コンカップリングパーティを思い返す。
盛り上がったし、口コミでもっと人気になれば、今後の看板イベントになるに違いない。
そして頭の中では、こじらせ王子とその側近に合うものを考えていた。
(趣味コンは、男女でスポーツをしたり、料理をしたり、イベントに行ったりする。
趣味コンは、意気投合した後の成婚率が高いのよね)
前世でも、フットサルコンやテニスコンのように体を動かすものや、料理を作る料理コンは人気があった。
同じ趣味を楽しめるだけでなく、共同作業をすることによって相手の性格がわかるからだ。
意外とまとめ役だ、とか、段取りが丁寧だな、というのは会話しただけではわからないので、付き合う前の良い判断材料になるのだ。
他にも、フェス好きたちのフェスコン、舞台が好きな人たちの観劇コンなど、同じ趣味を楽しめる相手を探すという意味では趣味コンはとても良いのだ。
「おはよう」
ケビンがギルドに出勤してきたが、普段の白シャツにジーンズではなく、今日はジャケット姿である。
ギルドの開店準備をしながら、たまに鏡を見たり、身だしなみを整えたりとなんだかそわそわして見える。
アリサはピンときた。
「ケビンさん、今日デートですか?」
眼帯をしていない右目を見開き、いかにも図星、という顔でケビンが動揺している。
「……そうだ、昨日の子とな。
店が終わってからだが」
「早速1回目のデートですね、楽しんできてください!」
「なんでわかったんだ」
「だって、全身からうきうきソワソワオーラが出てますよ?」
アリサに言われて、そんなにわかりやすかったか、とケビンは鼻の頭を掻く。
ふと思い出し、アリサは自分の鞄の中から布袋を取り出し、ケビンに手渡した。
「そういえば、最近のイベントが好評でお金が貯まったので、借りていたお金お返しします!」
昨日街コンは男女三十人もの参加者から参加費をもらっているし、相席居酒屋は、ランチするより少し高めの飲食代の設定になってたおり、差額代がアリサに入るようケイト達と約束していたので、懐が温まってきていたのだ。
エグゼクティブパーティで大失敗をし、洋服代込みでケビンに借金していたアリサだったが、ようやく返せる目処がついた。
ケビンは布袋を受け取り、中の金貨の量にざっと目を通す。
「少し多くないか?
こんなには要らないよ」
「いえいえ、昨日の街コンで、アドバイス通り頑張ってくださったことと、返済を長らく待っていただいたお礼を込めて、金額は少し多めにしました。
ぜひデート資金に使ってくださいね!」
ギルドの場所を借してくれているだけでもありがたいのに、無利子で結構な金額を長い間貸してくれていたのだ。
デート成功も願って、多めに包んでおいた。
「ああ、悪いな。ありがとう」
アリサの気持ちを汲み、ケビンは金貨の入った布袋を素直に受け取った。




