31.プロフィールカードを見てお話し
時間となり、会場のカフェは男女の参加者たちでいっぱいになった。
まず最初は、同じ番号札を胸につけた者同士、向かい合って座り、プロフィールカードに自分の情報を記入をする。
そうしている間に、パーティ開始時間になったので、司会のアリサが一礼をし、前で話し始める。
「本日は、街コンカップリングパーティにお集まりいただきありがとうございます!」
こじらせ男子3人にもした、イベントの流れを参加者たちにも説明する。
「それでは、早速お手元で記入したプロフィールカードをお向かいの方にお渡しください。
パーティ開始です!」
アリサが、リンリン、と手に持ったハンドベルを鳴らして始まった。
皆、照れながらプロフィールカードを渡し、相手のパーソナルな部分を読んでいく。
「俺もこの前、妖精の湖に冒険に行ったよ!
あの辺のモンスターは強いよなぁ」
「私も、甘いものより辛党なの。
美味しいご飯屋さんてこの辺にある?」
早速、お互いの情報から共通点を見つけて、盛り上がっている二人組がちらほらいる。
(三人はどんな感じかしら……?)
司会のアリサは、ゆっくりとカフェの中を歩きながら三人の様子を伺った。
5番のケビンは、女性のプロフィールカードを読みながら少しうつむいていたが、意を決して顔を上げる。
「コーヒーが好きなのか、俺も毎朝飲むぐらい好きなんだ」
「そうなんですか。
ここのカフェのも美味しいですよね!」
「ああ、よくテイクアウトして職場に持って行ってる」
「ご職業は……へえ、ギルドの経営されてるんですね」
相手の女性はケビンのプロフィールカードの、職業の欄を見て受け答えする。
スムーズに会話が進み、ケビンの緊張が少しずつ解けていくのが見えた。
(共通点を見つけて、自分の話をするケビンさん。
その調子!受け身ではなく自分から話しかけているのも良いわね)
個人指導で指摘したところを、彼なりに頑張って改善していて、心の中で応援する。
7番の番号札をつけたクレイは、相手の女性のプロフィールカードを一通り目を通した後、じっと彼女に視線を移した。
そして、優しい笑顔を浮かべる。
「そのネイル、ピンク色でとても綺麗ですね」
ネイルを褒められた女性は、パッと表情を明るくして微笑んだ。
「ふふ、今日は素敵な人に出会えるといいなと思って、おしゃれしちゃったんです」
「長い指にとても似合ってますよ」
恥ずかしそうに爪をクレイに見せながら、ラインストーンも入れたんです、と女性が説明している。
どれどれ、と覗き込むクレイ。
(女性の身だしなみを褒めるのは好印象!
『恋愛スイッチ』を入れることを実践しているようね)
さすが、ガーネット王国の代々王子側近の貴族は優秀だ。
一番心配な、10番の番号札のルビオに目を向ける。
エグゼクティブパーティでは怒り狂って身分をばらし、相席居酒屋ではクレイの愚痴に付き合って、ろくに女性と話していなかった王子だが、一対一の会話はうまくいくのだろうか。
向かいの女性は、チラチラとルビオの顔を見て、頬を染めている。
私服を着てもわかる、圧倒的王子オーラにときめいているのかもしれない。
「そなたは西方出身なのか。
あのあたりの気候は心地よいな」
「……! はい、そうですね。
カラッとしていて暖かく、過ごしやすいんです」
プロフィールカードの出身地を見て気になったのか、ルビオが珍しく自分から話題を振っていた。
(うん、女性を『お前』って呼ぶのはやめたみたいだし、良い兆候ね)
個人指導の際に、喧嘩しながらも繰り返し指摘したことは、覚えていたようで、アリサはホッと胸を撫で下ろした。




