33、ドキドキのカップリング
一歩出遅れたケビンは、気に入った女性のそばへと歩いて行ったが、もうすでに素早く動いていた他の男性と話しているみたいだ。
(ああ、またそこで遠慮して時間を無駄にしないで……!)
エグゼクティブパーティでは女性に話しかけられず、壁際でだんまり状態だったケビンを思い出し、少し焦ったアリサだったが、
「……話を遮ってすまない。
次のフリータイムでは、俺に時間をくれないか?」
申し訳なさそうに、小声で3番の女性に話しかけた。
先越されてしまったが、必ず話したいからと約束を取り付けたいのだろう。
ケビンの申し出に女性は頷き、話を止められた男性も会釈した。
ふう、と息をつき、空いている席に座るケビン。
(話したいと相手に意思表示して、ちゃんとアポを取ったのは偉いわ。
相手の男性にも礼儀を通しているし)
シャイなケビンが、自分からいいと持った女性に話しかけたのは大きな成長だ。
(婚活アドバイザーとしては、この時間もただ待っているだけじゃなく、他の女性と話してチャンスを増やしてほしいところだけど……。
まあ、そこまでは求めすぎかしら)
第一希望の人じゃなくても、話してみたら気さくさに好感度が上がるパターンもあるから、3回のフリータイムは有効に使ってほしいところだが。
ケビンは神妙な顔で腕を組み天井を見上げており、次何を話そうかイメージトレーニングしているのかもしれない。
(王子はどうかしら……あら)
ルビオは相変わらずのマイペースさで、男性が移動する側だというのに、一切自分の席から動こうとしない。
自分のプロフィールカードやメモを取った紙を指先で触っているだけだ。
「あの……お話ししても良いですか?」
そんなルビオに、遠慮がちに女性から話しかけてきた。
ルビオは顔を上げ、青色の瞳がその女性を写す。
(断っちゃダメよ、ルビオ王子……!)
アリサが強く念じるが、そんな様子に気がつくわけもなく、ルビオは前の席へうながした。
「構わない。そなたは西方出身だったな」
「あ……はい! 覚えてくださっていて嬉しいです!」
頬を赤く染めた女性は、喜んでルビオの前の席に座り、話し始めた。
やはり、美形なルビオは第一印象最高なのだろう。
少し態度がつっけんどんでも、あまりあるほど女性に人気なようだ。
ルビオの近くには、次のフリータイムで会話をできるよう狙っているのか、少し離れたところで様子を伺っている女性が数人いた。
その女性を狙っている男性は、様子を見ながら声をかけている。
まさに、タイミングの読み合いが行われているのだ。
そして、3回のフリータイムが終了し、アリサが再びベルを鳴らした。
「はい、フリータイム終了です。
これからはカップリングタイムに入ります」
全員自分の最初の席に戻る。
お目当ての人と話せて上機嫌な者、話せなくて悔しがっている者、表情は人それぞれだ。
全員に最終カップリングカードが配られる。
男性は青、女性はピンク色の紙だ。
自分の番号がカードの一番上には印字されており、第一希望、第二希望、第三希望と書かれた欄に、好印象だった異性の番号を書き込む。
それを回収し、集計し、無事お互いが選び合っていた場合カップリング成功となり、二人で帰ることができるのだ。
皆、最終カップリングカードと、手持ちにあるメモを睨めっこしている。
細目で意中の人の様子や、番号札の番号を確認している人もいる。
カフェ内には奇妙な静寂が訪れ、ペンを走らせる音だけが響いている。
こじらせ三人たちもペンを持ち、神妙な顔つきでカップリングカードと睨めっこをしている。




